ゴン川野のPC Audio Lab「「ポタフェス2023冬 秋葉原」で気になる製品を聴いてみた」
今年を締めくくるアキバのポタフェス
毎年、恒例の「ポタフェス2023冬 秋葉原」がe☆イヤホンの主催により、ベルサール秋葉原で12月9日、10日に開催された。140ブランド以上が集結したポータブルオーディオの祭典は今年を締めくくるのに相応しく初日から大盛況だった。今回、試聴できた新製品を中心に紹介していこう。
60万円超の国産ハイエンド「ATH-AWKG」
オーディオテクニカが発売した超弩級ヘッドホンアンプ「鳴神 NARUKAMI」にセットされたヘッドホンがアンプと同じ黒柿を使った「AW-KGNARU」である。これを一般向けに仕様変更したモデルが「ATH-AWKG」なのだ。価格は60万5000円で、すでにオンラインストア先行販売分終了で次回分は未定の幻のモデルである。1万本に1本しかないと言われる貴重な黒柿をハウジングに採用。天然素材なので同じ模様は1つとしてないのも特徴だ。虫食いやひびができないように何年間も寝かせる必要があり、固く割れやすいため加工も難しいとなかなかやっかいな木材である。日本では古くから希少価値があると認められ加工品が正倉院にも収蔵されている。
気になる音はXLRバランス接続で再生するため同社のDACとヘッドホンアンプを使用して再生。四方に広がる音場から、幽玄を感じさせる繊細な高域が響きわたる。その音場感と繊細な音をマスクしないように中低域はタイトで控えめに感じられる。次回は、さらにグレードの高いシステムで聴いてみたいと思った。音を出さなくてもこれだけ存在感のあるヘッドホンはなかなかないだろう。
木の内部に黒い紋様が現れる黒柿現象の発生のメカニズムは未だ謎に包まれている。ハウジングは職人の手により加工、漆仕上げで塗装されている
この黒の入り方はイマイチに思えるが、天然素材なので選り好みはできない
試聴には同社の真空管ハイブリッド、バランス対応ヘッドホンアンプ「AT-BHA100」にDACの「AT-DAC100」を接続して「FiiO M15」のデジタル出力からハイレゾ音源を再生した
5年目に登場した第2世代、Meze Audio「Empyrean II」
独創的な設計の平面振動板を開発して、高域の再生周波数帯域を110kHzまで伸ばしたEmpyreanは、金属パーツを多用したデザインでも人々を魅了した。あれから5年、ついに「Empyrean II」が登場した。マットブラックに塗装されたアルミフレームとハウジングのグリルのデザインが新しい。外観の変更は地味だが、音はかなり変化していた。Empyrean IIの方が解像度重視のフラット志向で音像定位がシャープで音場が広い。これに対してEmpyreanは響きが華やかで魅力的な音色に感じられる。パッと聴くと前作のほうがMezeらしい印象だ。2種類付属するイヤーパッドの1種類は新規に設計されたものだ。発売時期、価格は未定。
全身マットブラックでグリルの模様が変更されたMeze Audio「Empyrean II」
「Empyrean」の方が華やかな印象を受けるデザインである
U10万円で買える平面磁界型AUDEZE「MM‐100」
となりにあった参考展示の平面磁界型でオープン式のAUDEZE「MM‐100」も試聴できた。アルミハウジングで重量475g。実勢価格約30万円の「MM‐500」の弟モデルにあたり、予想実勢価格約8万円のハイコスパで同社の平面磁界型ヘッドホンが手に入るのだ。平面磁界型ならではの音像定位の良さと音場感が実感できた。情報量やレンジ感はMM‐500にアドバンテージがあり価格差を考えると悩ましいところだ。
AUDEZE「MM‐100」は上級機と並べても見劣りしないデザインと仕上げで完成度の高い製品だった
堅実に進化したSHANLING「ME100」
中華ブランドで定評のあるSHANLINGからは「ME80」の上級モデルである「ME100」が登場。セラミックダイヤフラムを使ったφ10mmのダイナミックドライバーを搭載。中低域に厚みがあって高域は粒立ちのいい音だった。
SHANLING「ME100」はMMCX端子でリケーブル対応。4.4mmバランスケーブルで試聴した
AVIOTのフラッグシップ完全ワイヤレスを聴いた
AVIOTには3種類5基のドライバーシステムを採用した完全ワイヤレス「TE-ZX1」の試聴に長蛇の列が! その音は平面磁気駆動型×1、BA型×3、ダイナミック型×1のマルチドライバーによるワイドレンジで音像定位のシャープな音だった。特に最低域まで伸びる低音とエッジの効いた高音が特徴的だった。ANCの効果も抜群で、発売予定2024年1月を控えて文句のない仕上がりだ。
AVIOT「TE-ZX1」はLDAC接続で「FiiO M15」を使って再生した
こちらの黒い方が凛として時雨のドラムス、ピエール中野氏とのコラボモデル「TE-ZX1‐PNK」
SONYよりゲーミング専用低遅延「INZONE Buds」
「INZONE Buds」は低遅延を最優先して接続方法はLE Audioのみというワイヤレスイヤホンである。これだとLE Audio対応スマホにしか接続できなのでUSBドングルが付属する。手持ちの機器のUSB-C端子に接続すると2.4GHzの独自形式でワイヤレス接続が可能になり、遅延速度もLE Audioよりも短い約30ms未満になる。つまり「iPhone 15」にも使える。ANCを使いながら連続使用時間は最大11時間を実現した。タイトな低音で細かい音まで聞こえ音場は広く、さすがゲーミング専用と思わせる音作りだった。
オーディオ用とは一線を画したデザインが斬新な「INZONE Buds」
専用ドングルを使ったワイヤレス接続で低遅延と長時間連続使用を両立