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富士通とKDDI総合研究所が既設光ファイバーを用いた大容量マルチバンド波長多重伝送に成功

2024.01.04

富士通とKDDI総合研究所は、NEDOが委託する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の一環で、既設光ファイバーを用いた大容量マルチバンド波長多重伝送技術の開発に成功したことを発表した。

現状の商用光伝送技術に比べて5.2倍の波長多重度での伝送が可能

IoTや人工知能(AI)、ビッグデータ解析などを活用した新たなサービス、アプリケーションが増加するなかで、情報処理の需要が急激に高まっている。

なかでもAI・ビッグデータ解析は、処理遅延を解消するために、現在のコアクラウドによる集中データ処理環境から、エッジデータセンターでの分散処理環境へシフトすると予想されており、大容量・低遅延の伝送が求められている。

また、2025年から2030年ごろのポスト5G時代では、フィジカル空間(現実空間)のデータを即時にサイバー空間(仮想空間)で蓄積・解析し、フィードバックする両空間の完全同期も期待されており、これを実現するためには、大量の情報があらゆる空間において遅延なく安全かつ確実に流通できる、高度なネットワークインフラの確立が必須だ。

こうした背景を踏まえ、NEDOはポスト5G情報通信システムの中核となる技術を開発することで、日本のポスト5G情報通信システムの開発・製造基盤強化を目指しており、この一環で、富士通およびKDDI総合研究所は、2020年10月から2023年10月まで、ポスト5G光ネットワークを高性能化する事業に取り組んできた。

従来の商用光ファイバー通信網では、光が光ファイバーの中心部のみを通るシングルモードファイバーを使用し、主にC帯(波長帯域:1530nm~1565nm)を光ネットワークの信号伝送帯域としてきた。

しかし、通信トラヒック量の増大に伴い、C帯だけでは伝送容量の不足が予測される。そこで、本事業では、ファイバー1本あたりの伝送容量を増やすために、利用する波長帯域をC帯からL帯(1565nm~1625nm)、S帯(1460nm~1530nm)、U帯(1625nm~1675nm)、O帯(1260nm~1360nm)へと増やし、マルチバンド化することを目指した。

↑開発した大容量マルチバンド波長多重伝送技術を適用したシステムのイメージ

そして、今回、NEDOおよび富士通、KDDI総合研究所は、既設光ファイバー通信網を用いた光通信の伝送容量を拡大する技術の開発に成功。

富士通は、マルチバンド伝送における伝送性能の劣化要因を考慮したシミュレーションモデルを構築し、マルチバンド波長多重システムの伝送設計を可能にした。

シミュレーションモデルには、商用光ファイバー特性の測定結果および一括波長変換器/マルチバンド増幅器の実験系検証により抽出した伝送パラメーターを反映することで、実機測定との誤差を1dB以内に抑える高精度シミュレーションを実現し、バンド帯間の相互作用や伝送性能の劣化を考慮した設計を可能にした。

また、KDDI総合研究所は、これまで高密度波長分割多重(DWDM)伝送で活用されることがなかったO帯で、従来のC帯の2倍の周波数帯域幅の活用を可能にした。

両者の技術を組み合わせ、既設の光ファイバーを用いて実際に伝送実験を行ない、O帯、S帯、C帯、L帯、U帯でのマルチバンド波長多重伝送(伝送距離45km)を実証し、従来のC帯のみの伝送と比べて波長多重度5.2倍の伝送が可能であることを示した。さらにシミュレーションでは、S帯、C帯、L帯、U帯でのマルチバンド波長多重伝送(伝送距離560km)を確認した。

↑既設ファイバー1本におけるO帯、S帯、C帯、L帯、U帯を同時伝送した場合の受信光スペクトル

同技術を導入した光ファイバー通信網では、C帯を用いた商用光伝送と比較して5.2倍の波長多重度での伝送が期待でき、既設の光ファイバー設備を利活用することにより、経済的かつ省力的に伝送容量を拡大できるとのこと。さらに拡張工事が難しい都市部や密集地でも容易に伝送容量を拡大でき、サービス開始までの時間短縮やコスト削減も期待できるとしている。

関連情報
https://global.fujitsu/ja-jp/
https://www.kddi-research.jp/

構成/立原尚子

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