肥満症治療薬のチルゼパチド、投与中止でリバウンド?
肥満症治療薬のチルゼパチド〔商品名Zepbound(ゼップバウンド)〕を使って減量した人は、同薬の服用をやめると1年以内に体重がリバウンドする可能性のあることが、第3相試験で明らかになった。
米ワイルコーネル医科大学内分泌・糖尿病・代謝分野教授のLouis Aronne氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に2023年12月11日掲載された。
イーライリリー社が開発した糖尿病治療薬であるGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)/GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬のチルゼパチドは、11月8日に米食品医薬品局(FDA)によって肥満症治療薬として承認された。
同薬は、別の肥満症治療薬であるウゴービ(一般名セマグルチド)の強力なライバルと目されている。ウゴービとチルゼパチドは、インスリン分泌を促し、食欲を抑制し、胃内容物の排出を遅らせる作用を持つ点では同じだが、前者がGLP-1受容体のみを標的とするのに対し、後者はGIPとGLP-1の2つの受容体を標的とする。
この違いは減量効果の大きさにつながると考えられ、実際、ウゴービでの減量効果が15%程度とされているのに対し、高用量のチルゼパチドによる減量効果は最大で20.9%に達したことが報告されている。
今回報告された第3相試験(SURMOUNT-4)では、チルゼパチドによる減量維持効果が、プラセボとの比較で検討された。
まず、アルゼンチン、ブラジル、台湾、米国の70施設で登録された783人に、チルゼパチドを週に1回、36週間にわたって皮下投与する先行試験を行った。
次に、この先行試験で最大耐量(10mgまたは15mg)を達成した670人(平均年齢48歳、平均体重107.3kg、女性71%)を、それ以降、88週目まで引き続きチルゼパチドによる治療を続ける群(335人)とプラセボを投与する群(335人)にランダムに割り付けた。
主要評価項目は、試験開始後36週目から88週目の間の体重の平均変化率、副次評価項目は、88週目の時点で先行試験での減量分の80%以上を維持していた人の割合であった。
ランダム化の対象とされた670人は、先行試験で体重が平均20.9%減少していた。試験開始後36週目から88週目までの間の体重の平均変化率は、チルゼパチド群で−5.5%、プラセボ群で14%(差−19.4%、95%信頼区間−21.2〜−17.7%、P<0.001)であった。
また、試験開始から88週目でも先行試験での減量分の80%以上を維持していた対象者の割合は、チルゼパチド群で89.5%に達したのに対し、プラセボ群では16.6%に過ぎなかった。
試験開始から88週目までの間の平均体重減少率は、チルゼパチド群で25.3%、プラセボ群で9.9%であった。試験期間中に生じた有害事象のほとんどは軽度から中等度の消化器症状で、チルゼパチド群でより多く認められた。
以上のように、本試験では、チルゼパチドの投与を継続した場合には体重が維持されるのに対して、投与を中止した場合には体重が増加しやすいことが確認されたものの、Aronne氏らは、この現象はチルゼパチドに限ったことではないと指摘。
ウゴービなどの肥満症治療薬としての効果に焦点を当てた他の少なくとも4つの試験でも、薬の投与中止後に同様のリバウンドが認められたことが報告されていると説明している。
研究グループは、これらのデータを総合して、「肥満症は2型糖尿病や高血圧と同様の慢性代謝疾患であり、ほとんどの患者において長期間の治療が必要だ」と結論付けている。(HealthDay News 2023年12月11日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2812936
構成/DIME編集部