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「生成AIは100%数学でできている」現役スタンフォード生が語るAI時代の算数力

2024.01.21

高まる中学受験熱は新たなトレンドを生んだ。2ケタ同士のかけ算の暗算ドリルが続々登場しているのだ。中でも画期的かつ簡単な暗算法として超話題の「あゆみ算」開発者であり、最先端AIを学ぶ岩波邦明医師を取材した。

医師・現役スタンフォード生
岩波邦明さん
1987年生まれ。東京大学医学部卒。在学中に暗算法「岩波メソッド ゴースト暗算」を開発。著書は66万部を超えるベストセラーに。

要点を斜め読み

■ 生成AIの開発には、数学的な知識が必要不可欠になっている
■ 計算力よりも大切なものは数学(算数)への〝得意意識〟
■ 新著『小学生が99×99までスイスイ暗算できる最強ドリル』は成功体験の源

米国スタンフォード大で医療用AIの開発に挑む

──岩波先生は現在、スタンフォード大学でAIの勉強をしています。医師でありながらAIを学ぶ理由をお聞かせください。

 2022年11月、オープンAI社が生成AIのChatGPTを公開し、世界中に衝撃を与えました。私も衝撃を受けたひとりで、大きな衝撃を受けたと同時に、生成AIの世界に興味が湧いたのです。こんなにおもしろい世界があるのか、と。翌年2月頃からプログラム言語やAIの勉強を始め、現在はスタンフォード生として大学院コースを受講しています。

──最先端のAIを勉強する中で、気づきがあったそうですね。

 はい。生成AIは、100%数学でできていると言っても過言ではないという確信を得ました。高校数学の分野でいうと、微分、確率、ベクトルが、生成AI開発の根幹部を支えているのです。「数学を勉強しても将来、何の役にも立たない」という言葉をよく聞きますが、数学は世界の最前線を切り開くために必須な知識だと改めて気づきました。

──生成AIが数学でできているとはどういうことでしょうか?

 例えば、ChatGPTはどうやって回答を導き出すのでしょうか。「今日の天気は?」という質問に、天気に対応する言葉群から答えを選んでいると考える人は多いと思いますが、実際は違います。確かに昔はそのようなプログラムだったこともあります。しかし現在の生成AIは、数式によって確率的に最も正しい〝らしい〟ものを選んでいるのです。

 開発のステージでは、この回答の精度を向上させるために、微分を用いて数十億、多いときには数千億ものパラメーターを調整しているのです。この調整によって、いわゆるAIの賢さが決まります。

──数式で導き出すということは生成AIに学習させる段階で、数字で学習させるのでしょうか?

 そのとおりです。生成AIのひとつであるChatGPTは〝言語〟ではなく言語を〝数字〟に置き換えてデータを蓄積します。そのおかげで生成AIは、それぞれの言語モデルを習得させる必要がなくなります。ChatGPTが英語だけでなく日本語やほかの言語でも高い性能を発揮できるのは、それが理由のひとつだと考えられます。

──先生はAIを勉強した先に、どのようなビジョンを思い描いているのでしょうか?

 医療用の生成AIを開発したいと思っています。例えば、医療画像を生成するAIです。X線写真を学習させた画像生成AIがあれば診療、研究、教育など多分野で活用できるようになるでしょう。

 また、自閉症の人たちをサポートする対話型AIの開発も考えています。ジョブインタビュー(就職面接)の練習やアドバイスをしてくれるAIがあれば、自閉症の方々の生活を助けることができるでしょう。そういった、医師という仕事に直結する生成AIの開発ができればと、精進しています。

〝難しい〟よりも先に〝楽しい〟という体験を!

──先生は学生時代から数学(算数)が得意だったのでしょうか?

 得意というか好きでした。好きの結果、得意になったという表現が正しいかもしれません。4~5歳頃でしょうか。たし算やひき算を教えてもらった時期に、どうやら「かけ算」というものがあると何かの本で読んだのです(笑)。

 かけ算のやり方がわからなかった私は、ひとりで公園の地面に数字を書いて考えていたことを今でも覚えています。

 結局、かけ算の方法を自分で見つけ出すことはできませんでしたが、「数字(算数)っておもしろいな」という体験ができました。これが数学(算数)を好きになったきっかけのひとつですね。

〝難しい〟よりも先に〝楽しい〟という体験ができたことが良かったのでしょう。新しいことを学んでも常におもしろさを見つけることができました。

AI開発で頻出する数学の公式

AI開発で頻出する数学の公式上は複数の変数が相互に関連していると仮定し、それらが共同で形成する正規確率分布を示す、多変量正規分布の公式。生成AIにおけるランダムなノイズの生成など、幅広い形で用いられるという。

算数嫌いの特効薬は成功体験の積み重ね

──先生は2023年12月に、小学生向けの新たな暗算ドリル『小学生が99×99までスイスイ暗算できる最強ドリル』を執筆しました。執筆の狙いを教えてください。

「あゆみ算」という2ケタ同士のかけ算を簡単に暗算できる画期的な計算方法を広めたかったというのはもちろんあります。それ以上に私は子供たちに〝算数の成功体験〟を感じてほしいのです。

 数学に苦手意識を持っている人は、数学(算数)でつまずいてしまったからだと思います。それがかけ算なのか分数なのか、XやYといった代数を使った方程式なのか、人それぞれだと思いますが、安心して下さい。数学が得意な人であっても、新しいことを習った時に一度で理解できているわけではない。まずはこのことを知ってほしいのです。大切なのは、わからないから〝つまらない〟ではなく、わからないから〝おもしろい〟と感じられるかどうか。そのカギとなるのが〝成功体験〟であると私は考えているのです。

──小学生で2ケタ同士のかけ算を暗算で解ければ、クラスで人気者になれますよね。

 そうなんです。同級生たちと比べて算数ができる子として扱ってもらえるし、褒めてもらえる。こういった体験を小さい頃にしてほしいのです。2ケタ同士のかけ算と微分・積分は、一見すると直接の関連性がはっきり感じにくいかもしれません。でも、成功体験は違います。成功体験は、微分・積分がわからない時に精神的な支えにもなるのです。

 AIの存在感がますます強くなるこれからの時代に、数学(算数)の重要性はさらに増します。つまり、数学(算数)に対する得意意識は次世代のビジネスパーソンにとって不可欠なスキルになると言っても過言ではないでしょう。

計算力とプログラミング脳を鍛える
2ケタ×2ケタの暗算メソッド「あゆみ算」を開発

『小学生が99×99までスイスイ暗算できる最強ドリル』『小学生が99×99までスイスイ暗算できる最強ドリル』

岩波邦明著

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2011年に開発した「ゴースト暗算」に続く、最新メソッドを1日10分から始められるドリル形式でわかりやすく解説している。2ケタ同士のかけ算全8100パターンに対応する新しい暗算法「あゆみ算」ほか、6つの暗算法を収録。プログラミング学習に必要な「空間認識能力」「論理的思考力」「やり抜く力」を習得させたい保護者世代はもちろん、脳トレドリルとしてもおすすめ。

取材・文/峯 亮佑

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