日本版ライドシェアは、やはり地域毎に設計されていくようだ。
江戸時代までは「日本は六十余州で構成されている」と言われ、しかもそれぞれが全く別の政策の下で運営されていた。その頃の感覚が今でも残っているとしたら、あらゆるプロジェクトは全国的な互換性よりも「その地域に特化したもの」になりやすいのではないか。
いずれにせよ、今現在の日本では「地域限定型ライドシェア」が各地で企画されている。
鳥取県知事の見解
11月22日、鳥取県の平井伸治知事が定例記者会見を行い、その中で「鳥取型ライド・シェア」について言及した。
この記者会見の文字起こしが、鳥取県公式サイト「とりネット」に前文記載されている。何と、平井知事の話し方そのものが校正なく公開されている。
「鳥取型ライド・シェア」とわざわざ「・」をつけた理由は分かりかねるが、それでも県知事の発言が丸のまま記録されているのは非常にありがたい。
それとあともう1つが最近ライド・シェア(一般のドライバーが自家用車を使い有料で人を運ぶサービス)ということが言われます。それで、これは、議論は非常によく分かるんですが、ちょっと地方には向いてない部分が多々あるかなと思っております。典型的なライド・シェアというのはアメリカ[合衆国]でやられるようなものでありまして、住民の皆さんとかが、言わば白タク(国の許可なくタクシー事業を行う違法行為)という言葉もありますが、そういうことで、[第]二種[運転]免許(主に旅客運送業を行う際に必要な免許)など持たなくても、そういうウーバー(アメリカ発祥の配車サービス)とかで配車をして、それでお乗せをすると。それによってタクシー交通を補っていくという発想なんですけれども、私ども地方部のほうで、それはそれで分かるわけではありますが、そもそも実は今、何が起きているかというと、例えば南部町さんなんかはタクシーの営業所閉めちゃったとか、それで、実はタクシー業者を存続していただかないといけないわけですね。それで、本来のその運送業自体が今、失われてしまっては政策として元も子もないわけです。
ですから、どちらかというとそういうバスやタクシー、ハイヤー、そうした事業者と協調をしながら足らざる交通というものをコミュニティみんなで支えていくと、それで、そういう言わばコミュニティ・ドライブ・シェア、鳥取型のライド・シェアでありますけども、コミュニティ・ドライブ・シェアというようなものを、これを導入推進してはどうだろうかと、それで、ぜひ政府もこういう地方の実情に即したライド・シェアのステレオタイプ(先入観、固定観念)に固執されるのではなくて、本当に地方で根付いて、それで、地域の今、中山間地を中心に交通の足が失われかけていると、それで、それを何とか地域で頑張ろうというものを応援するような仕組みをぜひ政府のほうでも考えていただきたいと
(知事定例記者会見 2023年11月22日-鳥取県)
重要な部分は、筆者が下線を引かせていただいた。
つまり「鳥取型ライド・シェア」は、UberやGrab、そしてインドネシアから発祥して東南アジア全体を巻き込む事業者になったGo-jekのライドシェアとは全く異なる形にすると平井知事が明言しているのだ。Uberとは何かをよく知っている上で「それは鳥取県には必要ない」と話している。
この「コミュニティ・ドライブ・シェア(鳥取型ライド・シェア)推進事業」には、新規事業として7,000万円が計上される。「鳥取型ライド・シェア」に参画する一般ドライバーの2主免許取得の費用を取得するための支援も予定されているというから、やはり「鳥取型ライド・シェア」は「ライドシェア」ではなく「従来型タクシーの補完的存在」なのだ。平井知事の言葉通りである。