世界的に広がる地域密着型のアプリでフードロス対策
サステナブルな運動が活発な近年だが、世界的にみると食品の40%が廃棄されているという残念な現実(2021年WFP調査)がある。
世界中のフードロスを減らすという目的で、「捨ててしまうには良すぎる」という意味を持つ「Too Good To Go」(トゥーグッドトゥーゴー)という会社が2015年にデンマークで設立された。
モバイルアプリを通じて、地域のレストランやショップとお客さんを繋ぎ、売れ残った食品を安く提供、そして食品ロスを減らす仕組みを確立している。
2019年8月にはオーストリアにも進出。その後、スペインやフランスなどにも広がり、2023年9月現在ではベルギー、ドイツ、イタリア、オランダなどヨーロッパを中心にカナダ、アメリカなど18か国で利用されている。
日本で利用されているアプリ「TABETE」とは似ているものの、「Too Good To Go」は規模が圧倒的に大きい。登録ユーザー数で見ると「TABETE」は50万人、「Too Good To Go」はオーストリアだけで200万人、世界的には2000万人にのぼる。
登録店舗数も「TABETE」が2500店舗以上なのに対し、「Too Good To Go」は43000店舗以上とこれも圧倒的に多いのが特徴だ。
この3年間で利用者は950万人を超えた。2022年は577万人がユーザー登録し、154000軒のお店が登録され、1億3900万食の食べ物がこのアプリを通じてお客さんの手に渡った。そして2023年は2億食を超えるなど更にその規模は増加中だ。
筆者が住んでいるオーストリアでは200万人のユーザー、6843軒のお店(1392軒のパン屋さん、1008軒のレストラン、4145軒のスーパーマーケットなど)が登録されている。
有名高級ホテル(ホテルザッハー、ヒルトンなど)のレストランや、スターバックス、ダンキンドーナッツなどの世界的チェーン店、世界文化遺産になっているウィーンのカフェハウスも登録されている。
そして驚きなのはオーストリアの環境省のウェブサイトにも、フードロスとCO2を削減する環境対策アプリとして紹介されていることだ。政府もお勧めするToo Good To Goの仕組みを詳しく見ていこう。
シンプル&使いやすいアプリの仕組み
アプリをダウンロードして、クレジットカードなど支払い方法を含む個人情報を登録。そして自宅や会社などを登録したり、位置情報をONにすることで近くのお店が優先的に表示される。
近くのお店、気になるお店などはお気に入り登録できるのでいちいち探したりしなくても良いし、お店の名前だけではなくメニューや食べたいもの、希望のピックアップ時間などでも検索ができる。
そして気に入った商品を見つけたら、購入予約をクリックし、指定時間にそのお店に取りに行ってアプリの画面を見せて受け取る。
登録されているお店はホテル、レストラン、スーパーマーケット、ベーカリーなどと幅広く、それぞれのお店はその日や翌日の販売状況・売れ残り状況を見て、商品の数を決める。
お店側はただ余ったものを商品の規定に沿って袋に詰めて、取りに来た客のアプリ画面を見て商品を渡すだけなので、通常の販売と対して変わらない労力で済む。
売れ残こり捨ててしまう=廃棄代金がかかるので、このアプリを通じて商品がさばければ環境に優しい、食品ロスを減らすだけはなく実際のコスト削減にもなるだけではなく、代金も多少なりとも貰えるのでいい事尽くめだ。参加店の売り上げが良く、売れ残りがなければ「本日はなし」と表示される。
アプリ内で売られている食品は、通常の値段の3分の1以下に設定されている。お客さんはそれぞれの都合に合わせ、場所や商品を選び、欲しいものが通常よりも安く手に入れられる。ピックアップ時間の制限はあるが、最初から場所と受け取り時間枠が分かって選んでいるので、特に不便を感じることはない。
このようにお店に余計な負担はなく、お客さんは自分の都合・希望で安く商品が入手できる。そしてそれが食品ロス・食材廃棄を減らし、地球環境をサポートするというみんなにとって嬉しい仕組みになっているのが世界の多くの国にまで広がっている理由だろう。