「ペットを売らない」決断をした日本のペットショップも
ホームセンターやショッピングモールに足を運ぶと、子犬や子猫が店頭で抱っこできたり、その場で購入できるペットショップが日本では一般的なのだとひしひしと感じます。
実際に、ペット保険を手掛けるSBIプリズム少額短期保険株式会社の調査によると、ペットを飼っている人の46.3%がペットショップから迎えているといいます(※)。
※参考:【ペット調査2022】ペットとのライフスタイルに関する調査を実施|SBIプリズム少額短期保険株式会社
そのなかで、革新的ともいえる取り組みをしているペットショップがあります。
家具・インテリアの大手「島忠ホームズ」では、2020年より与野店、浦和南店の2店舗でのペット陳列販売を廃止しました。関東を中心に20店舗以上の島忠ホームズで保護犬・保護猫の譲渡会イベントが定期的に行われているなど、保護動物活動の取り組みに積極的に参入しています。
沖縄県に3店舗を構え、県内最大手として知られるペットショップ「PETBOX(ペットボックス)」では2019年から犬や猫の生体販売をやめました。代わりに譲渡会イベントが定期開催され、保護犬や保護猫と新しい家族を繋ぐ手助けをしています。他にもレジで買い物の際に20円募金できるシステムや、売り上げの一部が動物愛護活動に使われる自販機の設置など、動物愛護団体を支援するチャリティー活動を精力的に行っています。
まだまだ数は多くありませんが、店頭で犬や猫を販売しないペットショップとして方向転換し、成功している例もあるのです。
犬や猫を売らないペットショップがスタンダードな国に…
海外と日本のペットショップの違いや、日本のペットショップの現状を紹介しました。
店頭で生体を陳列販売するシステムには全く賛同しませんが、個人的にはペットショップそのものが無くなればいいわけではないと思っています。ペットの日用品や消耗品の買い出しや、トリミングやシャンプーの相談、しつけ教室など、ペットとの生活にはそれを支えてくれる専門家や専門店が必要だと考えているためです。
もちろん、ペットショップから大切な家族としてお迎えされて、幸せな暮らしを送っている犬や猫は今もたくさんいます。でもそのきっかけである出会いの場は、店頭の小さなショーケースじゃなくても良いはずです。例えば店頭にはモニターだけ設置してオンラインで面談したり、信頼に足るブリーダーさんを仲介するサービスをしたり、譲渡会の定期開催だって出会いの場になります。
「この子だ」と運命を感じるほどの子なら、きっとどこかで何かのカタチで出会うべくして出会えるのではないでしょうか。ブリーダーさんと自分で連絡を取り合ったり、迎えるために住環境を整えるのが苦になるようなら、そもそも動物との暮らしは難しいだろうとも思います。個人としての意見ですが、店頭での犬や猫の陳列販売は、手に入れやすく衝動買いを促進できる以外のメリットはないと考えています。
海外諸国に比べて動物福祉の取り組みが遅れているといわれる日本でも、「ペットを売らないペットショップ」を実現している企業はあります。保護猫や保護犬をお迎えするだけでなく、そういったペットショップを選んで利用することも、ペット業界から生体販売を無くすことに繋がる一歩になるはずです。
もし犬や猫などの動物が好きなら、ぜひペット業界の現状に違和感を覚えてください。身近すぎて当たり前になってしまったペットを取り巻く環境について、ちょっとだけ意識して見方を変えてみてはいかがでしょうか。
文/黒岩ヨシコ
編集/inox.