2024年1月より、ペット大国として有名なフランスのペットショップで犬や猫の店頭販売が禁止されます。
こんな話を聞いたことはありませんか?「犬や猫をショーウィンドウに並べて販売しているなんて、日本くらいだ」と。日本でも2019年に動物愛護法の改正が発表されましたが、ペットショップやホームセンターのケージで犬や猫が売られているのは今もまだよく見る光景です。
というわけで今回は、ペットショップや動物愛護への取り組み方について、日本と海外諸国の違いを紹介します。
犬や猫を店頭で売るのは日本だけ?
「犬や猫を店頭で売るのは世界でも日本だけ」というのは誤りですが、フランスのようにペットショップでの生体販売を禁止する国が増えているのは本当です。
実際に動物福祉が進んでいるヨーロッパの国などからすると「日本の動物愛護の取り組みは100年程度遅れている」という意見もあるのだとか。
■ ペット大国フランスの意外なペット事情
フランスでは2021年に動物愛護法が改正され、ペットショップでの犬や猫の販売や、一般の人がネットを通じて犬や猫を販売することが禁止されました。新たに犬や猫を飼いたい人は正規のブリーダーから購入するか、保護団体などから譲り受ける必要があります。
「ペット大国」と呼ばれるフランスは、もともと全世帯の約半数が犬や猫などを飼っているほどの国。フランスと聞いて、おしゃれな愛犬を連れてパリの街中を颯爽と歩いているようなシーンが思い浮かぶ人も少なくないかもしれません。
そんなイメージを持たれる反面、実はフランスは「欧州一、ペットを捨てる国」として知られています。バカンス期間である5月~8月には例年ペットを捨てる行為が集中して起こり、年間約10万頭のペットが遺棄される問題を抱える国でもあったということ。
このたびの法改正ではまずペットの衝動買いを抑制することを目的に、勝手な都合で簡単に手放される現状を打破する狙いがあるといいます。
犬や猫以外の生き物については店頭で売ることができますが、人目につきやすい通りに向けたレイアウトが禁止されたりと、一過性の衝動買いを促すような販売方法が見直されています。他にも誓約書にサインしてから正式な飼い主になるまで7日間は解約可能期間が設けられるなど、衝動買いの後に捨てられてしまうペット遺棄防止の策がとられています。
■ ヨーロッパのペットショップの多くは犬や猫を売っていない
では、フランス以外の海外ではどうでしょうか?
ヨーロッパや欧米諸国など動物福祉先進国の場合、ほとんどのペットショップでは犬や猫が店頭に並んでいることはありません。それらの国の人にとって、ペットショップは犬や猫を買う場所ではないのです。
【ペットショップでの生体販売を禁止・抑制している主な国や地域】
● イギリス
● スウェーデン
● ドイツ
● アメリカ(カリフォルニア州・メリーランド州・イリノイ州・ニューヨーク州など※)
● イタリア
● フィンランド
● ポーランド
● オーストラリア
● ニュージーランド
※州によって法律が異なる
ペットショップでの店頭販売禁止は犬や猫に限る国もあれば、うさぎや小動物まで広く対象としている国もあります。
特にドイツは古くから動物愛護の精神が広く根付いた国で、法律で生体販売が禁止されていないのに関わらず、犬や猫を売っているペットショップはほぼないのだそう。犬や猫の販売・飼育条件が非常に厳しい(運営が成り立たない)のも理由の1つですが、そもそも「ティアハイム」と呼ばれる動物保護施設の機能が充実しているため、犬や猫を飼いたい場合は優良なブリーダーかティアハイムへ連絡をとるのが昔からドイツではスタンダードなのだとか。
では、そういった国のペットショップは何を売って商売をしているのかというと、犬や猫のフードやおもちゃ、ベッド、ハウスなどのグッズです。ペットショップのスペースを使って犬や猫の譲渡会を定期開催しているお店もあります。
基本的に動物福祉が進んでいる国はペットを飼っている家庭も多いので、関連グッズを販売したりケアサービスを行うことで儲けが出るということ。
日本では「店頭で生体販売をしないとペット業界が成り立たない」という理屈をときどき耳にしますが、生体販売をせずともペットショップが成り立っている国は少なくないのです。