潜在的食物アレルギーが心血管死リスクと関連
急性のアレルギー症状は現れないが、検査で反応が見つかる程度の潜在的な食物アレルギーが、心血管死のリスクと関連のあることが明らかになった。
米バージニア大学保健システム(UVA)のJeffrey Wilson氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Allergy and Clinical Immunology」に2023年11月9日掲載された。
Wilson氏らは、「将来的には、既知のリスク因子を持たない人の中から心血管疾患リスクの高い人を探し出すために、食物アレルギー検査が役立つようになるかもしれない」と話している。
食物アレルギーの症状が現れない人にも、何らかの食物に対するアレルギー反応が生じていることが、抗体検査〔免疫グロブリンE(IgE)検査〕で示唆されることがある。
従来、そのような検査所見は臨床的には意味がないものと考えられていたが、赤肉を摂取した後に、アレルギー症状が現れないにもかかわらずIgE抗体レベルが上昇する人は、心血管疾患のリスクが高い可能性のあることが最近指摘されている。
これを背景としてWilson氏らは、そのような潜在的な食物アレルギー反応が、心血管疾患による死亡と関連しているかどうかを検討した。
研究には、2005~2006年の米国国民健康栄養調査(NHANES)と、アテローム性動脈硬化に関する多民族研究(MESA)のデータが用いられた。
MESAは2000~2002年に研究参加登録が行われ、心血管疾患危険因子のない一般住民が登録されている。なお、IgEは総IgEと、牛乳、卵、ピーナッツ、エビなどの食品に対する特異的IgEが評価された。
NHANESでは4,414人の成人のうち229人の心血管死が確認され、MESAでは960人中56人の心血管死が記録されていた。性別、年齢、人種/民族、喫煙歴、教育歴、喘息の既往を調整したCox比例ハザードモデルでの解析の結果、NHANESでは、1種類以上の食品に対する感作が心血管死リスクの高さと有意に関連していた〔ハザード比(HR)1.7(95%信頼区間1.2~2.4)、P=0.005〕。
特に牛乳への感作との関連が強く認められた〔HR2.0(同1.1~3.8)、P=0.026〕。同様の関連はMESAでも確認された〔HR3.8(同1.6~9.1)、P=0.003〕。
Wilson氏はUVA発のリリースの中で、「今回の研究対象者の大半は、明らかな食物アレルギーを有していたとは考えにくく、よって示された結果は、食物に対する潜在的なアレルギー反応の影響を示すものと言える。このような反応は急性アレルギー症状を来すほど強力ではないが、それでも炎症を惹起して時間の経過とともに、心臓病などの問題を引き起こす可能性がある」と解説している。
この関連のメカニズムについては、現時点では推論の域を出ない。しかし、「アレルギー反応にかかわるマスト細胞と呼ばれる細胞は、血管や心臓にも存在する」と研究グループは指摘している。
ただし、未知の遺伝的要因または環境要因が関与している可能性も否定できず、より多くの研究が必要とされる段階だ。Wilson氏は、「この領域の研究は将来的に、アレルギー反応を評価する血液検査が、心臓の健康に良い食生活のアドバイスに役立てられる可能性につながるのではないか。とは言え、そのような推奨を実際に示すことができるようになるまでには、クリアすべき課題が多く残されている」と話している。(HealthDay News 2023年11月13日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.jacionline.org/article/S0091-6749(23)01251-4/fulltext
Press Release
https://newsroom.uvahealth.com/2023/11/09/allergic-responses-to-common-foods-up-risk-of-heart-disease/
構成/DIME編集部