近年、市販のシャンプー市場では、500mLで1500円を超える「プレミアムヘアケア」と呼ばれる価格帯のものが勢いを増し、大手メーカーも高価格帯の商品を次々と投入しています。
これは、より自由な髪型、髪色を楽しむ人が増えると同時に、髪のコンディションを良い状態に保ちたいニーズが高まったからだと考えられます。
メディアやSNSなどを駆使して、より自分の髪の状態を良くしてくれるヘアケア製品を探していると、必ず行き当たるワードがあります。
「サロン専売品」
その名の通り、サロン(主にヘアサロン)でしか購入できないシャンプーやコンディショナーのことをいい、価格も高め。とはいえ、前述したように市販のシャンプーが高価格帯化しているので、その差は縮まっています。
そうなると、ドラッグストアなどで手軽に買える高価格帯のプレミアムシャンプーと、サロンでしか変えない「サロン専売品」のシャンプーの違いはどこにあるのでしょうか?
単に「ドラッグストアに卸すか、ヘアサロンに卸すか」という流通経路の違いだけなのか……? そんな疑問を晴らしに、サロン専売ヘアケア製品を長年開発しているメーカー、タカラベルモントへ話を聞きにいきました。
タカラベルモントってどんな会社?
タカラベルモントは1921年に創業し、昨年10月で103年目を迎えた企業で、理美容と医療、二つのジャンルでプロフェッショナル向けの機器や化粧品を製造販売しています。
ヘアサロンのシャンプー台や、歯科や産婦人科の診察椅子など「プロ向け」に提供しているものは実にさまざま。
昨今では「ヘッドスパ」という言葉は一般に浸透していますが、実は「ヘッドスパ」というサロンで行う技術を生み出したのはタカラベルモント。
シャンプー台で洗髪だけではなく、頭の温浴的なことができないか…という発想から生まれたそうで、海外でも講習するなど、日本だけでなく、世界のサロンに向けても普及させたとか。
私たち一般ユーザーがよく目にする「ルベル」は、1977年にスタートしたサロン専売ヘアプロダクツブランド。シャンプーやヘアトリートメントなどのヘアケア用品以外にも、サロンメニューで使用するパーマ剤やカラー剤などを製造・販売しています。
研究者に聞く!「サロン専売シャンプー」とは何か
タカラベルモントの事業内容を改めて聞くと、「ルベルの会社」と筆者が認識していたより1000倍くらいの事業規模であることにひるみましたが、気を取り直して「サロン専売シャンプー」の正体について、タカラベルモント研究員の戸田和成さんに話を聞きました。
タカラベルモント株式会社 化粧品研究開発部 戸田 和成さん/2014年、タカラベルモント入社。大阪大学大学院 修士課程修了。タカラベルモントでは、カラー剤の研究からキャリアをスタート。現在、メンズスキンケアやヘアケアの製品開発に携わる。同時に基盤研究として、毛髪の芯部「メデュラ」における構造変化を解明し、そこに着目した化粧品開発を行っている。
「我々は、“サロン専売シャンプー”とは、自身の頭皮や髪の状態に適したものを、理美容師さんが提案するシャンプーと捉えています。
自分の頭皮や髪の正確な状態は意外にわからないものなので、毎日多くの方の髪を触っている理美容師さんに、数ある選択肢の中から選んでいただくことにポイントがあると思っています」と戸田さん。
市販のシャンプーとの違いについて聞くと「市販のシャンプーは多くの人に向けてつくるため、“しっとり”“さらさら”といった使用感の違いなど、わかりやすいラインアップで分かれていることが多いですが、サロン専売シャンプーは乾燥頭皮用、敏感肌用、クセ毛用など、その人の髪の状態やお悩みなどに合わせてセレクトできる種類を多くそろえています」。
ふだん私たちが市販のシャンプーなどヘアケア用品を選ぶときは、頭皮の状態を自分で見ることができないので、「ベタつく気がする」などの「感覚」や、洗い終わった後や乾かした後の「使用感」で決めることが多いもの。
「サロン専売シャンプーは、、理美容師さんが頭皮や髪の状態を見て提案してくれるので、自分に合った製品を使用できると思います。」(戸田さん)
勝手なイメージでリッチな美容成分がふんだんに入っているのか?などと思っていましたが、そもそも市販のシャンプーとサロン専売シャンプーは役割が違うものだということが判明しました。
市場のニーズはより贅沢に。プラスアルファが求められる
より多様化していくヘアスタイルを支える、ヘアケアブーム。サロンスタイリストと一緒に商品開発をしているというタカラベルモントに寄せられるオーダーにも、変化があったのでしょうか? さらに戸田さんに市場についても聞いてみました。
「一番は、シャンプーに求められる機能が増えたことだと考えます。今まではシャンプーは、汚れを取る機能がメインでしたが、シャンプーして髪の毛をキレイにしたいなど、プラスアルファが求められるようになったのが市場の変化だと思います」(戸田さん)
確かに市販商品でも「洗いあがり」を全面に出していることが多いイメージです。サロン専売シャンプーをつくるタカラベルモントとしては、そんなニーズにどう応えているのでしょうか?
「昨今、ナチュラル系やオーガニック系といわれる自然由来成分高配合のシャンプーが市販品でも増えてきたと思います。
ヘアカラーをしている髪だと、洗いあがりの髪の毛が引っ掛かったり、きしむことがありますが、様々な研究を重ねて、自然由来成分配合のシャンプーながら、なめらかな指通りで使い心地がよいものを目指して開発したヘアケアを昨年発売しました。」(戸田さん)
シャンプーで洗いあがり「とぅるん」は新成分ではなく新配合で実現
ここまで話を伺ったとき、「何か特別な成分でも入れたのかな」と勝手に想像していました。しかし実際には、「全く新しい成分を採用すると、安全性面で不安があるのと、現実味のある価格でなくなるため、今すでに使用している成分の組み合わせを工夫することや、スキンケアなど他のアイテムで使われている成分を配合することで、使用感に差をつけることを目指しました」と戸田さん。
実際、自然由来成分(※)高配合ながら「とぅるん」とした洗いあがりを提供することに成功した「THE MOII(ザ・モイ)」のシャンプーは、さまざまな成分が入りながらも泡のサイズのばらつきを少なく、均一化することで指通りの良さを実現。
自然由来系の成分で濃密で均一な泡をつくることは難しく、配合量の比率を緻密に変える実験を重ね、製品化するのが大変だったそうです。
※自然由来成分=成分の由来の大半が植物等の非石油系成分または水である
ザ・モイ シャンプー メロウアウト 250mL/¥3,300
2023年10月20日にリブランディングされたナチュラルライフスタイルシリーズ「THE MOII(ザ・モイ)」。成分の由来の大半が植物等の非石油系成分ながら、洗いあがりが「とぅるん」としたシャンプーが実現!
・ザ・モイ シャンプー メロウアウト 250mL/¥3,300
https://salon.beauty-city.jp/shop/contents.html?fkey=THEMOII