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内臓脂肪が多くpDC活性の低い人は新型コロナやインフルエンザの罹患リスクが高い、キリンと花王の共同研究

2023.12.04

内臓脂肪と免疫の司令塔の活性について関連を調査する研究を共同で実施

キリンホールディングス(以下キリン)と花王は、和歌山県立医科大学の主宰により、NPO法人ヘルスプロモーション研究センターが取りまとめているコホート研究(※2)「わかやまヘルスプロモーションスタディ」に参画。

内臓脂肪と免疫の司令塔(プラズマサイトイド樹状細胞、以下pDC ※3)の活性(※4)について、その関連を調査する研究を共同で実施した。
※2 疾病の要因と発症の関連を調べるための観察的研究の手法のひとつ。
※3 細菌やウイルスが体内に入ってきたときに重要な働きをする司令塔役の免疫細胞。 pDCが活性化することによって、NK細胞やT細胞、B細胞などさまざまな免疫細胞が活発に働きウイルス感染から防御する。
※4 ウイルス感染を模した刺激を与えた際の抗ウイルス因子をつくるpDCの割合。

近年、肥満がウイルス感染症の重症化につながる(※5)など、肥満と免疫の関連性が注目されており、本研究では、内臓脂肪と免疫活性の関連性を調査した。

その結果、内臓脂肪が多いとpDC活性が低い(免疫機能が低い)こと、また、内臓脂肪が多く、かつpDC活性が低いと、新型コロナウイルス感染症・インフルエンザの罹患リスクが高いことを日本で初めて(※1)確認した。

この事実は世界でもまだ論文報告されていない(※6)発見となる。今回の研究成果は、第44回日本肥満学会・第41回日本肥満症治療学会学術集会(2023年11月25日・26日)で発表された。
※1 PubMed及び医中誌Webに掲載された論文情報・抄録情報に基づく(2023年11月22日現在 「pDC活性×内臓脂肪×感染症罹患」で検索 ナレッジワイヤ調べ)。
※6 PubMed及び医中誌Webに掲載された論文情報に基づく(2023年11月22日現在 「pDC活性×内臓脂肪×感染症罹患」で検索 ナレッジワイヤ調べ)。

共同研究成果(概要)

<日本初※1となる発見>

1.内臓脂肪が多い人では、pDC活性が低いことが認められた。
2.内臓脂肪が多く、pDC活性が低い人は、そうでない人と比較し、新型コロナウイルス感染症・インフルエンザに罹った割合が高かったことを確認した。

<得られた示唆>

内臓脂肪量が少ない状態を保ち、pDC活性を高く維持することが、新型コロナウイルス感染症・インフルエンザへの罹患リスクの低減につながることが示唆された。

共同研究成果について

<背景・目的>

肥満は、世界保健機関(WHO)によって「異常あるいは過度の脂肪の蓄積により健康リスクが高まった状態」と定義されており、慢性疾患のリスク上昇につながる。

肥満が健康にもたらす影響については、世界各国で研究が進められているが、近年、肥満はウイルス感染症の重症化につながる(※8)など、肥満と免疫の関連性が注目されている。

当研究は、2011年から和歌山県在住の方を対象に行われている「わかやまヘルスプロモーションスタディ」の一環として実施。生活習慣病に関連が深いとされる内臓脂肪型肥満の研究に長年取り組んできた花王と、免疫領域での研究を35年以上続けてきたキリンが共同研究を行なうことで、内臓脂肪とpDC活性の関連の解明をめざすものだ。
※8 Pranata R et al. Clin Nutr ESPEN. 2021; 43: 163-168.

<研究方法>

2022年11月に和歌山県にて、50~55歳の住民223名を対象とした特定健診を実施。花王が生活習慣や内臓脂肪面積のデータを取得して、キリンが血液中のpDC活性に関するデータを測定した。

それらのデータを相互に共有し、内臓脂肪とpDC活性の関わりを共同で研究・解析。

群分けは次のように行なわれた。

内臓脂肪面積について/全被験者の中央値である77cm2を基準とし、77cm2以下の人を内臓脂肪が低い群、77 cm2より多い人を内臓脂肪が高い群とした。

pDC活性について/全被験者の中央値である9.52%を基準とし、9.52%以下の人をpDC活性が低い群、9.52%より多い人をpDC活性が高い群とした。

■結果1:内臓脂肪面積とpDC活性の関係性

図1 内臓脂肪面積とpDC活性の関係性

内臓内臓脂肪面積とpDC活性の関係性を調べた結果、内臓脂肪面積値が高い群は低い群と比較して、有意にpDC活性が低いことがわかった(図1)。

■結果2:内臓脂肪面積とpDC活性が感染症の罹患に及ぼす影響

図2 内臓脂肪面積 pDC活性と新型コロナウイルスの罹患の関係性

図3 内臓脂肪面積とpDC活性が新型コロナウイルスのみ、新型コロナウイルス・インフルエンザ両方の罹患に及ぼす影響

内臓脂肪面積値が高い群は、低い群と比較して、オッズ比(※9)として7倍高く、新型コロナウイルス感染症に罹患していた。

一方でpDC活性の値が低い群は、高い値の群と比較した場合、オッズ比として5倍高く、新型コロナウイルス感染症に罹患していた。

さらに、内臓脂肪面積とpDC活性の高低による相乗効果を確認することを目的に4群に分けて解析したところ、内臓脂肪面積値が高く、pDC活性の値が低い群は、内臓脂肪面積値が低く、pDC活性の値が高い群と比較して、オッズ比として20倍高く、新型コロナウイルス感染症に罹患してした。

同様の結果が、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの両方の罹患との関係でも確認できた。
※9 オッズ比は、ある事象の起こりやすさを表す際に用いられる値のこと。オッズ比が大きい場合、その値と起こりやすさは正の相関を示す。

<共同研究成果>

本共同研究により、内臓脂肪面積値が高い人では、pDC活性が低いことが、日本で初めて(※1)わかった。

また、内臓脂肪面積やpDC活性はそれぞれ、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザの罹患しやすさに影響を及ぼし、内臓脂肪面積値が高く、かつpDC活性が低い場合は、罹患が特に起こりやすいことが示唆された。

このことから内臓脂肪面積値が高く、pDC活性が低い人は、内臓脂肪量と免疫機能の両方をケアすることが重要である可能性が考えられる。

関連情報
https://www.kirinholdings.com/
https://www.kao.com/jp/

構成/清水眞希

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