海賊版コンテンツへのリンクを貼るなどしてPV数を稼ぎ、広告収入を得る「リーチサイト」や「リーチアプリ」の提供は、著作権法によって禁止されています。
本記事ではリーチサイト・リーチアプリについて、著作権法による規制内容をまとめました。
1. リーチサイト・リーチアプリとは
「リーチサイト」「リーチアプリ」とは、著作権を侵害するコンテンツへのリンク情報を掲載したウェブサイトまたはアプリのうち、公衆を侵害コンテンツへ殊更に誘導するもの、または主として公衆による侵害コンテンツの利用のために用いられるものです。
「リーチ(leech)」は動物のヒルのことで、転じて人や財産を食い物にするという意味があります。
リーチサイト・リーチアプリは、海賊版コンテンツに対するユーザーのアクセスを容易にするため、著作権侵害を助長するものとして問題視されています。
2. リーチサイト・リーチアプリの提供は著作権法違反
特に2010年代後半において、「漫画村」などのリーチサイト・リーチアプリの利用が急速に広まり、海賊版コンテンツによる著作権者の被害が拡大しました。こうした状況を受けて、2020年10月1日に施行された改正著作権法により、リーチサイト・リーチアプリの提供が著作権等のみなし侵害行為と位置付けられました(著作権法113条2項)。
リンクが貼られているコンテンツが海賊版であることを知り、または知ることができたにもかかわらずリーチサイト・リーチアプリを提供する行為は、著作権法違反に当たります。
3. リーチサイト・リーチアプリを提供した事業者が受けるペナルティ
リーチサイト・リーチアプリを提供した事業者は、以下のペナルティを受ける可能性があります。
(1)差止請求・損害賠償請求
(2)刑事罰
3-1. 差止請求・損害賠償請求
リーチサイト・リーチアプリによって実際に被害を受け、または被害を受けるおそれがある著作権者等は、提供事業者に対して差止請求を行うことができます(著作権法112条)。
差止請求を受けた事業者は、リーチサイト・リーチアプリの提供を停止しなければなりません。また、提供に用いていた機械や器具の廃棄などを求められることもあります。
さらに、リーチサイト・リーチアプリによって被った損害については、提供事業者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求できます(民法709条)。
過去にはリーチサイトの運営者に対して、出版社が損害賠償請求訴訟を提起し、約1億6000万円の損害賠償が認められた事例があります(リーチサイト・リーチアプリに関する改正法が施行される前の事案)。
参考:リーチサイト元運営者らに賠償命令 講談社勝訴|日本経済新聞
3-2. 刑事罰
リーチサイトを公衆に掲示し、またはリーチアプリを公衆に提供・提示した者に対しては「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金」が科され、またはこれらが併科されます(著作権法119条2項4号、5号)。
前述の損害賠償が認められたリーチサイトの元運営者3名に対しては、それぞれ懲役3年6か月、3年、2年4か月の実刑判決が確定しています(リーチサイト・リーチアプリに関する改正法が施行される前の事案)。
4. まとめ
リーチサイト・リーチアプリは、運営者の摘発や著作権法改正によってひとまずは下火になりました。しかし改正法の施行以降も、後発のサイトやアプリが立ち上げられている状況です。
リーチサイト・リーチアプリが収益を上げているのは、閲覧するユーザーがいるからです。各ユーザーには、海賊版へのアクセスを求めてリーチサイト・リーチアプリを利用しないモラルが求められています。
なお、リーチサイトやリーチアプリを通じて海賊版コンテンツをダウンロードする行為は犯罪なので、十分ご注意ください。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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