「観光地で電動キックボードを活用しよう」という取り組みは、現在岐路に立たされている。
それは去年12月1日に長野県軽井沢町で発生した事故に起因する。国道の交差点で電動キックボードが高速バスと衝突し、電動キックボードの搭乗者が死亡したという痛ましい事故だ。
この事故を受けて、軽井沢町は声明を発表した。何と、「電動キックボードで公道を走行することは控えるように」という内容である。
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電動キックボードに対する批判
去年の道路交通法一部改正は、極めて大きな話題となった。
それはやはり「特定小型原付」区分の新設が注目を浴びたための現象だろう。街乗り用の電動キックボードは、最高速度や保安部品等の条件を満たせば特定小型原付となり、免許を取得せずともこれを公道で走行できるようになったのだ。
この法改正は、必ずしも国民から歓迎されているわけではない。むしろ、批判の声のほうが大きいと感じるほどだ。
アメリカ西海岸の都市よりも幅が狭くてカーブも多い日本の道路では、電動キックボードは危険ではないか? そのような声は数年前からあったことを筆者は記憶している。
一方で、都市部だけでなく地方の観光地などでも電動キックボードのシェアサービスの導入が進められていることを鑑みると、我々日本人は電動キックボードに対して期待と不安の両方をごちゃ混ぜにしながら胸に抱いていたということにもなる。
事故から何を見出せるのか?
そんな中で発生した軽井沢町での事故。これに対して、自治体は極めて敏感だった。
「電動キックボードの町内での使用に関するお願い」と銘打たれた声明が、軽井沢町の公式サイトで公開されている。その中で最も重要と筆者が感じたのは、以下の部分である。
道路交通法上認められている案件であることは理解のうえではありますが、軽井沢特有の事情を踏まえて、これまで保健休養地として培われてきた軽井沢町の安全な交通環境を損なうことのないよう、電動キックボードの公道での使用を控えるなど、最大限の配慮をお願いします。
(電動キックボードの町内での使用に関するお願い-軽井沢町)
法律で認められていることに対して「使用を控えて」と投げかける地方自治体の声明は、多くの場合民主主義の在り方を問うような顛末になってしまう。
しかし、今回の場合に限ってそのような反発が全くないのは、やはり人命にも関わる現実的問題に突き当たっているからだろう。
改正道交法が地方自治体を困惑させている事実は、誰しもが認識せざるを得ないのではないか。