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訪ねた古墳は2500基以上!古墳王子が紐解く古代の人々に学ぶ自然災害への知恵と工夫

2024.01.14

古墳と自然災害―先史古代に生きた人々の知恵と工夫から何が見える?【古墳王子の早口コラム】

はじめまして、小学生の頃から古墳の魅力に目覚め、訪ねた古墳は2500基以上の高校生、古墳王子です。
このコラムでは皆さんにディープでマニアックな古墳の魅力が伝わるよう、僕が感じた感動や発見をオタク特有の早口でお伝えしていきます。

今回のテーマは古墳と自然災害について。

まずは先の能登半島地震で被害に遭われた皆様に、心よりお見舞い申し上げます。このコラムを書いている最中も救助を待たれている方、避難先で不安な時間を過ごしている方、食料や水が不足しているとの情報も目にします。一日も早く日常が取り戻せるよう願ってやみません。

災害対策万全!徹底的にこだわる古墳造り

さて、今回の震災をはじめ2011年の東北大震災や1995年の阪神淡路大震災、さらに遡ると関東地震や安政江戸地震、安土桃山時代の天正地震など記録が残っているもの以前より、日本列島は地震や津波、台風などによる地割れや河川の氾濫に悩まされてきました。

全国に16万基ある古墳もまた例外ではありませんが、なぜこんなにも多くの古墳が1500年以上経過した今も残っているのでしょうか? 実は長年にわたる全国各地での発掘調査や研究で、古墳時代にはプロの古墳設計集団が存在し、かなり計算し尽くして古墳を築造していたことがわかってきました。

古墳を築造するうえで、まず重要なのは立地。地盤のよい高台である。確かに地形図を見ると、低い土地ほど古墳がほとんど存在していないことがわかります。なぜ高台なのかというと、津波や液状化の影響を受けにくく、かつ高い場所から集落や民、そして各地から訪れる他国の使者を見下ろし権力を見せつけるというメリットもあったからだと推測できるでしょう。

このことは現代に生きる我々にとっても重要なポイントで、もしどこかで土地や建物を購入しようと考えたとき、地形図はもちろん、遺跡地図を見てその周辺に古墳があったなら、そこはある程度災害に強い土地かもしれないという大きなヒントと言っても過言ではないのです。

実際に、高級住宅地として知られる東京都世田谷区周辺には古墳が多数存在し、僕が古墳跡とみられる高台の住宅を訪ねたとき、その事実を知った住民の方が『古墳跡地』というパワーワードにかなりのショックを受けていたのですが、「地盤が強いから古墳が造られた1500年お墨付きの安全な土地ですよ!」と力説すると大変お喜びいただけました。

古墳は決して死にまつわる不吉なものではなく、権力を持つ高貴な方が安心して眠りにつき、いつの日か復活することを夢見たスペシャルでセレブリティなシンボルといえるのです!

野毛大塚古墳(東京都世田谷区)

そしてもう一つ大切なのは『裏込め石』。古墳にはご遺体を安置するための部屋『石室』という場所があり、そこの床や天井、壁に使われる大きな石の隙間や裏にある目立たない石のことを、裏込め石と呼びます。

一見すると、大きな一枚岩が石室を支えているかと思いきや、この裏込め石がその名の通り裏で大活躍し、大きな石の間から内部の水分や湿気などを外部に排出させ、大きな石にかかる土圧を減らす役割を果たしているのです。まさに縁の下の力持ち!

こういった知恵と工夫で成し遂げられた古墳築造に関わる土木技術は、後に古代道路や堤防、寺院建築などにも生かされ、現代でも少し形を変えながら、様々な土木工事現場に応用され使われています。

水泥北古墳(奈良県御所市)

これほどの知識と技術を持っていた古墳時代の人々ですが、被災しそうだとわかっていながら、あえて断層上に古墳を築造したケースもあります。それはおそらく先に築造し埋葬されていた最愛の人の古墳のそばに死後も寄り添いたいと願ったからでしょうか。

全国を巡っていると、まれに低地や「なんでここに!?」と思わず驚く場所の古墳に出会うことがありますが、そこにはきっとどうしても譲れない何か大切な理由がある、そういう気がしてなりません。

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