iPhone 15が追い風にUSB-CポタDACが増殖中
スマホからイヤホン端子が消えて、注目されているのがUSB-C接続で使えるポータルブルDAC/アンプである。高性能DACを搭載して、低消費電力、4.4mmバランス接続対応のモデルが各社から登場してきた。「iPhone 15」からLightning端子がUSB-C端子に変更されたことで、接続端子問題もすっきりして、これからますます活性化するジャンルになるだろう。
特に注目のモデルがiBasso「DC-Elite」である。DACはESSでもAKMでもなく、ロームの電流出力型BD3430EKVをポータブルモデルで初採用。さらにデジタルボリュームによる音質劣化を避けるため、あえてバランス対応の4連式アナログボリュームを搭載している。さらなるこだりとしてボリュームは可変抵抗でなく固定抵抗切替型としているため、音量は24段階となり、変更時には音が切れるという操作性の悪さも発生。音量の最終調整はスマホまたはDAP側でおこなうことになる。その音は非常に解像度が高く、音の粒立ちがよく、音像定位もシャープでだ。Phoneで聴いているのに、DAPの「FiiO M15」よりもモニターよりのシビアな音になった。これなら本当にDAP不要と思えてきた。実勢価格約7万3260円と価格もインパクトのあるものになった。
コンパクトなサイズにマニアックなアッテネータを内蔵したiBasso「DC-Elite」
変換ケーブルでLightningのiPhoneにも接続できる
SHANLING「UA4」は「UA3」になかったディスプレイを搭載したモデル。DACはESS ES9069Qを使い、高出力のデュアルRT6863ヘッドホンアンプを搭載。3.5mmと4.4mmバランス接続に対応する。音の粒立ちは「DC-Elite」よりも抑えられなめらかでウォームな音色が楽しめた。価格は「UA3」よりも安くなりそうとのこと、ハイコスパが期待でそうだ。
ONIX「Mystic XP1」は「XP10」の後に登場したポータブルDAC/アンプのハイエンドモデルで、AK4499EX DACとAK4191 Modulatorを搭載。BluetoothはLDACとaptX HDの両方とAACに対応する。内蔵バッテリーで約10時間駆動、microSDカードに入ったハイレゾデータの再生もできる。3.5mmと6.3mm、さらに4.4mmバランス接続に対応、出力は外部電源を接続すれば、シングルエンドで最大5.1V/812mW(32Ω)、バランスで最大8.7V/2360mW(32Ω)を誇る。高解像度で鮮明な音、ポータブルを超えるパワフルなドライブ能力があり、音色はややドライに感じられた。
据え置き型と統一感のあるデザインで参考展示されたONIX「Mystic XP1」
試聴は「FiiO M15」のデジタル出力をUSB-C端子で接続しておこなった
スピーカー1個でサラウンド再生を追求
世界初のSnapdragon Sound対応ポータブルスピーカーとして登場したのが、シーイヤーの「pavé」(パヴェ)である。音楽を再生するとスピーカーのセンターではなく、左右に音が広がった音場感が得られる。その状態でボーカルはセンターに定位する。スピーカーを2個に増やすとさらに左右に音が広がり、音像は後方にも定位する。本機はQualcomm社製SoC Qualcomm S5 Gen 2を実装する最初のスピーカーであり、3DサラウンドにはDSPを使った独自技術を使っているが、エコーがかかったような不自然さはなく、リアルタイムで音が再生される。入力はデジタルとアナログに対応して、無線でも有線でも接続できる。また、複数のパヴェを使ってマルチチャンネルシステムの構築もできるためワイヤレスで5.1ch再生も可能かもしれないという。
GREENのクラウドファンディングサイトなどで販売中、価格は1個3万7500円でブラックも登場した
頭の後ろにもスピーカーを置いたデモでは音に包まれるサラウンド感が体験できる
Dekoni AudioでLayfic Toneに再会
今回は出展していないはずのLayfic ToneのモニターヘッドホンをDekoni Audioのブースで発見した。デコニオーディオはアメリカのニュージャージーでヘッドホンとイヤホン用の交換パッドとイヤーチップを作っているメーカーである。特にヘッドホン用パッドは耐久性のある高級レザー、音質を追求したベロア製、スエード製、ハイブリッドなど用途に応じてさまざまなシリーズが用意されている。さらにヘッドホンメーカーとのコラボしたヘッドホンも製品化している。
Layfic Toneは、同社のモニター用ヘッドホンにDekoni Audioの2種類のイヤーパッドを採用することを決定。急遽、1台を試聴用に借用したそうだ。また、Dekoni AudioとHIFIMANとコラボした密閉型ヘッドホン「DEKONI COBALT」が登場する。これを記念して初回生産1000台に多孔質素材のエリート・ベロアが追加付属する。本来、付属している本皮メッシュ・シープスキンのパッドと比較試聴してみた。ベロアは高域のヌケがよく、通気性がいいので装着感も快適だった。シープスキンは高級感があり、耐久性に優れるため使い込むと黒光りするとのこと。音質的はフラットで落ち着いた感じなった。
Dekoni Audioで、思いがけずLayfic Toneのヘッドホン展示に遭遇した
エリート・ベロアは通気性がよく、高域のヌケと音場感が広くなる
「DEKONI COBALT」はナノカーボンコーティングの振動板を使ったドライバー搭載の高解像度と快適性、軽量性にこだわったモデル
写真・文/ゴン川野