三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、同社チーフマーケットストラテジストの市川雅浩氏がその時々の市場動向を解説する「市川レポート」の最新版として、「2024年の米国経済見通し」と題したマーケットレポートを公開した。レポートの詳細は以下の通り。
利上げの累積効果がこの先一段と顕在化する可能性が高く米景気は緩やかな減速が続く見通し
米連邦準備制度理事会(FRB)は2022年3月にゼロ金利を解除し、利上げを開始して以降、2023年7月まで11回の利上げを行い、利上げ幅は累計525ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)に達した。
このような大幅な金融引き締めにより、足元で米国のインフレは鈍化傾向にあるが、労働市場は依然として底堅く、非農業部門雇用者数は毎月、前月比で20万人程度の増加基調を維持している。
安定した雇用情勢と所得環境が消費を支え、2023年7-9月期の個人消費は前期比年率+3.6%となり、10-12月期も+2.5%前後の高めの伸びが見込まれる。
GDPの約7割を占める個人消費が堅調な見通しのため、米景気が急速に冷え込む恐れは小さいと思われる。ただ、民間企業の雇用創出力が鈍ってきていることや、利上げの累積効果がここから一段と顕在化する可能性が高いことを踏まえると、米景気は緩やかな減速が続くと予想される。
米景気はソフトランディングを予想、利下げは来年5月から、四半期毎に合計3回の実施を見込む
米国の実質GDP成長率は、前期比年率で2023年10-12月期が+2.2%、2024年1-3月期が+1.8%、4-6月期が+1.6%、7-9月期が+1.2%、10-12月期が+1.1%を予想しており(図表1)、通年では2023年が前年比+2.5%、2024年は同+2.1%を見込んでいる。このように、成長ペースは時間の経過とともに鈍化する見通しだが、FRBの金融政策が成長を一定程度支えると考えている。
その金融政策について、FRBは2024年4月30日、5月1日に開催する米連邦公開市場委員会(FOMC)において最初の利下げに踏み切り、利下げ幅は25bpとみている。
その後の利下げペースは、米景気が想定以上に悪化しない限り、四半期に1回を想定しており、7月30日、31日開催のFOMCと、11月6日、7日開催のFOMCで25bpずつの利下げが行われると予想する。
大幅なインフレ鈍化や、雇用情勢の悪化は想定せず、利下げの前倒しや回数増加はサブシナリオ
個人消費支出(PCE)物価指数の前年同期比伸び率は、2023年10-12月期が+2.9%、2024年1-3月期が+2.4%、4-6月期が+2.4%、7-9月期が+2.4%、10-12月期が+2.5%を予想しており、失業率は、2023年10-12月期が3.8%、2024年1-3月期が3.8%、4-6月期が3.9%、7-9月期が4.0%、10-12月期が4.1%との見方だ(図表2)。現時点で、大幅なインフレ鈍化や雇用情勢の悪化は想定していない。
以上より、2024年の米国経済は、緩やかな減速が続くものの、FRBの適切なタイミングでの利下げによって景気後退(リセッション)入りは回避され、ソフトランディングに至ると見込んでいる。
なお、三井住友DSアセットマネジメントの想定よりも急速に物価と雇用の伸びが鈍化すれば、利下げ開始の前倒しに加え、利下げ回数の増加も予想されるが、これはサブシナリオと位置付けている。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい
DIME最新号の特集は「NEXTヒットのつくり方」2024年のビジネストレンドがまるわかり!
爆売れ商品を分析してDIME編集部が導き出した「ヒットの方程式」を大公開するほか時代を先取る専門家たちに総力取材した「NEXTトレンド」も必見です! 次のビジネスチャンスを一足お先にキャッチアップできる、まさに保存版! 毎年恒例「2023年第36回小学館DIMEトレンド大賞」の発表もあります。2023年のトレンドを振り返り、来る未来に乗り遅れないために必読の一冊です!
構成/DIME編集部