KAERU
2030年には3人に1人が65歳以上の高齢者になる日本には、社会課題がいくつもある。その内のひとつ「高齢者のQOL(クオリティー・オブ・ライフ/生活の質)低下をいかに防ぐか」に対し、〝お金の視点〟で解決を目指すのが「KAERU」だ。見た目はよくある国際ブランド付きのプリペイドカードだが、スマホアプリと連動することで高齢者をはじめとする買い物支援が必要な人向けの機能が備わっている。
「高齢者向けに工夫したキャッシュレス機能、例えば1日の買い物限度額や、利用時の即時通知、メモ・リマインド機能などで買い物に対する『安心』を提供することでQOLの維持ができると考えています」(KAERU・取締役COO福田勝彦さん)
また、「判断能力が低下する認知症やその予備軍の高齢者は、今まで普通にできていたはずの買い物が制限され、例えば、孫におもちゃを買ってあげるなどのコミュニケーション機会や楽しみが奪われた結果、社会から断絶されてしまいやすい。そういった方々を救えれば幸いです」(同前)
〝人間らしさ〟を最期まで失わずに余生を全うするために活用できそうだ。
認知症になる可能性は誰にでもある。キャッシュレス決済の各事業者が買い物支援機能を実装し、買い物するすべての人に寄り添う社会の実現が求められる。
決済用カードは本人が持ち、スマホアプリで家族が買い物を見守れる
プリペイド式のカードでキャッシュレス決済ができ、スマホアプリで履歴や通知が見られる。本人同意のうえで、支援者が利用通知を受け取り、見守りやコミュニケーションの一助にもなる。
増え続ける要介護(要支援)者が買い物を〝普通に楽しめる〟社会へ
右肩上がりに増える要介護者に比例して、KAERUのニーズも増えるだろう。「高齢者だけではなく、若年性認知症の人にも支援が可能で、社会福祉団体も注目しています」(福田さん)
取材・文/久我吉史