203年1月にEVハッチバック「ATTO 3」を日本市場に初めて投入した中国のBYDが、早くも第2弾のEVとしてコンパクトハッチバック「ドルフィン」を発売した。全長4290mm、全幅1770mm、全高1550mm、ホイールベース2700mmというサイズは、例えば全高は本来1570mmだが、日本市場では立体駐車場の高さ制限が1550mmが多いという、日本からのリクエストに応じる形で、ルーフアンテナの形状を改め、全高を下げている。
日本市場を意識した魅力的な装備
もう1点、日本市場を意識したのでは? と思えたのが、安全装備のひとつに、「幼児置き去り検知システム」がある。これはミリ波レーダーにより、車内に生命体が取り残されていることを検知すると、ライト点滅やホーンで周囲に知らせるというシステムだ。日本で幼稚園児が送迎バスに取り残されたり、スーパーマーケットやパチンコ店の駐車場に置き去りにされ、悲惨な事故が多い日本の実情を、敏感に感じ取り、標準装備としているのかもしれない。
そのほかの装備などを調べてみると、実に日本のユーザーのニーズをつかんでいるような気がする。それは、かつて日本車が世界のマーケットで、相手国に合わせたクルマづくりをし、シェアを増やしていった過去とオーバーラップするのだ。とはいえ、クルマは走ってナンボの世界。コラムから生えているシフトスイッチをDに動かす。このポジション設定は慣れを要するが、自身がオーナーになれば問題ではない。
アクセルペダルを踏み込んで、スタート。ヒューンというEV特有の走行音も発することなく「ドルフィン ロングレンジ」は走り出した。日本で発売される「ドルフィン」は44.9kWhの電池容量、95PS、160Nm、航続距離400km、車両本体価格363万円と、58.56kWh、204PS、310Nm、航続距離476km、車両本体価格407万円の「ドルフィン ロングレンジ」が用意されている。
試乗したのは後者。乗車時は95%充電で、走行可能距離は496kmを示していた。カタログ表示よりも距離数が多く表示されていたが、EVは前回に走行した時の条件を反映して、表示がされるので、こういうこともおこり得るのだ。それよりも充電率のほうが大切になる。
スタートからの動きは、特に速いという印象はない。車両重量1560kgは、日産「リーフ」より100kg以上軽く、パワーは大差ないが、軽快さより、大人しい感じだ。しかし、動力性能をテストする時などに、アクセルペダルを全開にすれば、EV特有のトルクの立ち上がりからの全開加速で、0→100km/hを6秒台という、ガソリン2ℓツインターボ車並みの加速力は秘めている。コンパクトファミリーカーという性格上、この爆発力が抑えられているだけなのだ。
ドライブモードは「NORMAL」を選択したが、「ECO」「SPORT」ではそれぞれ加速感も異なっている。さらに回生モードは「High」「Standard」が選択できるが、ワンペダル操作のような完全停止モードはなかった。