ソニーは、高精細なXRヘッドマウントディスプレイを備え、仮想空間内で直感的なインタラクションが可能な没入型空間コンテンツ制作システムを開発したことを発表した。
↑XRヘッドマウントディスプレイおよびコントローラー(※1)
独自のメタバース技術とハードウェアで3Dコンテンツクリエイターを支援
今回ソニーから発表されたのは、高画質の4K OLEDマイクロディスプレイ(※2)やビデオシースルー機能を搭載したXRヘッドマウントディスプレイと、3Dオブジェクトの精密な操作に最適化したコントローラーを備え、空間コンテンツ制作における高度なクリエイティブ作業に対応する没入型空間コンテンツ制作システム。
今後、エンタテインメント領域や工業デザインを含む、さまざまな3D制作ソフトウェアへの対応を予定しており、第1弾として工業デザイン分野をリードするシーメンス社と協業し、同社のオープンデジタルビジネスプラットフォームSiemens Xceleratorのソフトウェアを使用した、没入型のデザイン体験とエンジニア間のコラボレーションを実現するための新しいソリューションを導入するという。
なお、同システムは2024年中の発売を予定しており、詳細な発売日・地域・価格・販路・仕様・各ソフトウェアの対応状況は、今後ソニーおよび各パートナーより発表されるとのことだ。
<主な特徴>
■高画質なXR映像技術により、クリエイティブ用途に対応
ヘッドマウントディスプレイは、片眼4K、両眼8Kの高解像度を持ちDCI-P3(※3)を最大96%(※4)カバーする、大型の1.3型OLEDマイクロディスプレイを搭載。3Dオブジェクトの質感や色を精細かつ忠実な色再現で表示することができ、クリエイターがヘッドマウントディスプレイを装着したまま、モデリングから質感や色の確認までの工程を行うことを可能にする。
さらに、レンダリングの負荷をPCとヘッドマウントディスプレイで分散するスプリットレンダリングに対応(※5)し、3D制作ソフトウェアで扱うデータサイズの大きい3Dモデルを、高精細で安定的に描画することができる。
また、Qualcomm Technologies, Inc.社との協業により、同社製の最新XRプロセッサーであるSnapdragon XR2+ Gen 2をいち早く採用。4K OLEDマイクロディスプレイの性能を最大限に引き出し、圧倒的なリアリティのあるXR体験を実現するとともに、プロセッサーに搭載されたAIによりユーザーの動きや周囲の空間を認識し、現実と仮想空間を融合したかつてないクリエイティブな制作環境を提供する。
■直感的な空間コンテンツ制作体験を提供するコントローラー
仮想空間のオブジェクトを直感的に操作できるリング型コントローラーと、空間点指定に最適な形状とモデリング作業時に効率的なボタン配置を追求し、安定して正確なポインティングを可能にする、ポインティングコントローラーが付属。利き手でポインティングコントローラーを持ち、反対側の手の指にリング型コントローラーを装着することで、ヘッドマウントディスプレイを装着したまま、左右のコントローラーに加えてキーボードを併用して制作、編集作業を行なうことができる。
↑ポインティングコントローラーによる正確な空間点の指定(イメージ)
■現実と仮想空間をシームレスにつなぎ、快適な作業を実現する設計
デバイスの重心バランスの調整や、頭部に直接触れるパッド部分の素材や形状の最適化により、長時間の制作作業でも快適な装着性を実現。加えて、前面のディスプレイ部分のフリップアップ機構によって、ヘッドマウントディスプレイ全体の着脱による各種調整の手間を最小限に抑え、現実と仮想空間を簡単かつシームレスに行き来することができる。
■3D制作ソフトウェアと連携した、没入感のある制作体験
エンタテインメント領域や工業デザインを含む、様々な3D制作ソフトウェアへ対応予定。第1弾として、シーメンス社とのパートナーシップにより、同社のSiemens Xceleratorインダストリーソフトウェアポートフォリオの製品設計向け新ソリューションであるNX Immersive Designerとの統合を通じて、製造業において革新的な没入型のエンジニアリング体験を実現する。両社の強力なハードウェアとソフトウェアの統合により、工業デザインや商品設計領域のクリエイターが、より没入型のデザイン、レビュー、協業を行うことを可能にする。
なお、同パートナーシップに基づく空間コンテンツ制作体験のイメージ動画は、Siemens Digital Industries Software社のYouTubeチャンネルにて確認できる。
※1 外観は開発中のもので、最終的な商品の外観とは異なる場合がある。
※2 デバイスの性能として。実際に描画可能な解像度は、アプリケーションや使用環境により異なる。
※3 DCI-P3は、デジタルシネマ向けにアメリカの映画制作業界団体Digital Cinema Initiativesが策定した、RGB色空間の規格の1つ。
※4 表示可能な色域はアプリケーションや使用環境により異なる。
※5 有線および無線によるテザー使用時。対応するアプリケーションでのみ使用可能。解像度やリフレッシュレート、表示可能な色域などはアプリケーションにより異なる。
構成/立原尚子