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フォルクスワーゲンの8代目「ゴルフ GTI」が買いだと思う理由

2024.01.22

 フォルクスワーゲンの「ゴルフGTI」は、初代「ゴルフ」から続いているスポーティーなモデルで、現在販売されているモデルは8世代目となる。

「GTI」という車名も、ずっと変わらず使い続けられている。「GT」は(Grand Touring グランドツーリング 長距離旅行)を走破できる性能を持ち、I(Injection 燃料噴射装置)を備えているという意味だ。

1974年に発表された初代「ゴルフ」(ということは、2024年で50周年!)そのものも、まだ燃料を気化するのにシンプルなキャブレターを用いていた時代に、翌1975年に発表されたた「ゴルフGTI」は高度なインジェクションを備えて馬力をアップさせ、足回りやシャシーなどを強化されていた。

 スタンダードの「ゴルフ」と比べて「ゴルフGTI」は速く、スポーティーに走ることができた。しかし、それ以上に名声を高めたのは「ゴルフ」の2BOX+テールゲートというボディー形式が備えている乗りやすさや使いやすさ、合理性などを損なうことなく、強化されたエンジンと足回りを組み込んで、実用性とスポーティーなドライビングを高次元で両立させるというコンセプトだった。

機械として優れているか? ★★★★★5.0(★5つが満点)

 8代目となる「ゴルフGTI」に乗るのは、デビューした時以来の2年ぶりのことだ。8代目に搭載されるエンジンは、ターボ過給された2.0L4気筒。245馬力の最高出力と370Nmの最大トルクを発生している。初代「GTI」が1.6Lの自然吸気による4気筒からの最高出力が110馬力だったのに対し、8代目は排気量も拡大された上にターボ過給されて、2倍以上に高出力化されている。

 トランスミッションは、初代の5速マニュアルからツインクラッチタイプの7速DSGに。これは現行の「GTI」だけでなく、1.0Lや1.5Lエンジンを搭載するスタンダード版の各種「eTSI」モデルも同じだ。DSGのようなツインクラッチタイプのATを装備しているクルマは、現代では少なくない。

 ツインクラッチタイプのATは、ギアとギアを2枚のクラッチを使って、コンピュータ化された極小のロボットがドライバーの代わりにタイミングを見極めながら変速している。ドライバー自らシフトレバーとクラッチを操作するよりも正確な変速を無限に繰り返すことができる。モードを切り替えることによって、よりパフォーマンス寄りの変速にも、より燃費寄りの変速にも変速タイミングやパターンを変えることもできる。

 ツインクラッチタイプATのアドバンテージが現われるのが減速時だ。コーナーとアップダウンが連続するワインディングロードやサーキットなどでフットブレーキを強めに踏み込むと、ギアが1段ないし2段落ちる。エンジン回転も合わされるから、減速した直後から落ちたギアによる鋭い加速が得られる。

 箱根スカイラインのようなワインディングロードを走ると、コーナーによって、または自分の運転によって4速から3速に落ちることもあれば、一気に2速まで落ちることもある。一見すると同じようなコーナーに同じような状況で進入したのにもかかわらず、クルマは使うギアを慎重に選んでいる。自分の運転操作や状況によって選ばれたギアの違いを反芻し、クルマとコミュニケートしながら走れるのがDSGの大きな長所になっている。

 エンジンのターボ過給によるじれったさはなく、アクセルペダルを踏み込んでいくと力強くクルマを引っ張っていく。ただ、レッドゾーンは6600回転からなので、欲を言えば7000回転は回ってほしい。穏やかでありながら、コーナーとアップダウンの連続するワインディングロードでは余裕を以ちながらペースを維持できる。

絶妙で懐深いハンドリングも、長距離を走ったり、こちらのコンディションが優れない時などに大きな助けとなってくれるだろう。これは、良い視界や優れたシートなど「ゴルフ」の総合的な実用性の高さをそのまま引き継いでいる長所だ。コンフォートモードに戻せば、フラットで快適な乗り心地が待っている。ADAS(運転支援機能)も最新で使いやすく、移動のための優れた道具だ。

「ゴルフGTI」は、歴代モデルを高性能化する過程で前輪駆動車に不可避と言われてきたアンダーステア現象の解消に努めてきた。6代目「ゴルフGTI」の発表時に南フランスの山の中を走った時に、初めて搭載されたXDS(ブレーキ制御LSD)の効能が大きいことに驚かされたものだった。

XDSは進化を続け、8代目では標準装備されている。オプションのDCC(電子制御サスペンション)は減衰力の調整幅が先代モデルよりも広がり、15段階から選べるようになった。初代「GTI」からの「実用性の高さと高性能を高い次元で両立させる」という命題を、8世代目は現代の技術と価値観で実現している。

商品として魅力的か? ★★★★★5.0(★5つが満点)

「ゴルフ」シリーズの中で、速さだけならば後から設定された4輪駆動化されて6気筒エンジンを搭載する「ゴルフR」のほうが速い。しかし、高出力化した横置き4気筒エンジンで前輪を駆動するという「GTI」のフォーマットは、この8代目まで変わらない。

「ゴルフR」は速い分だけオリジナルの「ゴルフ」から離れてしまっていると思う。乗り心地や排気音の大きさなどの面で、速さが優先されている。それでも、車高が低くて人も荷物も大して乗らないスポーツカーなどよりははるかに実用的なのだけれども、シリーズの異端児であることに変わりはない。

 そこへいくと「ゴルフGTI」の良さは「ゴルフ」の良さをほとんどすべて引き継ぎながら速いことだ。そのことと矛盾するようだけれども、この8代目「ゴルフGTI」には、Golfのエンブレムなりプリントなどがどこにも見当たらなくなった。“GTI”をブランド化させようとしているからなのだろうか。それは「ポロGTI」でも同じだった。

 2024年に「ゴルフ」シリーズにはマイナーチェンジが施されることが発表されているが、9代目については明らかにされていない。EV(電気自動車)の「ID」シリーズを発展させ、その分、生産台数を削減するというエンジン車の中にはたして「ゴルフ」が含まれるのだろうか?

 もし「ゴルフ」が8代目で終焉を迎えてしまうのならば、それはひとつの時代の終わりを告げるものとなる。「ゴルフ」が展開してきた前輪駆動+2BOXハッチバックというフォーマットとコンセプトをフォルクスワーゲン自らが手放すからだ。もちろん、その時には「ゴルフGTI」にも同時にピリオドが打たれるだろう。

 クルマ好きたちから、最近よく「本格的な電動化時代が来る前に、最後に買っておく価値のあるエンジン車は何ですか?」という質問が寄せられる。

9代目が現われるのかどうかはわからないけれども、8代目「ゴルフGTI」は買っておきたくなる完成度の高さを示していた。

■関連情報
https://www.volkswagen.co.jp/ja/models/golf-gti.html

文/金子浩久(モータージャーナリスト)

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