成長を続けるeスポーツは、ワールドワイドの祭典へと発展しようとしている。JOCはeスポーツを題材にした大会を積極的に開催する一方、サウジアラビアでは2024年にeスポーツワールドカップの開催を目論んでいる。この動きがeスポーツ業界にもたらす意味とは。
W杯は既存eスポーツファン、五輪は新規層開拓。
それぞれに役割がある!
ゲームキャスター
岸 大河さん
2000年代に国際大会でも優勝経験のあるトップeスポーツ選手として活躍した後、14年にゲームキャスターへと転身。『VALORANT Champions Tour 2023: Masters Tokyo』など幅広いゲームタイトルでキャスターを務める。Protagon株式会社代表取締役。
岸さんのトレンド予測2024
W杯と五輪が両方成功すれば世界中を巻き込む一大ビジネスに!
ワールドカップとオリンピック、役割は違えど開催する意義はとても大きいです。これらが両輪となってうまく回っていけば、今まで以上に様々な企業や人間を巻き込むことができ、eスポーツの市場規模は加速度的に成長することでしょう。
ワールドカップ
サウジアラビアeスポーツ連盟(SEF)会長
ファイサル・ビン・バンダル・ビン・スルタン・アル・サウード王子
サウジアラビア×eスポーツ 3つのギモン
【Q1】なぜサウジアラビアがeスポーツ事業に力を入れるの?
【A】石油依存脱却を目指す国家戦略が背景に
サウジアラビアが2016年に発表した国家の長期的戦略「サウジビジョン2030」では、石油産業中心の構造を脱却し、多角的な産業体制を構築することを掲げている。eスポーツもそのひとつで、2022年に発表した「国家ゲーム・eスポーツ戦略」では、同国をeスポーツの最も有力な拠点にすることなど、産業全体で4つのKPIを設定している。
【Q2】どんな種目が採用されるの?
【A】不明だが人気タイトルが多そう
『Gamers8 2023』では、『ストリートファイター6』『Dota 2』『VALORANT』など新旧問わず人気タイトルが幅広く採用された。W杯でも同様の傾向が予想される。
【Q3】そもそもワールドカップと呼べるの?
【A】規模感は間違いなく世界最大!
サッカーやラグビーのようにゲームタイトルごとにW杯の名を冠した大会はあるが、ジャンルレスの大会は定着していない。実現すれば間違いなく世界最大規模になるだろう。
オリンピック
オリンピック×eスポーツ 3つのギモン
【Q1】IOCはeスポーツをどう捉えているの?
【A】「バーチャルスポーツ」と「ビデオゲーム」で区別している!
IOCのロードマップ「オリンピック・アジェンダ2020+5」では、ゲームをバーチャルスポーツとビデオゲームの2種類で分類している。前者は文字通り仮想スポーツと捉えており、身体運動の有無を問わない。一方、後者はそれ以外の競争型ゲーム(『リーグ・オブ・レジェンド』など)やカジュアルゲーム(『スーパーマリオ』シリーズなど)を含む。
【Q2】今後「オリンピック」にeスポーツが正式採用されるの?
【A】いずれ実現するかも?
2021年5〜6月に開催された『オリンピック・バーチャルシリーズ』は公式ライセンスイベントだったが、23年6月の『オリンピックeスポーツシリーズ』はIOCが主催する大会となった。大会ごとにeスポーツの存在感はより大きくなっており、遠くない将来、オリンピック本大会の競技種目として採用されるかもしれない。
【Q3】どんな種目が採用される?
【A】バーチャルスポーツを中心に採用
「オリンピックeスポーツシリーズ」では、各競技の国際競技連盟とパブリッシャーが連携したバーチャルスポーツタイトルについて、アーチェリーや野球など10種目が採用された。それ以外にも『ストリートファイター6』『ロケットリーグ』などがエキシビション試合として実施された。
オリンピックeスポーツウィーク 採用タイトル
エキシビション
ロケットリーグ、Eleven VR(卓球)
Zwift(トライアスロン)
ストリートファイター6
NBA2K23(バスケットボール)
『Fortnite』は、プレイヤー同士で撃ち合わず、特設コース上の的を撃つタイムアタック形式で行なわれた。
取材・文/桑元康平
取材・文/桑元康平