■連載/阿部純子のトレンド探検隊
準備も必要なく、着の身着のままいつでもすぐに5分間の運動ができる
ヘルスケアスタートアップの「issin」がリリースした、5分で運動習慣が定着する心拍数連動オンラインエクササイズサービス「Smart 5min(スマートファイブミニッツ)」が、「Makuake」にて先行予約を受け付けしている。
厚生労働省「国民健康・栄養調査報告」では、働き盛りの30~50代では運動習慣があるという人は3割を切っており、運動習慣の定着の妨げになっている理由として、1位は「忙しくて時間がない」、2位は「面倒」が挙げられている。
「理由となっている2つの課題を解消すれば、運動していない7割の方々に運動習慣が身につけるかもしれないと考え、Smart 5minを開発しました。
私が製品を作る時はいつも自分が求めるものが何かを追求します。たった5分だったら忙しい自分でも時間が取れるし、準備が必要ない自宅でのトレーニングなら問題が解消できます。
オンラインレッスンは世の中に数多くありますが、あり過ぎることで、どれが自分に合うかわからずだんだん面倒くさくなる。だったら提供されるものに合わせてやるだけなら頭を使わずに済むのではないか。これが2つ目に必要な条件でした。
3つめは、トレーニングで得るものがないとなかなか続かず、習慣化されるために必要なものは何かということ。これら3つが全部クリアできれば、運動習慣がなかなか身につかない私でも継続できるのではないかと思い、開発を進めました」(issin 代表取締役 程涛氏)
Smart 5minは、心拍数をリアルタイムで測定しながら、その日の気分や体調に合わせてAIパーソナルコーチが運動強度を自動調整することで、5分で効果的な運動がルーティーン化される。
トレーニング時は腕に専用バンド(心拍計)を装着し、その日の体調や心拍数に連動して提案される、最適な強度のエクササイズ動画をスマホアプリで視聴しながら行う。
「自分の運動強度を知るための最もシンプルな方法が心拍数の把握です。最大心拍数の簡単な公式は『220-年齢』。トレーニング中の心拍数を最大心拍数の割合(%)に基づいて5つの心拍ゾーンに分類。パーセンテージが運動中に表示され、心拍数を見ながら運動効果を実感できます」(程氏)
専用バンドもなるべく簡単につけられようにと、おもちゃからヒントを得た、ぱちんと巻き付くスタイル。自分の運動強度がスマホ上にリアルタイムで表示され、今の運動強度が中か高か最大なのか一目で判断できる。自分の努力が可視化されることで、がんばる意欲が湧き、その結果、運動効果の向上も期待できる。
エクササイズを開始する前に、簡単に体調を入力することで、その日のコンディションに合わせた最適なトレーニングプランを即座に提供。また、このサービスではカメラ使用しないため、プライバシーの保護や、朝起きたときの服装で参加できるので運動へのハードルがかなり低くなる。
Smart 5minは、世界で注目されているインターバルトレーニング「タバタトレーニング」の開発者、立命館大学スポーツ健康科学部 特命教員(教授)、東京大学大学院総合文化研究科客員教授の田畑泉氏が監修している。
田畑氏は、厚生労働省健康局が策定した「健康づくりのための運動基準2006」「エクササイズガイド2006」「健康づくりのための身体活動基準2013とアクティブガイド」に構成員として関与している。
「日常生活における活動量、運動量が多い人は生活習慣病になるリスクが低いことが知られています。2006年に厚生労働省健康局が策定した健康づくりのための運動基準では、歩行量が1日60分、汗をかく運動量が1週間に1時間を推奨しています。
2013年の健康づくりのための身体活動基準では、プラス10分でもいいから歩きましょうと、日常生活の中で少しでも1日の運動、身体活動を増やすことを勧めています。
しかし、すぐに運動習慣を身につけるのはなかなか難しく、最初の一歩として、誰でも簡単にできるような運動プログラムがあれば望ましいと思います。
運動をするときにはエネルギーが必要で、エネルギーを作るエンジンとして、有酸素性と無酸素性の2つがあります。タバタトレーニングは、この両方のエンジン出力を上げることによって、健康に関連の深い持久力を向上させることができます。
しかし、スポーツ選手が行っているような典型的なタバタトレーニングはものすごくきつい。私はそういうことをみなさんに期待しているのではなくて、最初の1歩を安全で楽な運動から始めてほしいと考えています。
Smart 5minは心拍数がしっかりモニターされていますので、運動の強さを客観的に知ることができます。そのような運動に徐々に慣れていって、最終的にがんばれた人には、エビデンスの高い本来のタバタトレーニングができるのではないかと期待しています」(田畑氏)
YouTubeチャンネルでワークアウト動画を中心に発信している「のがちゃんねる」さんが、Smart 5minのチーフコンダクターに就任。2024年1月14日(日)10:00には、「のがちゃんねる」とコラボレーションを開催し、同時刻に配信を見ながら、Smart 5minをつけて一緒に運動し、同時接続数でギネス世界記録に挑戦する。
「運動やダイエットはとにかく続けることが一番の目的。結果は後からついてくるので、毎日続けられるのなら5秒でもいいと思います。毎日5秒やっているうちに気が乗ってそのまま続けられるかもしれない。どんなに忙しくても、どんなに嫌なことがあっても、毎日できるぐらいハードルを下げて、とにかくきっかけを作って取り掛かることが一番重要です。
Smart 5minを行う時間は決まっていませんが、必ず続けられるタイミングを見つけるというのが大事かなと思います。朝の場合、起きて歯を磨いてというように、ある程度みなさんルーティーンが決まっています。その中で歯を磨いた後に5分間運動するという感じで、朝なら組み込みやすいのは確かです。
また、朝は代謝が下がっているので、運動することで代謝が上がり、体温も上がって、1日が気持ちよく始まると効果もあると思います」(のがちゃんねるさん)
【AJの読み】「スマートバスマット」を世に送り出した程涛氏の運動習慣化に着目した新製品
issinは、ダウンロード数300万超のNintendo Switchソフト「スイカゲーム」の開発者である程氏が2021年に創業した、東京大学発のヘルスケアスタートアップ企業。
販売台数25万超の照明一体型プロジェクター「ポップインアラジン」や、お風呂上がりに乗るだけで、体重測定など自動で健康管理ができるヘルスケア製品「スマートバスマット」を開発。「スマートバスマット」のユーザー数は2万人を突破し、「2023 第36回 小学館DIMEトレンド大賞」の家電部門賞を受賞した。
「スマートバスマット」を開発、提供する中で、利用データの分析やユーザーとの意見交換などから、心身の健康には運動を習慣化することが非常に効果的であることや、運動習慣を身につけたいと考えているユーザーが多く存在することがわかり、「朝の5分間」だけで運動習慣が定着する心拍数連動のオンラインエクササイズサービスのSmart 5minと専用心拍計の開発、今回の先行販売に至った。
issin社の“長男”でもある照明一体型プロジェクターのポップインアラジンと、Smart 5minのコラボも検討中とのこと。
「朝、目が覚めたら、ポップインアラジンが自動で起動して、ベッドから出ると目の前に映像のコーチが待っている、なんていうのも面白いのではないでしょうか。コーチが待機していたら、もうやるしかないと思うでしょうしね(笑)」(程氏)
文/阿部純子