毎週のように打ち上がるようになったロケットは、もはや珍しいものではなくなりつつある。この流れは2024年も続くのか? ロケットの打ち上げの解説実況で人気のVTuber・宇推くりあさんに聞いた。
「火星衛星探査計画MMX」が
「はやぶさ2」に続けるよう、応援しましょう!
ロケット工学アイドルVTuber
宇推くりあさん
アイドルに憧れて惑星クラリスからやってきた宇宙人。Youtubeチャンネル「宇推くりあ -★Clear Rocket ch.★-」の登録者数は4.5万人超。内閣府「宇宙開発利用大賞」のPRキャラクターも勤める。ロケットの打ち上げの実況解説は専門家レベル。
くりあさんのトレンド予測2024
H3ロケット打ち上げ成功が未来を分ける
国内の観測衛星や偵察衛星などの打ち上げのほか、海外からの受注も期待されています。JAXAはH3ロケットの売りとして「柔軟性」「高信頼性」「低価格」を打ち出していますが、実現には「試験機2号機の打ち上げ成功」が必要不可欠。注目です!
海外の話題は目白押し、一方で日本は?
2023年は、新型ロケットの打ち上げが多く実施された。4月には、米国のRelativity Spaceによる機体を丸々3Dプリンターで製造したロケットの初打ち上げが話題に。「以前からあった計画が、ようやくロケットの形になって見えてきました」と宇推くりあさんは振り返る。
業界を激震させているのは、イーロン・マスク氏率いるSpaceXが開発する世界最大のロケット『スターシップ』だ。4月に初、11月に2回目の飛行試験が実施され、実用化に向けて前進した。
「私の勝手な妄想ですが、スターシップがあれば、いつかハッブル宇宙望遠鏡が退役したときに持って帰ってこられるかもしれませんね」(くりあさん)
将来的には、スターシップに乗って有人火星探査に向かう人も出てくるだろう。
国内では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のH3ロケット試験機2号機の年度内打ち上げを目指している。開発状況によっては、火星の衛星フォボスの試料を地上に持ち帰ることを目指す、JAXAの「火星衛星探査計画MMX」の探査機が24年にH3ロケットで打ち上げられる予定だ。
24年に打ち上がると、試料が地球に届くのは米国航空宇宙局(NASA)らが行なう火星の試料採取よりも早い2029年頃。小惑星探査機『はやぶさ』と『はやぶさ2』で培ったサンプルリターン技術を生かし、世界の宇宙探査を日本がリードできるチャンスとなる。
スターシップは、全長120m・直径9mの巨大ロケット。乗組員100人の搭乗が可能。月や火星への飛行も想定されている。国内ではスカパーJSATが衛星の打ち上げ契約を結んでいる。
すでに進行中、実現目前のものも!未来を変える「大注目の宇宙ニュース3選」
2023年以前に植えていた〝宇宙ビジネスの種〟が、2024年以降は続々と萌芽しそうだ。そこで今、注目のニュースを編集部でピックアップ! あなたも宇宙に近づける一年になるかもしれない。
News 1
日本初の月面着陸、有人月周回飛行ほか月面イベントが盛りだくさん!
24年1月頃には、H-IIAロケット47号機で打ち上げられた月面着陸機「SLIM」が月面着陸に挑み、世界初となる誤差100m以内の「ピンポイント着陸」に挑む。着陸の直前には、JAXAとタカラトミーらが開発した、変形型月面ロボット「SORA-Q」が放出され、月面を探査する。SORA-Qは玩具版が市販されていて、幅広い世代から人気を集めている。さらに、ispaceは2度目の月着陸船の打ち上げを最速で24年冬に行なう計画を発表している。海外では、アポロ計画以来の有人月面着陸を目指す「アルテミス計画」の第2弾「アルテミスⅡ」として、NASAとカナダ宇宙庁の宇宙飛行士4人が月周回飛行を行なう予定だ。
タカラトミーが9月に発売したSORA-Qの市販モデル。専用のアプリを使用して、SORA-Qの操縦や月面探査ミッション遊びなどが楽しめる。
News 2
宇宙に翔けるユニコーン企業誕生なるか?
宇宙スタートアップ日本政府が388億円支援
岸田内閣が掲げた「スタートアップ育成5か年計画」を受けて、文部科学省と経済産業省による「中小企業イノベーション創出推進事業(SBIRフェーズ3)」の枠組みで、ispaceやロケット開発のインターステラテクノロジズ、SPACE WALKER、衛星を開発・運用するQPS研究所をはじめとする宇宙スタートアップ16社に総額最大388億円が交付されることが決まった。採択企業の中には、早速開発計画を加速させた企業も出てきている。
ホリエモンこと堀江貴文氏が創設したインターステラテクノロジズが2024年度の打ち上げを目指して開発中の小型ロケット「ZERO」のイメージ図。
News 3
気球に乗って高度30kmへ!宇宙の入り口旅行が登場
気球で成層圏と呼ばれる高度25〜30kmの大気層を遊覧する宇宙の入り口旅行が実現しそうだ。無重力は体験できないものの、宇宙旅行のような訓練は受けずに、丸みを帯びた地球を見られるのが特徴。北海道のスタートアップ・岩谷技研は搭乗希望者を募集、2024年7月以降の一般向けフライトを予定している。旅行代理店HISはアメリカのスタートアップと提携し、気球による成層圏遊覧旅行を販売しており、商業飛行が2024年後半に開始予定。
岩谷技研が遊覧飛行に使用する気密キャビン「T-10 EARTHER」の実機。約4時間で地上と成層圏を往復する。料金は一人2400万円だが、将来的には100万円台を目指す。
くりあさんも注目
「日本にもできない技術を実現しちゃってます……」
中国のロケット技術は何がすごいのか?
今、存在感が増しているのが中国の宇宙スタートアップだ。2023年7月にはLandspaceが世界に先駆けてメタン燃料を使用したロケットの打ち上げに成功。再使用型ロケットの開発に取り組むGalactic Energyや海上からの打ち上げを目指すOrienspaceなどのスタートアップが登場し、打ち上げ試験を進めている。くりあさんは「あなどってはいけませんよ!」と話した。
海上発射台に設置されたOrienspaceのロケット「Gravity-1」のイメージ図。洋上打ち上げは日本でも実証実験が行なわれている。
取材・文/井上榛香