国内の株式市場において急増するMBO。その背景と今後の味方を読み解くべくこのほど、三井住友DSアセットマネジメントは、同社チーフマーケットストラテジストの市川雅浩氏がその時々の市場動向を解説する「市川レポート」の最新版として、「日本企業のMBO増加の背景と今後の見方について」と題したマーケットレポートを公開した。レポートの詳細は以下の通り。
MBOは株式を非公開化する代表的な手法、国内の株式市場でMBOを選ぶ企業が増えている
国内の株式市場では、このところMBOを選ぶ企業が増えている。MBOとは、マネジメント・バイアウトの略称で、経営陣などが自社の株式や事業部門を買収して独立することを指し、株式を非公開化する代表的な手法の一つ。11月にはシダックス、ベネッセホールディングス(HD)、大正製薬HDが立て続けにMBOを発表し、市場でも大きな話題となった。
11月26日付の日本経済新聞では、2023年のMBOについて、件数ベースで16件と、2021年(19件)以来の水準になったと報じられた。また、大正製薬HDのMBO買い付け額(普通株で総額約7,100億円)が日本企業で過去最大となったこともあり、金額ベースで1兆1,000億円を超え、過去最高に達したとのことだ。そこで、今回のレポートでは、MBO増加の背景と今後の見方について考えていく。
MBO増加の背景には、東証の企業への資本効率改善要請や、アクティビストの存在などがあろう
まず、MBO増加については、最近の東京証券取引所(以下、東証)の活動が大きく影響していると思われる。東証は2022年4月に市場再編を行い、新市場への新規上場および上場維持に厳格な審査基準を設けた。また2023年3月には、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を企業に要請し、2024年1月から要請への取り組みを開示した企業名を毎月更新するとしており、企業の上場負担は増加傾向にあると推測される。
これに加え、最近では物言う株主(アクティビスト)による企業への要求が強まりつつあり、このような状況も、MBO増加の一因になっていると考えられる。一般に、MBOによる株式の非公開化について、経営陣のメリットとしては、上場負担がなくなることや、自由度の高い経営を行いやすくなること、中長期の視点で構造改革に取り組めることなどが挙げられる(図表1)。
企業価値の向上が求められるなかでのMBOの増加は、市場の新陳代謝が進んでいる証左とみる
一方で、MBOによる株式の非公開化は、株式発行による資金調達ができなくなることや、一般株主と利害が対立する利益相反となりやすいことなどのデメリットもあるため、経営陣はこれらを踏まえ、MBOの判断をすることになる。この先も、東証やアクティビストなどからの企業に対する企業価値向上の要請は継続するとみられることから、MBOや上場先の変更を検討する企業も増えてくると思われる。
参考までに、12月5日時点のプライム市場の上場企業数は1,656社。市場再編前、2022年4月3日時点の市場第一部の上場企業数は2,177社だったので、この間、最上位市場の上場企業数は約24%減少したことになる(図表2)。このような変化は、上場企業がそれぞれ持続的な成長を達成するために最適な判断を行った結果であり、市場の新陳代謝が進んでいると考えられる。
※個別銘柄に言及しているが、当該銘柄を推奨するものではない。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい
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