各サービスとモバイルが連携される今後に期待!
房野氏:楽天の営業力をモバイルに注力したらいいんじゃないでしょうか。
石川氏:やっていますよ。楽天市場の出店者に楽天モバイルを法人で契約させるとか。
石野氏:だから1か月に20万契約も伸びているんですよね。今、20万も月間で純増しているキャリアはないので、これは結構すごいと思います。
房野氏:楽天の営業マンが頑張っているってことですね。
石野氏:頑張っているし、三木谷さんが言っていましたけれど、法人契約が結構獲れているようです。出店者へ積極的にアプローチしている。
石川氏:出店者が契約して、出店者の家族がまた契約していくってことになれば、数を維持できるかもしれない。
石野氏:なんなら、楽天トラベルに出店している宿に楽天モバイルの基地局を取り付けさせてもらっている。出店者は契約すれば、めっちゃ電波が入るんですよ。
石川氏:楽天がすごいなと思ったのは、楽天市場に出店すると、売上が上がった時にお金をもらう銀行口座が必要になって、楽天銀行に口座を作る。法人として何か買い物する時にはカードが必要なので、楽天プレミアムカードの法人カードで決済する。出店者を軸に経済圏が広がっているなと。法人営業が強いってそこなのかなと。
石野氏:中小企業に強いですよね。
石川氏:auじぶん銀行は全然、法人口座はやる気がなかった。
房野氏:出店者に法人会員になってもらって、芋づる式に契約してもらうと。
法林氏:それは最初からこの座談会でも言っていた話。楽天はもともと、グループとして携帯電話以外のサービスはほぼ全部持っていたわけですよ。カードも証券も銀行もECも、みんな持っていた。それらをモバイルと連携させていけば、もしかして新しい台風の目になるかもしれないと最初に思ったんですけれど、やってみたら楽天モバイルだけで孤立してやっているので、それじゃあダメじゃない? とこの3年間、ずーっと言い続けていて、このスマホ会議でも指摘してきた。ようやく、紐付けないと意味がないということを楽天が理解したのか、今回SPUでやってきた。でも、サービス開始から何年経っているんだと。
房野氏:これから期待できますか?
石野氏:そういう意味では、営業力に期待できますよね。
石川氏:弱点がなくなったというか。
法林氏:本来、楽天が持っているアドバンテージに、ようやく気がついたんだよね。
石野氏:あとは楽天カードに楽天モバイルのSIMカードを一緒に入れて売るようにすれば(笑)
石川氏:「Rakuten最強プラン」によって弱点がなくなったので、あとは営業力をいかに高めていくかになって、経済圏勝負に引きずり込もうと3社はしている。
房野氏:楽天モバイルは「学割プラン」など、新たな料金サービスはいりませんか。
石川氏:その辺りのことを先日、楽天モバイルに聞く機会があったんです。家族向けのキャンペーンとか必要なんじゃないですか? って聞いたら、楽天モバイルには紹介キャンペーンがあると。紹介した人には7000ポイント、された人には6000ポイント、合わせて1万3000ポイント付与されるので、それによって家族で契約しているそうです。学校の友だち同士でも入るんだそう。それで小遣い稼ぎしている(笑)。
さらには外国人がたくさん入っているみたいです。そういうわけで20万増えているという話なので、あえて家族を打ち出さなくても契約を獲れていると言っていました。他社は複数回線で500円割り引くというやり方をしているけれど、それよりもドンと6000ポイント渡した方がユーザーにとっては魅力的だと。
石野氏:でも、タブレット向けプランとかデータSIM的なプランは欲しいなぁ。
法林氏:音声なしの料金プランは、必要だよね。
石川氏:プラス1000円でタブレットを持てるとかね。
石野氏:一応、あるんですけれどね。音声付きと同じ金額で(笑)。シェアのしくみはApple Watchでできているので、それをiPadにも拡張してくれれば済む話。そうしたらiPadが楽天市場で売れるようになるし、Win-Winじゃないかな。
石川氏:ソフトバンクの勢いがあった頃って、それこそ体重計やフォトフレーム、こんなの使わないよっていうようなものにまでSIMカードを入れて、がむしゃらに契約数を確保していた。今の楽天もそれぐらいやらないと。やっぱり勢いがあると思わせないと、みんなが契約してるんだって思わせないと、この先、勢いが出ないと思う。
石野氏:ソフトバンクの場合、契約数で借り入れ金の金利が変わってしまう条項があって、なんとしても純増を増やさなくてはいけないという状況だった。楽天はたぶん、モバイルを始めるための資金調達の時にそういう条件がないので、収益重視で0円プランをやめたりしたんだと思います。でも、今のワンプラン、スマートフォンではいいかもしれないけれど、スマートフォン以外を使う時に、月額2980円のサービス料は高い。ここまでエリアが広がったんだったら、もうちょい汎用性を高めてほしいなって気がします。楽天モバイルで2回線持つと、2980円×2になるので。
法林氏:回線を使わず980円×2かもしれない。
石野氏:まぁ、そうですね。
房野氏:楽天モバイルがサブブランドを持つってことはあるのでしょうか。
法林氏:ないと思う。無理でしょう。どちらかというと、早くできるのはデータプランだと思う。データプランの契約者って、実はあまり解約しないんです。パソコンもタブレットもそうだけれど、端末を手放さない限りやめないし、端末もしょっちゅう買い換えるものじゃない。
石川氏:タブレット用にSIMを1枚追加して月額1000円だけれど、1か月50GBとかの容量制限があるっていうプランを、ほかの3社はやっている。そういう料金プランが楽天モバイルにもあっていいんじゃないかな。
房野氏:仮に500万ユーザーの1、2割がデータプランを契約するだけで、50万とか100万回線増えるわけですしね。
石川氏:そうだし、あれだけ法人、法人って言っているんだったら、法人向けのタブレット回線は、当然ニーズがあると思う。
法林氏:ソフトバンクもそうだし、もっと遡ればウィルコムもそうだけれど、POSレジに、ISDNの変わりにDDIポケットのデータ通信カードが挿さったりしていた。今でもiPadがレジの代わりとして使えるサービスがあるけれど、回線が入っているiPadをソフトバンクがせっせと売っている。法人展開するんだったら、データ通信契約が必要なんですよ。逆にそれがないとダメ。楽天モバイルはワンプランにこだわっているのが、契約者数が伸びない大きな原因。楽天市場の出店者に「楽天モバイルに契約すれば、来月からPOSレジ用の回線を別途、契約しなくていいんですよ」みたいな営業ができるのに。
石川氏:レジ用だったらそんなに大量のデータが流れるものではないし、ネットワークの負担も大きくない。
法林氏:モバイルだから、お店がレイアウトを変更する時にも簡単に移動できる。データ通信は結構いろんな使い道があるんですよ。有線でつなぐメリットもあるけれど、結構前からモバイルが使われる方向になってきている。
石野氏:それには、プラチナバンドが必要だなって気がしますね。まぁ、これからってところじゃないですか。500万契約を超えて、プラチナバンドも手に入って、法人契約も始まって、これから期待できるところかなって思います。今回はポジティブな話で締めくくれそうですね(笑)
法林氏:最大の問題は個人ユーザーが離れないかどうかだけですよ。
……続く!
次回は、10万円を切る驚き価格で登場した、激安折りたたみスマートフォン「motorola razr 40s」について会議する予定です。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
構成/中馬幹弘
文/房野麻子
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