
「申し訳ございません」と「申し訳ありません」はどう違う?ニュアンスや用法の違いを解説。ビジネスシーンで頻出する単語なので是非チェックしてほしい。
目次
「申し訳ございません」は目上の相手にも使える正しい敬語表現なのか、迷った経験はありませんか。
謝罪の際、「申し訳ございません」を使うシチュエーションは多々あります。したがって、円滑にビジネスを進める上で使い方をおさえておくことは重要です。
クッション言葉としての使い方や、似た表現である「申し訳ありません」とのニュアンスの違いについてもご紹介します。
「申し訳ございません」は正しい敬語表現!意味は?
「申し訳ございません」は、正しい敬語表現です。元となる「申し訳ない」とは、「言い訳のしようがない」「弁解の余地がない」などの意味で、相手に対して詫びる時に使う言葉です。相手に無理な頼みをした時にも、悪かったという意味を込めて使うこともあります。
「申し訳ございません」は「申し訳ない」を丁寧にした表現で、目上の方と話す時やビジネスシーンで使われます。また、書き言葉としても使えるため、ビジネスメールにもふさわしい表現です。
参考:デジタル大辞泉
■「申し訳ございません」は文法的に間違っているのか
「申し訳ない」はそもそも一語です。そのため、「ない」の部分だけを「ございません」に変えて丁寧にするのは、文法的に間違っているとされることがあります。
しかし、「申し訳」は名詞としても使われるため、「申し訳ない」は「申し訳」と「ない」を組み合わせた二語から成り立っていると解釈することも可能です。「ない」の部分だけを「ございません」や「ありません」に変えて丁寧にしても、一概に間違いとはいえません。
■「申し訳ありません」との違いは?
「申し訳ございません」と「申し訳ありません」は、いずれも「申し訳ない」を丁寧にした表現で、とくに違いはありません。相手に対して詫びる時や、無理な依頼をして悪かったと感じた時に、「申し訳ございません」や「申し訳ありません」を使います。
ただし、「ありません」よりも「ございません」のほうが丁寧な印象があると考えられています。目上の方やビジネスの相手に対しては、「申し訳ありません」ではなく、丁寧な印象のある「申し訳ございません」を使うほうが無難でしょう。
■普段からよく話す間柄では不適切な表現
丁寧すぎる言葉は、時と場合によっては、まわりくどく他人行儀な印象を与えます。家族や同僚などの普段からよく話す間柄において使うのは、不適切だと考えられるでしょう。
また、目上の方であっても、よく話す間柄で使うのは不適切といえます。たとえば、ほぼ毎日話す上司に対して、「申し訳ございません」と謝るのは他人行儀な印象です。とはいえ、「ごめんなさい」はカジュアルすぎる表現になってしまうため、「申し訳ありません」や「失礼しました」程度が適切かもしれません。相手によって表現を選ぶといいでしょう。
■ビジネスシーンでの謝罪時に使える例文
ビジネスシーンでは、適切な謝罪をすることで信頼関係を維持し、誠意を伝えることができます。謝罪の際は、状況に応じて言葉を選び、具体的な事実や対策を添えることがポイントです。
たとえば、単なる謝罪だけでなく、「どのようにして問題を解決するか」や「今後の対策」を簡潔に述べることで、相手に安心感を与えることができます。また、メールや手紙で謝罪する場合は、敬語を正しく使い、読みやすい構成を心掛けることが大切です。以下の例文のように使用すると良いでしょう。
- このたびは手配の不備があり、申し訳ございません。深くお詫び申し上げます。
- お手数をおかけして申し訳ございません。今後はこのようなことがないよう徹底いたします。
- 急な時間変更となり、申し訳ございません。ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
■「申し訳ございません」の類語
「申し訳ございません」にはさまざまな類語があり、場面や相手の立場に応じて使い分けることが重要です。これにより、単なる謝罪以上に、相手への配慮や敬意を伝えることができます。たとえば、軽いミスやちょっとした遅れの場合には「失礼いたしました」や「申し訳ありませんでした」を使用すると適切です。
一方で、深刻な問題や重大なミスに対しては、「お詫び申し上げます」や「心よりお詫び申し上げます」といったより重い謝意を込めた表現を選びます。具体的な状況に合わせたフレーズを準備しておくことで、どんな場面にも迅速に対応できるでしょう。
■「申し訳ございません」の英語表現
英語で謝罪をする際には、文化や場面に適した表現を使うことが求められます。特にビジネスの場では、適切な丁寧さを示すフレーズを選ぶことが重要です。
