電動キックボードを含む特定小型原付を製造・販売する事業者の間に激震が走った。
国土交通省が現在日本の市場に流通している81車種のうち、「特に保安基準に適合しないおそれがある10車種(10台)に対し調査」した結果、何と6台が保安基準不適合だったのだ。この情報は即座に経済産業省、警察庁、消費者庁、そしてECサイトに共有される。
しかもこれらは、どこかの国の得体の製品というわけではない。かつて海外のクラウドファンディングで注目を集め、製品化を成功させ日本の販売代理店を確保した製品も混ざっているのだ。
保安部品やナンバープレートは設置しているのに、日本の公道を走行することができなくなってしまったこれらの新型モビリティー。一体、何が問題だったのか?
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保安部品の「性能不足」
海外で開発された電動キックボードやモペットを日本のメディアで取り上げる。これ自体に、何ら瑕疵はない。
が、そこには多少の配慮というものも必要だ。日本のメディアで日本語で記事を書く以上、読者の関心は「この電動キックボードは日本で走行できるのか?」という点に集まるだろう。故に筆者は必ず「日本での公道走行は難しい」と書く。日本の代理店もなく、国交省も経産省も認識していない電動キックボードやモペットは公道向けの乗り物ではないことは明らかだ。
しかし、日本代理店を確保した上で日本の保安基準に則った装備を装着した車両が、「保安基準不適合」という理由で販売できなくなる事態が発生したのだ。
国交省が公開しているPDF資料を読んでいこう。たとえば『RICH BIT ES1-Pro』という電動キックボードは、国交省から2点の不備が指摘されている。
・方向指示器の点滅回数が基準値(60~120回/分)以内でない。
・制動灯(尾灯兼用)の明るさが基準値(尾灯の5倍)を下回る。
つまり、保安部品は搭載されているがそれが規定の性能を満たしていないということである。
国交省の細かい指摘
この「性能不足」でつまづいた製品が相次いだ、というのが今回の「不適合ショック」の最大原因のようだ。
国内メーカーの製品である『MOBI-BIKE EXCEED TKG Ver』の場合は、
・ミラーを含めると幅が60cmを超え、特定小型原付に該当せず、一般原付となる。
・方向指示器の左右の間隔が基準値(前方は最内縁が24cm以上、後方は照明部の中心間隔が15cm以上)を下回る。
・前照灯の取付け位置が基準値(照明部の下縁が地上50cm以上、上縁の高さが地上130cm以下)を下回る。
という指摘が国交省から出されている。恥ずかしながら、このあたりは筆者自身も見落としていた部分だ。
こうした具合に細かく厳しい指摘が挙げられ、しかもPDF資料という形で万人に公開されているのだが、「方向指示器の点滅回数」や「方向指示器の左右の間隔が基準値を下回る」といった要素は今後の改設計で対処できるかもしれない。が、中には急場を凌ぐ改設計では済みそうにない指摘も。