日本市場で売れているボルボ車といえば「XC40」。コンパクトサイズのSUVで日本デビューは2018年。ボルボは、早い時期から生産する乗用車をEV化することを宣言していた。2022年には電気自動車の「XC40 リチャージ」モデルをオンラインで販売を開始した。この時はツインモーターのAWDと、シングルモーターのFF仕様が用意されていた。
ところが2024年モデルのラインアップではシングルモーターだけとなっていた。しかもFF仕様ではなく、RR仕様、つまりリアモーターのみの仕様になっていたのだ。AWDをベースにしているとはいえ、フロントモーターからリアモーターに代えるというのは、前代未聞のこと。ボルボによれば、「ドライバビリティーの向上のために変更した」という。こうした変更が可能なのも構造がシンプルなEVならではのことかもしれない。
とにかく、後輪駆動になった「XC40リチャージ」モデルに試乗してみることにした。後輪駆動のボルボ「XC40」のリアモーターは73kWhの電池容量で、238PSの最高出力、418Nmの最大トルクを与えられている。ちなみに、前輪駆動の時は、68kWh、231PS、330Nmだったので、5kWh、7PS、88Nmの性能アップということになる。
本国のスウェーデンでは後輪駆動のほか、これまでラインアップしていた4輪駆動も販売されているようだが、日本市場には入ってきていない。4輪駆動は昨年で販売打ち切りになっている。キーを受け取り運転席に座る。スタートボタンを押そうとしたが、ボタンがない。実は運転席に着座と同時に、シートにセンサーがあり、自動的にモーターオンの状態になるのだ。ブレーキペダルを踏み、シフトノブをDに動かせば、そのまま走行できる。アクセルを踏むと「XC40リチャージ」は、音もなく動き出した。
走行中の「XC40リチャージ」は、ヒューンというモーターや駆動系の音もなく、無音に近い状態で走り出した。試乗車の充電状態は95%、航続可能距離は460kmと表示されている。カタログ値は100%で590km。試乗車はオドメーター914kmの新車だ。
街中を走らせてみると、操縦性はやや重め。60km/hあたりの直進性もやや強めだ。コーナーでは切り込みはやや重めで、ハンドルの戻しも重めだった。低中速の動きを、前輪駆動の時と比較してみると、前輪駆動のときは操舵感が、明らかにコントロールされているようだった。低速の直進時はやや軽めで、切り込みは重めだが、戻しは強くなかった。前輪駆動のクセを電子制御で修正している感じがした。その点、後輪駆動になり、動きが自然になっている。
しかし、高速域になると、この印象も変わってくる。後輪駆動の現行モデルは、直進、カーブでの動きは、やや重めになり、直進時の接地感やカーブでの吸い付き感は、若干だが、甘くなっているように感じた。これは、前輪への荷重のかかり方と関係があるのかもしれない。
乗り心地は路面からのザラつきも、細かいゴツゴツとした動きもなかった。ゼブラ路面でも上下動にキツさは感じされなかった。ちなみに、以前に試乗した前輪駆動は、245/45R19、今回は235/45R20のいずれもピレリのタイヤ「P ZERO」を装着していた。
室内は、基本的には前輪駆動モデルと同じだが、後席の床面の中央トンネルは低くなり、レッグスペースには余裕がある。荷室は奥行き、左右幅、高さなどは同じだが、サブトランクの高さは、現行車のほうが余裕があるようで、充電ケーブルなどは、床下のサブトランクに収納できた。
充電に関しては自宅の200Vで行なうと電池容量が74%で、充電を開始すると7時間で充電完了の表示が出た。今回は試乗時間が長くなかったので、30.5kmを走行した。走行後にチェックしてみると、電気は8%減で、残りが87%、走行可能距離は430kmと表示されていた。スタート時は460kmだったので、30.5km走行は表示どおり。
電費だが、のんびりと流した状態で、6.13km/kWhを記録。6km/kWh台というのはかなり良い数値だと思う。電費に関しては、運転者の走行テクニックによっても左右されるし、試乗車の場合、エアコンオンで走行可能距離が40kmも短くなってしまうのを目撃すると、電池技術などは、まだまだ開発の余地が潜んでいるはず、と思ってしまう。
日進月歩で歩んでいるEV開発。次の一手が楽しみだ。
■関連情報
https://www.volvocars.com/jp/cars/xc40-electric/
文/石川真禧照 撮影/萩原文博