トヨタのフルサイズミニバン「アルファード」の人気が凄い。一般社団法人日本自動車販売協会連合会の統計でも2022年1月から12月までのランキングで「アルファード」は総合10位に入っている。他の9台はコンパクト、スモールのSUVやミニバンや2BOXカーなので販売価格は200万円台が中心。そこに600万円クラスの「アルファード」が入っているのだ。2008年に2代目が誕生し、2015年に3代目を発売。この頃からSUVや高級セダンに代わる高級車として人気が急上昇。納車1年待ちは当たりまえとまで言われた。
4代目に進化した「アルファード」は新しい日本の高級車として確立
最新モデルは2023年6月に発表された。4代目に進化した「アルファード」は、さらにプレミアム感を増し、新しい日本の高級車として確立したクルマになった。大きな進化は、乗り心地の向上とハンドリングのレベルアップだ。
パワーユニットは2種類。直4、2493cc、ガソリン+CVTと直4、2487cc、ガソリン+交流同期モーター×2のハイブリッド。グレードはZとエグゼクティブラウンジの2グレードで、Zはガソリンと、ハイブリッド、エグゼクティブラウンジはハイブリッドだけ。駆動方式は全モデルにFFと4WDが用意されている。
車両価格はZ・ガソリン・FFの540万円からエグゼクティブラウンジE-Fourの872万円までだが、エグゼクティブラウンジは、オプションをちょっと装着するだけで1000万円を超えてしまう。
試乗は、まずエグゼクティブラウンジのE-Fourモデルからスタート。3代目の同グレードで、山形県にさくらんぼ狩りに行ったとき、2列目シートに座り、乗り心地の悪さと振動の大きさに閉口した体験があるが、開発陣によれば、「もうそういうことはない!」と言い切るほどの自信作だという。
TNGAプラットフォームをミニバン用に最適化。車体底部にブレースをV字に設けることで車体剛性を3代目に比べて約50%アップした。さらにボディの変形を抑えるために構造用接着剤を部分により変えるなど最適化した。サスペンションは従来のフロントがストラット、リアにダブルウィッシュボーンの組み合わせをベースに開発し、ショックアブゾーバーは減衰力を機械的に可変させた。2列目シートはクッションフレームの取付部分にゴム製ブッシュを採用している。シート素材も背もたれやアームレストに低反発のフォームパッドを採用し、着座した人へ伝わる振動を3代目の3分の1まで低減したという。
新型「アルファード」のベストチョイスは、エグゼクティブラウンジ。
それを確かめようと、スライドドアを開け、2列目に座った。ドアを開けるとステップがせり出してくる。左右両ドアにステップが出るのはトヨタ車として初めてだそうだ。Bピラーのグリップは上下620mmと長く、子供でもつかまって乗ることができる。2列目に座り、走り出す。最初の路面の継ぎ目を越えたとき、オヤッと思った。確かに突き上げが少ない。その思いは高速道路に入ってからさらに強くなる。
ゴツゴツとした動きや上下に細かく振動した3代目の動きがないのだ。3代目では、走行中にスマホからメールを打つことは、振動により至難の業だったが、新型ではラウンジシートで寛ぎながら、メールが打てる!2列目から助手席を見ているとブルブルとふるえていたのが、なくなっている。
3列目に移ってみた(2列目シートが大きく、ピタリとついているので、ウォークスルーはできない)。シートの大きさは快適だが、ややゴツゴツとした乗り心地。かなり改善はされたが、2列目ほど劇的には進化していなかった。
進化といえば、2.5L+2モーターの走りの質感の向上も目覚ましいものがあった。運転席に座り、走り出して気付いたのが、エンジン音の静かさ。3代目だと、アクセルをちょっと強く踏みこみ、エンジンが始動すると、ノイジーなエンジン音が室内に侵入してきた。それがかなり抑えられている。さらにモーターとエンジンの駆動のつなぎ目がスムーズでなく、空転するような動きもあったが、それもなくなっているのだ。
エンジンとモーターのシームレスなつなぎが、ワインディングでのスポーティな走りも結びついていることもわかった。エグゼクティブラウンジに、パドルシフト?と思っていたが、2、3速を使いながら中速域でのコーナリングは、狙ったイン側を攻めることもでき、ボディーのロールも抑えられているのだ。このクルマに乗れば、オーナーの大半はパドルシフトは使わないが、役員車なら、役員を送り届けた夜の首都高を秘かに楽しむ運転手もいるかもしれない。エグゼクティブラウンジの裏活用法だ。
結論として、新型「アルファード」のベストチョイスは、エグゼクティブラウンジ。とくに2列目に乗る人は、これで決まりだ。
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https://toyota.jp/alphard/
文/石川真禧照 撮影/萩原文博