手術後の転帰に患者と外科医の性別の一致は影響せず
外科医として活躍する女性医師の数が増えている中、新たな疑問も浮上している。それは、「外科手術を受ける場合、患者と外科医の性別が同じである方が、異なる場合よりも良好な転帰が望めるのか」というものだ。
こうした中、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デヴィッド・ゲフィン医科大学の一般内科および医療サービス研究部門の津川友介氏らが、その答えとなる研究結果を「The BMJ」に2023年11月22日発表した。
この研究では、患者と外科医の性別の組み合わせがどのようなものであれ、術後の転帰は同等であることが示されたという。
津川氏らは、2016年から2019年の間に14種類の手術のいずれかを受けた290万2,756人のメディケア受益者(65〜99歳)のデータを用いて、患者と外科医の性別の一致と患者の術後(30日間)死亡率との関連を検討した。
14種類の手術は、腹部大動脈瘤修復術、盲腸切除術、冠動脈バイパス術、胆嚢摘出術、結腸切除術、膀胱摘出術、子宮摘出術、人工股関節置換術、人工膝関節置換術、椎弓切除術/脊椎固定術、肝切除術、肺切除術、前立腺摘出術、甲状腺摘出術であった。
対象患者の44.4%(128万7,845人)では同性の外科医が手術を担当し、そのうちの120万1,712例(41.4%)が男性同士の組み合わせ、8万6,133例(3.0%)が女性同士の組み合わせであった。
また、55.6%(161万4,911人)の患者では、外科医と患者の性別が異なっており、内訳は、5万2,944例(1.8%)が男性患者と女性外科医の組み合わせ、156万1,967例(53.8%)が女性患者と男性外科医の組み合わせだった。
術後30日での調整死亡率は、男性患者・男性外科医で2.0%、男性患者・女性外科医で1.7%、女性患者・男性外科医で1.5%、女性患者・女性外科医で1.3%であった。
患者と外科医の性別が一致する手術での術後死亡率は、女性患者では男性外科医が担当した場合に比べてわずかに低下していたが(調整リスク差−0.2パーセントポイント、95%信頼区間−0.3〜−0.1、P<0.001)、男性患者では女性外科医が担当した場合に比べて上昇していた(同0.3パーセントポイント、0.2〜0.5、P<0.001)。
ただし、これらの差はわずかであり、臨床的に重要な意味はないと判断された。
こうした結果を受けて津川氏は、「女性外科医と男性外科医の間での患者死亡率の差が小さいことを考えると、患者は、性別以外の要素も考慮して外科医を選ぶべきだ」と助言している。
さらに津川氏は、「米国では、女性外科医が提供する外科治療の質は、男性外科医が提供するものと同等か、場合によっては若干優れていることを患者に知ってもらうことが重要だ」とUCLAのニュースリリースで述べている。(HealthDay News 2023年11月27日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.bmj.com/content/383/bmj-2023-075484
Press Release
https://www.uclahealth.org/news/does-patient-surgeon-gender-concordance-lead-lower-patient
構成/DIME編集部