パピヨン本田さんはSNSで9万人のフォロワーを持つ美術家兼漫画家。特に分かりにくい現代作品を上手に解説したXが大人気である。
便器を逆さにして、タイトルを付けただけのように見える作品や、カボチャに点々がいっぱいついたオブジェ。さらには子どもが遊びで描いたような絵画など、誰がどう見ても美しいとは思えないのに、なぜ高く評価されているのだろう。わからないことだらけの現代美術の鑑賞のポイントと、作品が私たちに与えてくれる5つのヒントを、パピヨン本田さんに解説してもらおう。芸術の秋、美術館に行っても、楽しく作品を見ることができるようになるかもしれない。
【ヒントその1】現代美術は作品ではなく作家から見ると理解しやすい
パピヨン本田さんによると、現代美術の歴史を見ると、「そんなのアリ!?」とつっこみたくなるような仰天エピソードはたくさんあると言う。そして、「物議を醸し、ときに人を不愉快にさせることもある現代美術は、もしかしたら常識外れだと感じる人もいるかもしれません。
それでも知恵を絞って新しさを模索する作家たちの姿には、必死さと葛藤があり、願望と欲望があり、汗と涙がありで、勇気づけられることもあります」として、こうした改革を求める変わり者を、独自の視点と解釈でまとめたのが新刊書「常識破りの天才たちが作った 美術道」(KADOKAWA発刊、定価1500円+税)である。
この本の中でパピヨン本田さんは、現代美術が分からないと感じる多くの人に、作品からではなく、作家から現代美術を見てみることを勧めている。
【ヒントその2】現代美術はじまりの人マルセル・デュシャンを知る
新刊書では23人のアーティストを紹介しているが、パピヨン本田さんが一番最初に紹介しているのが、マルセル・デュシャン(1887~1968年)である。現代芸術の父と呼ばれる大作家で、作品の意味を考えさせる芸術を提案しようとした人物だった。
パピヨン本田さんによると、芸術は見て感じるもの、作品は作家がつくるもの、という美術の風潮の中で、デュシャンは「美術は頭で考えるもの」と主張し、買ってひっくり返しただけの既製品小便器を展示した。見た人は果たしてこれは美術なのか?と考え始める。まさに彼が提唱する、作品を見た人を考えさせる美術だった。
パピヨン本田さんはこうした新しい考え方が生まれた背景を解説してくれた。「彼が生きた20世紀は工業化が進展した時代で、機械の方が彫刻家よりも精巧なもの作りができ、絵より写真の方がリアルに現実を写し取るようになった、そんな時代です。
ですから当時の美術家たちも、自分がものを作ったり、絵を描いたりする意味は何なのだろうと考えていました。
ものをつくることが美術だけれど、人じゃなくても作れる、そんな行き詰まりの中で、デュシャンが切り開いた新しい道こそが、工業製品をそのまま作品として展示会に出品することでした。作らないことも美術という新しい道になったのです」と教えてくれた。
頭で美を考える、とは、なんと自由で新しい発想だったことか。その後の多くの芸術家たちに多大な影響を与えたのも納得である。さかさまの便器の与えたインパクトは大きかった。
【ヒントその3】既成概念を打ち壊すことの重要性を教えてくれる
デュシャンのように、新しい美術の道を切り開いた日本人も紹介されている。特に「芸術は爆発だ」で有名な岡本太郎(1911~1996年)は日本の文化に対する世界のイメージを一転させた、偉大な芸術家だった。
パピヨン本田さんは岡本太郎の偉大さをこう解説している。「高度経済成長期を迎える日本は海外のものをどんどん取り入れて発展しようとしていました。そのような潮流に疑問を抱き続けたのが岡本です。
彼は海外の価値観を後追いするのではなく、日本独自の新しい美術を見つけようとしました。そして、それまでの日本美術といえば『わびさび』だったところに、『縄文土器』という新しい日本美術の源泉を見つけます!日本人の美術的価値観を壊して、新しい提案をしたのです」と教えてくれた。
パピヨン本田さん自身、岡本太郎の作品に大きな影響を受け、また、美術の世界へ入るきっかけとなった人物だったとも、打ち明けている。そのためか、解説も他の人に比べるととても愛情深く書いている。「芸術は爆発だ」の爆発の意味もわかりやすく、大好きな人について楽しく書いている空気が伝わってくるのは不思議だ。ぜひ岡本太郎の部分だけでも、実際に読んでみて欲しい。自分なりの、新たな気付きを与えてくれる。
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