「日本版ライドシェア」は、その全容が固まっているというわけではない。未だ議論が進められている最中の部分が多く、それ故に記事内で「ここがこうなる」と書いても翌日にそれが覆ってしまう可能性もある。
今回の記事では、日本版ライドシェアの「タクシー会社以外の業者の参入」に関する話題である。
これも不確定要素が多い事項ではあるが、筆者がこの記事を執筆している2024年1月15日の時点で分かっていることを解説したい。
規制緩和を模索する議論が開始へ
去年12月26日に行われた「第18回規制改革推進会議 第61回国家戦略特区諮問会議(合同会議)」において、日本版ライドシェアが議題に上がった。
ここにリンクのPDFファイル「規制改革推進に関する中間答申(案)」の6ページから10ページをご覧いただきたい。タクシー事業とライドシェア事業が今後どうあるべきかが詳しく記載されている。
7ページの「エ 自家用自動車を用いた有償運送の制度改善」という項目には、こうある。
上記制度の設計に当たっては、タクシー事業者が運送責任を負うことや安全を確保することを前提に、新たに活用する地域の自家用車・ドライバーについての教育、運行管理・車両整備管理の在り方等を検討するとともに、道路運送法第78条第3号に基づく許可については、地域公共交通会議における協議が法律上明記されていないことを踏まえて行う。
ここで注目すべきは「タクシー事業者が運送責任を負うことや」という文言。
やはり、日本におけるライドシェアはタクシー会社による運行が大前提なのか……と思いきや、その直後の項目「オ タクシー事業者以外の者によるライドシェア事業のための法律制度についての議論」で早速それを覆している。
国土交通省は、上記エの施策の実施効果を検証しつつ、タクシー事業以外の者がライドシェア事業を行うことを位置付ける法律制度について、議論する。
これはあくまでも「国交省でこれから議論するように」ということに過ぎず、決定事項ではない。しかし「今後の検討課題」ということで、資料にはこのようにも書かれている。
オの法律制度の検討及びエbの制度詳細の検討に当たっては、以下を踏まえた検討が行われる必要がある。また、その際、利用者起点を前提としつつ、タクシー、バス事業者など既存事業者との「共存共栄」に最大限の配慮を行う必要がある。
3 新たな働き方の尊重、副業・兼業の推進
ドライバーとライドシェア事業者との契約関係について、ドライバーの相当数は諸外国と同様に、副業・兼業としての就労が予想され、また、そうしなければ、必要なドライバー数を確保できない可能性が高いことを踏まえ、雇用に限らず、業務委託を含め、個人が「好きな時に好きなだけ」働ける制度設計とすること。また、その際、いわゆる「ワーキングプア」を生むのではないかとの懸念に十分に配慮すること。
4 自由度の高い料金規制 必要に応じて現行ハイヤーに対する料金規制の緩和を行い、ライドシェアとハイヤーとのイコールフッティングを確保すること。
5 地域・時間帯・台数の不制限 ライドシェア事業について、運営可能な地域・時間帯の制限をかけず、また、事業に利用する自家用車の台数制限をかけないこと。
これは、筆者自身も記事に書いていた「タクシーと殆ど変わらないライドシェア」から大きく進歩する内容ではないか。