わずか数分でアニサキスを一網打尽!その秘密とは?
パルスパワーを使ってどのようにアニサキスを退治しているのかというと、円筒状の処理槽に魚の切り身(アジフィーレ)を入れ、人工雷のようなパルスパワーを300~500回程度ショットするだけ。現状、300枚ぐらいのアジフィーレなら約200秒で全てのアニサキスを感電死させられるという。
「なぜアジかというと、ジャパンシーフーズさんがアジのチルドの商品を取り扱っていたので最初はアジで試しました。今のところ一日に300キロは処理できる装置が完成しており、これまで累計25トンを出荷していますが一切アニサキス被害はありません」
「基本的にショットを打てば打つほどアニサキスは殺虫できますが、打つことで少なからず魚はダメージを受けてしまいます。そのため、魚の品質を落とさない最小回数はどれぐらいなのか?アジについてはその回数は分かっていますが、今後、サバやサケ、サンマなどでも検証し、突き詰めていく必要があると思っています」
今年の秋には、ベルトコンベアーで流しながら大量の魚を処理できる装置も完成。また、切り身はもちろん、釣り上げたばかりの魚をそのまま処理できる技術も開発した。実証実験も終え、あとは実用化を目指すだけだ。
日本の生食文化に光を与える新たな挑戦
アニサキス対策には冷凍と除去という方法があるというが、冷凍には向かない魚もあれば、冷凍したくないという人も少なくない。
また、除去するといってもそのほとんどが手作業。魚を捌いた後に紫外線の下に置き、30分間注視しながらちょっとでも動きが確認できたら取り除くという、気が遠くなるような作業を強いられることも。
そこまで念入りに取り組んだとしても、アニサキスの被害は無くならず、増えているのが現状だ。
「人がやる以上は当然ヒューマンエラーもありますし、たとえ紫外線を当てても身の奥にいるアニサキスまでは確認できないこともあります」
「だからこそ、アニサキス殺虫装置を少しでも早く実用化したいんです。我々日本人がこよなく愛する海産物全てに使えるとなれば、ゆくゆくはこの装置を作ってくれる企業も現れるはず。多くの人に今起こっているアニサキスの問題とそれを払拭する我々が開発した装置のことを知っていただきたいです」
現在、浪平准教授の所属する熊本大学産業ナノマテリアル研究所がクラウドファンディングを実施中だ。
日本の生食文化のため多くの支援を必要としている。一度チェックしてほしい。