「日本版ライドシェア」は本来の意味での「ライドシェア」とは異なる、という指摘が相次いでいる。
2023年10月19日に朝日新聞が配信した記事に「政府、ライドシェアを既存タクシーの補完で検討へ 地域や時間を限定」というタイトルのものがあるが、まさに「既存タクシーの補完」という表現は最適解だと筆者も考えている。
その上で口の悪い筆者は「日本版ライドシェアはタクシーの亜流」とも表現しているのだが、いずれにせよ現時点における日本版ライドシェアは既存タクシーの下に置かれる設計のようだ。
「補完」である以上、日本版ライドシェアの出番は予め決められた時間帯のみにある。
では、その時間帯とは具体的にいつなのかを調べてみよう。
大阪府のライドシェア構想
記事とは生鮮野菜のようなものである。
それを配信した瞬間から、1秒毎に古くなっていく。上記の朝日新聞の記事も、その当時の情報を総括して書かれたもの。内容と今現在の状況に誤差があるのは当然だ。
日本版ライドシェアの特徴として、その具体的内容の少なくない部分が都道府県の裁量に任されているという点が挙げられる。故に「日本版ライドシェア」という言葉自体が現状を捉えていないかもしれないが、たとえば大阪府は全国で最も「国際的ライドシェアに近い日本版ライドシェア」の導入に熱心な都道府県である。
大阪府が公開しているPDF資料「大阪がめざすべきライドシェア(案)」を見ていこう。これは2023年12月14日の第12回副首都推進本部会議で使われたものだ。
まずはライドシェアの実践主体。これは「安全な運行管理ができる者(タクシー会社、新規参入事業者等)」とある。これは既存タクシー会社のみならず、それ以外の会社の参入を認めるという宣言と捉えてもいいだろう。
雇用形態は「雇用契約又は業務委託契約」、そして資格要件は「第1種免許+講習受講(大臣認定講習並み)、継続的な教育、交通違反歴、犯罪歴等のチェック」という点にも注意する必要がある。
運行区域は「大阪府域全域」、運行期間は「万博開催半年前~終了」、そしてこの記事の本題である運行時間(時刻)は「時間制限なし」即ち24時間だ。
大阪万博は「実験場」
大阪版ライドシェアはその運行が万博期間に限定されるという区切りがあるが、これは見方を変えれば「実証実験」である。
大阪万博の期間は2025年4月13日から同年10月13日まで。その半年前からスタートということは、2024年10月か。つまり、まるまる1年をライドシェアの実証実験に費やし、そこから得たデータを基に今後の行方を決めるという姿勢が見て取れるのだ。
なお、大阪府の吉村洋文知事は万博閉会後もライドシェアを継続する意志を示している。もちろん、それには大阪府と国との度重なる協議が必要不可欠。この両者のライドシェアに対する温度差は否めず、それを今後どのように是正するのかが注目される。