運行時刻に制限を設ける神奈川版ライドシェア
地域が違えばライドシェアの中身も違う。それを証明する例として、次は神奈川県の取り組みを挙げたい。
2023年11月20日に開催された第2回神奈川版ライドシェア検討会議で使われた資料が公開されている。その冒頭から、ライドシェアの運行時刻についての記載がある。
この資料に書かれている文言をそのまま借りれば、「タクシー事業だけでは対応することが困難な需要の変動に対し、一般ドライバーが自家用車を使って、利用者を有償で輸送する」ということだ。具体的な時刻は、19時から25時の間。
この神奈川版ライドシェアは、現段階の計画では三浦市のみを対象にした運行である。その対象エリアは、今後拡大される可能性はあるだろう。ただしその場合においても、ライドシェアの運行時刻に変更が及ぶかどうかは現時点では未知数だ。
対象エリアを横浜市、川崎市、相模原市等に広げつつも運行時刻は堅持し続けるというシナリオも考えられる。なお、ライドシェアの実践主体は「タクシー会社」としか記載されていない。
大阪府と神奈川県、どちらも実証実験前の段階ではあるが非常に大きな温度差が見受けられる。
「補完」か「革命者」か
日本版ライドシェアの運行時刻を制限付きにするか自由にするかの賛否はさておき、仮に日本版ライドシェアの標準モデルが神奈川版のそれになった場合を想定して考えてみよう。
神奈川版ライドシェアの料金は、タクシーの同程度になるという方針が既に決まっている。国際的ライドシェアの特徴のひとつに「タクシーより低運賃」という点があるが、それがない以上は利用者にとってのメリットは見出しづらい。
そこで話は冒頭に戻るが、日本版ライドシェアを「タクシーの補完」と表現した朝日新聞の記者もしくはデスクはなかなかいい仕事をしている。
しかし、仮に神奈川モデルではなく大阪モデルのライドシェアが日本版ライドシェアの標準になった場合、それはもはや「補完」ではなく「革命者」と言っても過言ではない。
【参考】
政府、ライドシェアを既存タクシーの補完で検討へ 地域や時間を限定-朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASRBM658RRBMULFA01R.html
大阪がめざすべきライドシェア(案)-大阪府
https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/40016/00464498/03_shiryo2.pdf
第2回 神奈川版ライドシェア検討会議-神奈川県
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/104291/kanagawabanraidosyea.pdf
取材・文/澤田真一