東京・広尾にあるベーカリー「BROD (ブロード)」のサワードウブレッド
海外が発祥のパンだが、日本ももはや、パン大国と呼べるくらいさまざまなパンが販売されている。
パンというと、パン酵母(イースト)を使用するイメージがあるが、イースト以外にも天然酵母を使用して作るパンもある。そのひとつがサワー種を使った「サワードウブレッド」だ。
「サワードウブレッド」は、パン好きの方には馴染みあるものかも知れないが、現在の日本では、どこでも手に入るほど多く出回っているとは言い難い。
サワードウブレットとは?
写真はブロードのサワードウブレッド
ドイツに数年間住んでいた筆者は、よく酸味のあるモチモチしたパンを食べていた。その時は知らずに食べていたが、それは「サワードウブレッド」の1種であった。北ヨーロッパで特によく食べられるパンだという。
サワードウブレッドは、3000年以上の歴史を持つ伝統的なパンの製法だと言われている。
パン酵母(イースト)を使わず、ライ麦や小麦粉と水のみ。粉や空気に含まれる自然由来の酵母や乳酸菌などで長時間じっくり発酵させるのだ。
発酵の過程で生まれる乳酸により、サワードウブレッドは独特の強い酸味と風味を持つのが特徴的なパンである。
デンマークでは主食のサワードウブレッド
東京・広尾にあるベーカリーの「BROD (ブロード)」。ブロードは、サワードウブレッドが食べられるベーカリーのひとつだ。ブロードでは、北欧のパン作りの伝統とトレンドを応用し、栄養価が高く風味豊かなパンやお菓子を手作りしている。
店主であるデンマーク人のクリスティーナ・ガネア氏が、サワードウブレッドについて詳しく話してくれた。
ブロードの店主クリスティーナ氏
まず、サワードウブレッドはデンマークでは主食に位置するという。
デンマークではパン文化が食の伝統に深く根ざしており、高品質で風味豊かなパンがたくさんあるとのこと。
サワードウブレッドは朝食(通常は小麦ベースのパン)と昼食(通常はルグブロドと呼ばれるライ麦パン)、そして夕食にも食べられているんだとか。
「サワードウブレッドは、パン酵母が生まれる前から、何百年、何千年もの間、伝統的に作られてきた製法のパンです。
ここ20年ほどの間に、デンマークの人々の健康志向が高まり、食べ物の食材や製法を意識するようになりました。食材がどのように選ばれ、どのような方法で生産され、どこから調達され、どのように栽培されてきたか…といったことを重視するようになってきたのです。
そこで、伝統的なレシピや製法が再注目され、サワードウブレッドはそんな考え方と密接につながっています」(クリスティーナ氏)
サワードウブレッドがヘルシーと言われる理由
サワードウブレッドは「ヘルシー」だと言われている。その理由はなぜだろうか?クリスティーナ氏は次のように話す。
「一般的にサワードウブレッドは、従来のパンよりもヘルシーだと言われています。長い発酵の過程でグルテンが分解されるので、人によっては消化しやすくなると聞いています。また、発酵によって生まれる乳酸菌は、腸の健康に寄与すると考えられています」
さらに、サワードウブレッドはGI値が低く、血糖値が急上昇しにくいという研究結果もあるんだとか。
サワードウブレッドが食べられる店舗2つ
ここで、サワードウブレッドが食べられる2つの店舗をご紹介したい。
デンマーク人の店主が営む「BROD(ブロード)」
まずひとつ目は、今回取材に対応してくれた、東京・広尾にあるベーカリーの「BROD (ブロード)」。店名はデンマーク語でパンという意味である。ブロードでは、北欧のパン作りの伝統とトレンドを応用し、栄養価が高く風味豊かなパンやお菓子を手作りしている。
「私たちのベーカリーでは、すべてのパンがサワー種のみで作られており、市販のイーストは一切使用していません。
日本ではまだオーガニック食材の入手が比較的限られていますが、可能な限りオーガニック食材を使用しています」
ブロードのサワードウブレッドには、油脂や加工糖、人工的な調味料も使っていないという。
また、サワードウブレッドを作るベーカリーの中には、サワードウの培養液の活性が十分でない場合に備えて、発酵を促進し、発酵を早めるための「保険」として、市販のイーストを少々使用するところもある。しかし、ブロードではそれも行っていないとのこと。
穀物の風味を生かすブロードのサワードウブレッド
ブロードで販売されているサワードウブレッドについて話を聞いた。どのようなこだわりがあるのだろうか。
「私たちのサワードウブレッドの製法は、生地の発育と発酵に時間をかけるため、3日間かかります。そして毎朝焼きたてをお届けしています。
そうすることで、複雑な風味を持つパンが出来上がり、お客様からは『他ではなかなか味わえない』と好評をいただいています」
ブロードでは常に、よりおいしいサワードウブレッドを作れるように模索しており、レシピを頻繁に微調整しているんだとか。
「ライ麦、全粒粉をふんだんに使うことで、独特の風味が生まれるだけでなく、健康的な栄養価も備わります。
また、材料は小麦粉、水、塩というシンプルなものを使用しています。パンの中にたくさんの具を入れるのではなく、穀物の風味を生かすことに重点を置いています。
穀物の風味を重要視するということは、責任を持って栽培された穀物の使用にこだわるということでもあります」
気になった方は、ぜひブロードの穀物の風味豊かなサワードウブレッドを試してみて欲しい。
【店舗詳細】
BROD (ブロード)
渋谷区広尾5丁目4-20
https://www.brod.jp/ja
海外の方からも人気のサワードゥブレッド「No.4」
東京都の有楽町線、麹町駅から徒歩3分の場所にある「No.4」。
No.4は“朝から晩まで自由なスタイルで「ハンドクラフト」を楽しめる空間”というコンセプトで展開している。
No.4のサワードウブレッド
No.4のサワードウブレッドは、湯種やお湯を使用したオリジナルの製法のサワードウとのこも。国産小麦や有機小麦・ライ麦を使用したものや全粒粉を使用したもの、シリアルを練り込んだものなど様々な種類のサワードウを販売している。
土地柄、大使館の関係の海外の方や、飲食店の方などの方に購入していただけることも多いんだとか。
No.4のサワードウブレッドを実食!
「No.4」のサワードウブレッド(ハーフサイズ)
No.4のサワードウブレッドは人気商品のため、夕方には売り切れてしまうこともあるんだとか。予約した方が確実だとお店の方に勧めていただき、ハーフサイズを予約して無事購入することができた。
せっかくの焼きたてなので、まずは何もつけずにいただいた。サワードウブレッドならではの酸味と焼きたての香ばしさが感じられ、歯応えのあるクラストに対して中はモチッとしている。
【店舗詳細】
No.4
東京都千代田区四番町5-9
https://www.tysons.jp/no4/
酸味と風味が病みつきになるサワードウブレッド
一度サワードウブレッドの独自の酸味を味わうと、普通のパンでは少し物足りなく感じてしまう。おいしくて健康効果も期待できるというのだから、一石二鳥だ。
まだ体験していない方は、ぜひ一度サワードゥブレッドの酸味やモチモチ感を味わってみて欲しい。
取材・文/まなたろう