裁判所のジャッジ
裁判所
「妻からの離婚請求を認める」
夫
「ちょっと待ってください!妻が言ってることは全部ウソです!」
裁判所
「シャラップ!妻の言い分を信用します。離婚したいがための主張としては、『SEXの時に靴を履かせてくる』というのは通常の女性が想像することも出来ないカナリの異常な主張ですし(ウソをつくならもっとマシなウソをつくでしょうし)、法廷での妻の供述には迫真性が十分に認められるからです。
しかも旦那さん!新婚旅行の時に靴を2足持って行かせたことは、裁判所の尋問でアナタ認めてますわな。んなこんなで妻の言い分を信用します」
▼ 離婚請求はカンタンには認められない
―― 裁判長!離婚したいと思っても相手が拒めばカンタンには離婚できないって聞いたことがあるんですが。
裁判所
「おっしゃるとおりです。離婚請求が認められるのは以下のケースだけです」
民法 第七百七十条
夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
裁判所
「夫婦の性格の不一致、夫の親族との不和、経済生活上の不満程度では離婚請求は認められません。なぜなら、夫婦の今後の協力によって解決できる可能性のある事柄だからです」
――でも今回のケースは、婚姻を継続し難い重大な事由にあたると?
裁判所
「そのとおりです。殊に性交につき布団の上で原告(妻)に靴を履かせる行為は、性感の増進を目的として一般に行なわれるべき性的技巧等とは異なり、相当異様な性交方法であって、正常な性行為の範疇に属すると言うことは出来ない」
――これは夫婦の努力で解決しないですか?
裁判所
「うむ。絶望的な不調和だ。妻に当分の忍従を強いてみても、夫婦間に将来的和合に基づく円満な結婚生活を期待することは、まことに不可能であると言わざるを得ない。
これ以上、陰鬱と嫌悪に満ちた婚姻生活の継続を強いることは甚だ過酷であって是認することはできない。妻からの離婚請求を認める!」
判決文をなるべく忠実に再現しました。昭和35年当時の3名の裁判官はメチャクチャ怒ってます(3名とも男性)。
というわけで、妻は無事、アブノーマル旦那から逃げることができました。
さいごに
どの程度であればアブノーマルなのかは、その時代の常識や裁判官が有するSEXノーマル度によっても変わってくると思います。今後の判例の蓄積に期待して注視していきたいです( ←これは評論家が判例雑誌でよく使うワードです。よく分からん時に応用できます。なんか頭が良く見えるのです。TVのコメンテーターみたいなものです)。
令和では「靴を履かす」ってそんなにアブノーマルなのかな~。イヤな人がいれば離婚請求してみましょう!時代を超えた判例を作れるかもしれません。70年前の判例を再び。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな~」があれば下記URLからポストしてください。また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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