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地域移行が加速!企業や専門学校によるサポートが進む中学校の部活動

2024.01.06

教師の働き方改革などを背景に、中学校の部活動の地域移行が進んでいる。教師に代わって地域の専門家が指導するなど地域展開が進む中、有名企業などが教育委員会や自治体と連携しながら、部活動を支援し始めている。

近畿日本ツーリストのほか、ヤマダホールディングス、服部栄養専門学校などがその代表だ。

近畿日本ツーリスト~オンライン部活で遠隔からの指導を実現

KNT-CTホールディングスのグループ企業、近畿日本ツーリストは、旅行会社として修学旅行などを通じて築いてきた学校との関係を元に、PTA業務アウトソーシングなど学校サポート事業も展開している。

本年度からは部活動の地域移行についてもサービス提供を開始し、「部活動サポートサービス」としてeスポーツ部やダンス部、バスケットボール部、バトミントン部などを「オンライン部活」として支援する。

サービス提供背景について、同社の教育旅行事業部 宮崎敏行氏は「これまでに築いてきた教育現場との関係性や、自治体や企業からの様々な受託業務等で培った事務局運営のノウハウ、スポーツや文化芸術分野での多様なパートナーシップなど、当社の強みや経験を活かし、社会問題となっている学校部活動の問題に貢献できるのではと考えました」と語る。

バスケットボール部でオンライン指導を受ける中学生たち

オンラインで部活動を行うことは、「公平さ」を実現できる点がポイントになる。

「本サービスは全国の生徒へ対し部活動を通じ、公平に体験価値を提供できます。今までの学校部活動は教員の長時間勤務の要因ともいわれていますが、当社のような民間企業が先生や学校に代わり事務局としてサポートすることにより、社会問題の解決にも貢献できます。当社のような旅行会社は今まで観光で地域に貢献をしてきましたが、新たな地域貢献が実現できることに大きな期待と責任を持って、取り組んで参りますます」(宮崎氏)

すでにいくつかのオンライン部活が実施されている。生徒からは「普段の部活と変わらない体験ができた」との感想が多いという。

導入した教育委員会からも喜ばれている。限られた部活動環境に課題を抱えていた学校に対し、生徒が複数の中から部活動を選択できる環境を提供できるというのはこれまでになかった。教育委員会としては今後、年度を重ねるごとに部活動のレパートリーを増やしていく考えだという。

遠隔地からオンライン指導を行う指導者たち

こうした事例が他地域へも伝播し、山間部や離島の教育委員会を中心に相談が増えているという。

また企業や団体からも、同社とつながることで部活動の提供を行いたいとの声かけも多いとのこと。同社の直接的な自治体・教育委員会とのつながりや、生徒と指導者をつなぐ事務局的な動きが強みとなっているようだ。

宮崎氏は最後に、「今後は当社が中心となり、部活動プラットフォームの輪を広げながら地域・社会に貢献していきたいと考えています」と結んだ。オンライン部活は地域を選ばない。全国展開できる点から、今後の広がりが期待できそうだ。

ヤマダホールディングス~「ブカツ」で運動部の地域移行をサポート

ヤマダ電機の親会社であるヤマダホールディングスは、公立中学校を中心とした運動部の地域移行をサポートする新事業「YAMADA の“ブカツへGO!”」を2023年8月よりスタートした。同HDの現役選手やOB・OGをはじめ、各地域の大学や実業団の選手が陸上全般の種目指導を務める。

同社で地域・社会貢献活動の企画運用を担う文化育成振興推進部の安部孝駿氏は、支援の経緯について「教員の働き方改革や休日部活動の在り方、子どもたちが将来にわたりスポーツ・文化活動に継続して親しむことができる機会の創出が社会課題とされている中、当社がこれまで行ってきたスポーツを通じた社会貢献活動で得た指導ノウハウを活かし、子どもたちがスポーツを通じて健全に成長する機会創出、スポーツ文化の発展に寄与したいと考えました」と語る。

2022年度は元オリンピック選手による講演会活動を12県、14校で実施。さらに陸上選手による陸上教室活動は15回開催し、総数4,110名の子どもたちと触れ合った。その経験とノウハウが活かされる形だ。

講演会活動の模様

陸上教室活動の模様

「ブカツ」では、スポーツリテラシーを高めるために、多様な競技の要素を取り入れた複合型トレーニングと栄養やケガ予防などの座学を実施する。勝利主義ではなく純粋にスポーツを楽しみ、これからの子どもたちのライフスタイルに個々人がスポーツを取り入れられるよう支援していくという。

将来性があるのは子どもたちばかりではない。指導に当たる現役選手やOB・OGにとってもメリットがある。

「引退後の競技者の活躍の場をロールモデルとして描いていきたいとも考えています」(安部氏)

今年8月に群馬吉岡町でブカツ支援事業のプレス発表会と自治体や企業への説明会を開催した際には、同社が参画する活動の事業モデルへ興味を持った自治体や企業から、今後の発展へ向けて意見交換をしていきたいとの意向の問い合わせが来たそうだ。

「今後も連携を深めていき、支援事業を実行することで全国的に本事業モデルの母体を全国へ広げていきたい」と安部氏は結んだ。中学生にとって、元オリンピック選手や現役選手の指導を受けられるというのは貴重な経験となりそうだ。

服部栄養専門学校~料理・スイーツマスター部で協力

調理師や栄養士を育てる学校法人服部学園 服部栄養専門学校は、渋谷区の部活動改革プロジェクトに協力し、渋谷区立中学校の生徒向けに料理・スイーツマスター部を展開している。

経営戦略室 広報課の熊谷眞人氏は、協力の背景について次のように語る。

「渋谷区では全国に先駆け、一般社団法人渋谷ユナイテッドが主導する中学校の部活動改革が進んでいます。改革を進める中で、中学生対象アンケートでも人気の高かった『料理』と『お菓子づくり』を学ぶ部活動を立ち上げるため、本校に協力の打診がありました。

これまで、料理やお菓子の部活動は、一つの中学校単位では部員を集めることがむずかしく、かつ、指導者および施設・設備が不足しているという課題を抱えていたと聞きます。地域合同の部活動とすることで、また、指導者と設備が整った本校で実施することで、このような課題が一挙に解決できると考えました」

すでに昨年と今年、同校で日本料理やお菓子を作る部活動が実施されている。

「料理やお菓子づくりに興味がある中学生のやる気を刺激するような、楽しく、学びになる実習にしています。最初は基本的な技術から始め、習熟度に合わせて徐々にむずかしい技術へと体系的な学びができるよう、実習内容にも工夫を凝らしています」(熊谷氏)

指導に当たるのはプロを養成する本校の専任教員だが、シェフやパティシエを目指す在校生もサポートとして参画しており、おかげで活気ある雰囲気が生まれているそうだ。

「二年目を迎えた今年は、継続部員が新入部員を教えるというシーンが数多く見られるようになりました。実習班を分ける際に、あえて継続と新規の部員を組ませたことで、狙い通りの効果が得られたのではと考えています」と熊谷氏。来年も部員たちの成長に期待できそうだ。

地域の部活移行は、自治体や企業、団体の連携やノウハウ、事務局運営などさまざまな要素で成り立っている。これまでになかった取り組みであることもあり、知恵をしぼって新しいことにチャレンジする大人の姿を見て、子どもたちも刺激を受けるだろう。今後もさらに協力者が増えることに期待したい。

文/石原亜香利

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