3. 改正ポイント(2)|相続時精算課税制度に関する基礎控除の新設
生前贈与に対しては年ごとに贈与税が課されるのが原則ですが(=暦年課税)、60歳以上の直系尊属(父母・祖父母など)から18歳以上の者が受ける生前贈与については「相続時精算課税」を選択できます。
相続時精算課税の適用を受ける贈与財産は、贈与税の課税が免除または軽減される一方で、相続税の課税対象となります。
暦年課税の場合、年間110万円の基礎控除が設けられており、節税対策に幅広く活用されてきました。
これに対して相続時精算課税には、2023年以前は基礎控除額が設けられていませんでした。今回の税制改正により、2024年以降は、相続時精算課税にも新たに年間110万円の基礎控除額が設けられました。
4. 改正ポイント(3)|災害に伴う相続時精算課税の価額の見直し
相続時精算課税の適用を受ける贈与財産については、贈与当時の価額に対して相続税が課されるのが原則です。
しかし、相続時精算課税によって不動産の贈与を受けた後、その不動産が災害によって滅失してしまうようなケースも想定されます。このような場合に、財産価値を失ったにもかかわらず相続税は通常どおり課されるとすれば酷です。
そこで2024年以降は、相続時精算課税が適用される贈与により取得した不動産について、その後に災害による被害を受けた場合には、相続税の課税に際して被害相当額を控除できることになりました。
5. まとめ
令和5年税制改正による贈与税・相続税に関する変更は、主に相続税対策に対して大きな影響を与え得るものです。
終活の一環として相続税対策を検討している方は、税理士などのアドバイスを受けながら、最新の税制を踏まえた対策・方法を検討しましょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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