法定速度が改正されるわけではない
今後は二輪製造各社による新基準原付製品の発表が待ち望まれるが、その方向性は今の段階からでも十分に予想できる。
それは、たとえば「125ccスーパーカブの新基準原付化」というような内容である。敢えて悪い表現を使えば「125cc車のスペックダウン」だ。
また、それまで原付に課せられていた法定速度や二段階右折といった点は、新基準原付登場以後も継続される見込み。
このあたりは、警察庁としては決して譲れない部分のようだ。報告書概要には、
・最高出力を制御した新基準原付は、加速度が抑えられることなどで、現行原付と同程度に容易かつ安全に運転することができるため、両者を同じ運転免許区分とし、併せて同じ車両区分とすることが適当
・最高出力を制御する機構が不正に改造されないよう、汎用の工具では出力制御部のカバーを取り外しできないような特殊な構造にしたり、電子的な制御と組み合わせたりといった不正改造防止措置を講ずる
・完成車状態でも最高出力が測定できるように関係団体で検討を行う
・小型自動二輪車との区別がつくように外見上の識別性を確保する
・出力を制御していない小型自動二輪車までも原付免許で運転できるようになったとの誤解が生じないよう、周知に努める
(「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」 報告書について-警察庁)
と記載されているが、ここで注目すべきは「最高出力を制御する機構が不正に改造されないよう」の項目。個人的な改造で125cc社本来の性能を取り戻せないようにしてくれ、と警察庁が製造メーカーに要求しているのだ。
もうひとつ、上記の項目の中で筆者が気になっているものがある。それは「小型自動二輪車との区別がつくように外見上の識別性を確保する」。
外見上の識別性というのは、「誰の目にも原付と分かるような新基準原付を作りなさい」という解釈で構わないのだろうか。ここはあくまでも警察庁の注文と言うべき文言で(いかにも警察庁という感じの指摘ではあるが)、二輪メーカーがこれをどう製品に反映させるかは分かりかねる。それも含めて、新基準原付の具体的なシルエットはまだ固まり切っていないようだ。
気になる「車体重量の増加」
この新基準原付に対して懸念点を挙げるとするなら、それは「車体重量の増加」である。
50cc車より125cc車のほうが重くなるのは自然の法則で、そのせいで難儀してしまう人も出てくるのではないか? 降車時の取り回しも非常に気になる。このあたりの実証実験も、今後は公道で実施されるだろう。
この新基準原付に関する計画はまだ始動したばかりで、これから変更点が出てくる可能性もある。二輪メーカーの開発状況と共に、警察庁の動向も大いに注目される。
【参考】
「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会」報告書について-警察庁
https://www.npa.go.jp/news/release/2023/20231219001.html
取材・文/澤田真一