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『不徳の致すところ』という慣用句は知っていても、意味がよく分からず使ったことがない人もいるのではないでしょうか?そこで、意味や使い方、使う際の注意点を紹介します。言い換え表現にも触れるので、意味や使い方を確認し、表現の幅を広げましょう。
「不徳の致すところ」の意味とは
慣用句を使うときには、まず言葉の意味を正しく理解することが大切です。『不徳(ふとく)』と『不徳の致すところ』のそれぞれの意味を紹介します。
■「不徳」は徳が足りないことを指す
不徳は否定や打消しの意味を持つ『不』と、品性や道徳という意味の『徳』が組み合わさった言葉です。つまり、自身に徳が備わっていないことや足りないことを指します。
徳の持つ意味合いから、人として正しくないという意味で使われ、取り返しのつかない品性や道徳に反する失敗などを指します。単なる不注意による小さな失敗やトラブルを表すのに適した言葉ではありません。
■自分の不徳に原因があったとする言葉
『致す』は特定のことが原因で好ましくない結果を招くという意味で、『ところ』は内容や場面という意味です。不徳の致すところは、自身に徳が備わっていなかったことが原因で好ましくない状況に陥ったことを意味しています。
また、好ましくない状況になった原因は自分に至らない点があったからだと、自身に責任があることを認める言葉でもあります。認めると同時に謝罪や反省の意も込められていますが、実際に使うときには、謝罪や反省の言葉とともに使われるのが一般的です。
■「徳」が示すものは?
『徳が高い』のように使われる『徳』とは、その人の言動などを含めた人柄を表すときに使われることが珍しくありません。例えば、「彼が部下に慕われているのは、人徳があるからだ」のように使われます。一般的に器が大きく信頼されている人や人格が優れている人などを意味しています。
また、『徳を積む』というのもよく耳にする言葉です。見返りなどを求めず、善い行いを繰り返すことを指し、明るみに出なくても社会や人間関係にプラスの結果をもたらすという概念です。
「不徳の致すところ」の使い方と注意点
慣用句は、使うシーンなど使い方を把握した上で正しく使うことが大切です。使い方を例文とともに確認しましょう。ビジネスシーンで使用する際に、覚えておきたい注意点にも触れています。
■「不徳の致すところ」を使った例文
自分の徳が足りないなど、未熟さが原因で引き起こしてしまった失敗やトラブルに対して使います。ビジネスシーンでも、自分に責任があると考えられる場合に使われます。
【例文】
- メディアでも報道されております今回の不祥事につきましては、私の不徳の致すところでございます。関係者の皆さまに心よりお詫び申し上げます
- 工場での事故につきましては、責任者である私の不徳の致すところであります。誠に申し訳ございませんでした
- 息子の不適切な言動は親である私どもの不徳の致すところでございます。ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんでした
■ビジネスシーンで使う場合の注意点
『不徳の致すところ』は、重大な失敗など大きな責任が伴うことに使う表現です。小さな失敗やトラブルに対して使うと違和感があるため、使わないようにしましょう。日常的に使う軽い表現ではないので、何度も使うことも避けるのが無難です。
また、自分に責任がある場合に使う言葉で、自分以外に責任がある際には使いません。例えば、「今回の件は、あなたの不徳の致すところです」と相手に対して使うのは間違いです。敬語表現ではありますが、自分に対してのみ使うと覚えておきましょう。
「不徳の致すところ」を言い換えると?
『不徳の致すところ』の代わりに使える言い換え表現を三つ紹介します。全く同じ意味というわけではないので、それぞれの意味と使い方を例文と併せて確認し、状況に応じて使い分けられるようになりましょう。
■猛省しております
『猛省(もうせい)』には、自分の失敗や過ちに対して心から深く反省するという意味があります。単に反省するというだけでなく、再び同じことを繰り返さないために振り返って考え、改善していくというニュアンスも込められています。
反省よりも強い意思や謙虚さが感じられる言葉のため、ビジネスシーンでは文語でも口語でもよく使われる表現です。
【例文】
- 私の確認不足で納期が大幅に遅れてしまったことを猛省しております。今後このようなことがないように対策をしていく所存です
- ご指摘いただきました件につきまして、猛省しております。真摯に受け止め、改善に努めてまいります
■痛恨の極み
『痛恨(つうこん)』には非常に残念であることという意味があり、『極み』には極限という意味があります。つまり『痛恨の極み』は、これ以上ないほど残念に思ったり悔んだりすることという意味です。
【例文】
- 自分の不注意によるけがで、オリンピックに出場できなかったことは痛恨の極みです
- 思いがけない失敗で、大事な商談がうまくいかなかったのは、痛恨の極みだ
なお、極みという言葉を用いて『不徳の極み』という言い回しもあります。『不徳の致すところ』よりも、より反省の意が込められた表現です。
■大変申し訳ございませんでした
一般的に使われる謝罪の言葉の一つが、『大変申し訳ございませんでした』です。自分に非があり、弁解ができないほど申し訳なく思っていることを表しています。
丁寧語である『ございます』の過去形で敬語のため、ビジネスシーンでも使えます。なお、失敗などをその場で謝罪するときは、現在形を使いましょう。
【例文】
- ◯◯の納期変更のご連絡を忘れてしまい、大変申し訳ございませんでした
- ご要望と異なるサンプルを発送してしまい、大変申し訳ございませんでした。すぐに正しいものを発送いたします
「不徳の致すところ」を英語で言うと?
『不徳の致すところ』の英語表現を謝罪に使える英文と併せて紹介します。近年は、ビジネスシーンで英語を使う機会も増えているので、知っておくと役立つでしょう。
■「不徳の致すところ」の英語表現
辞書では『feeling morally responsible』や『put the blame on me』という英語表現が紹介されていますが、実際にネイティブが使う表現とは異なります。不徳の致すところは日本語特有の言い回しのため、そのまま英訳すると不自然になりやすく、ニュアンスをうまく伝えるのが難しい表現です。
自分に落ち度があったことを認める表現なので、「It’s my fault./I take full responsibility.(私の責任です)」が使えるでしょう。『I’m sorry for…』や『I apologize for…』のように、謝罪の言葉とともに使われるのが一般的です。
■実際の謝罪をする際に使える例文
さまざまな言い回しがありますが、『I’m sorry for…』は日常会話で使われる一般的な表現です。ただし、少し軽いカジュアルな印象があるため、丁寧な印象にしたいときは『sorry』の前に『very』や『really』『truly』などの言葉を加えて使いましょう。
『sorry』よりも改まった表現で、ビジネスシーンでよく使われるのが、『I apologize for…』です。『sincerely』や『deeply』などと一緒に使われることも珍しくありません。
【例文】
- I’m very sorry for making you wait.(お待たせして大変申し訳ございません)
- We deeply apologize for the inconvenience caused by the delay in delivering your order.(ご注文いただいた商品の配送が遅れ、ご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます)
構成/編集部