日常会話では「I’m sorry」や「I apologize」がシンプルで一般的ですが、ビジネスメールや公式な場面では「I sincerely apologize」や「I deeply regret」など、より丁寧な表現を使うことでプロフェッショナルな印象を与えられます。また、謝罪の理由を明確に述べることで、相手が状況を理解しやすくなります。以下に例文を示します。
- 「I apologize for the inconvenience」(ご迷惑をおかけしました)
- 「I am sorry for the mistake」(ミスをお詫びします)
- 「Please accept my sincerest apologies」(心からのお詫びをお受け取りください)
「申し訳ございませんでした」も正しい敬語表現
「ございません」の過去形である「ございませんでした」を使った「申し訳ございませんでした」も正しい敬語表現です。ただし、過去形のため、相手に対して詫びる出来事が過去に起こった時に使う必要があります。
■「申し訳ございませんでした」の例文
「申し訳ございませんでした」は、次のように使うと良いでしょう。
・遅れてしまい、申し訳ございませんでした。
・この度はたいへんご迷惑をおかけしました。申し訳ございませんでした。
遅れた事実、迷惑をかけた事実が過去に起こった時に使えます。反対に現在進行形で相手に詫びる出来事が起こっている時は、「申し訳ございませんでした」は使えません。
たとえば、次のケースでは「申し訳ございませんでした」ではなく「申し訳ございません」が適切です。
・電車が遅延しているが、まだ解消されていない時点で乗客に謝る時
・トラブルにより迷惑をかけているが、まだ問題が解決していない時点で相手に詫びる時
クッション言葉「申し訳ございませんが」の使い方
用件をそのまま伝えるよりも、先に「申し訳ございませんが」のフレーズを話すことで、印象が柔らかになります。
たとえば、資料室に入る必要がある時に、普段あまり話したことがない役員が2人、入口の前でおしゃべりをしていたとしましょう。「そこをどいてください」と用件だけを伝えるのでは、少々ぶしつけな印象になってしまうかもしれません。
そのような時は、クッション言葉「申し訳ございませんが」を使います。「申し訳ございませんが、そこをどいていただけませんか?」と伝えるなら、失礼な印象にはなりにくいでしょう。
印象を和らげるためのクッション言葉は、「申し訳ございませんが」以外にも、次の表現があります。
・すみませんが
・恐れ入りますが
・お手数をおかけしますが
・ご迷惑をおかけしますが
それぞれの使い方について、例文を通してご紹介します。
言い換え表現1.すみませんが
「すみません」は「すまない(済まない)」の丁寧語で、相手に謝罪や依頼、感謝を伝える時に使います。次のように、文頭に「すみませんが」をつけることで表現を和らげましょう。
・すみませんが、もう一度、おっしゃってくださいますか?
・すみませんが、そのボールペンを拾っていただけますか?
参考:デジタル大辞泉
言い換え表現2.恐れ入りますが
「恐れ入ります」は「恐れ入る」の丁寧な表現です。なお、「恐れ入る」とは、相手の好意や親切に対して有難いと思うこと、あるいは、相手に迷惑をかけたり失礼なことをしたりしたことを申し訳なく思うことを意味する言葉です。しかし、「恐れ入りますが」の形になると、相手に依頼する時の丁寧なあいさつ言葉として使われます。
・恐れ入りますが、本日中にご返却いただけないでしょうか。
・恐れ入りますが、担当の者にお尋ねくださいませ。
参考:デジタル大辞泉
言い換え表現3.お手数をおかけしますが
「手数(てすう)」とは、他人のためにかける手間のことです。相手に手間をかけてしまう時は、「お手数をおかけしますが」と一言添えて、申し訳ない気持ちを表現できます。
・お手間をおかけしますが、今週中にお返事をください。
・お手間をおかけしますが、営業時間内に再度お電話いただけませんでしょうか。
参考:デジタル大辞泉
言い換え表現4.ご迷惑をおかけしますが
「迷惑」とは、ある行為により他の人が不利益を受けたり不快を感じたりすることです。相手に迷惑をかけてしまう時は、「ご迷惑をおかけしますが」と一言添えましょう。
・ご迷惑をおかけしますが、今しばらくお待ちください。
・ご迷惑をおかけしますが、自動改札が復旧するまでは有人改札をご利用ください。
参考:デジタル大辞泉
正しい状況で「申し訳ございません」を使おう
「申し訳ございません」のフレーズ自体は文法的に誤りではありませんが、時と場合によっては不適切な表現になることがあります。たとえば、親しい間柄に使うと、他人行儀な印象になり、かえって相手を不快な気持ちにさせるかもしれません。相手との関係性を考えた上で、正しい状況で使うようにしてください。
文/編集部