2023年のフル稼働が印象的だった元日本代表10番
●2位…香川真司(34歳、セレッソ大阪/MF)
今年2月に13年間の欧州挑戦を終えて、古巣・セレッソ大阪に戻った香川真司。欧州最後のクラブとなったシントトロイデンで同僚だった岡崎慎司は「まるで自分のことのように寂しい。1つの時代が終わったような感じ」と語っていた。一方で、日本代表で長く共闘してきた吉田麻也(LAギャラクシー)は「真司にはJリーグを盛り上げてほしい」と熱望していた。
周囲の大きな期待に応え、今季の香川は33試合出場2ゴールとフル稼働。ポジションはかつての攻撃的MFではなく、ボランチやアンカーに下がったが、低い位置からゲームを作り、周りを動かし、守備で奮闘する姿は30代ならではの新たなスタイルに他ならなかった。
「自分が代表になれたのも真司さんのおかげ」と右SBの毎熊晟矢も語っていたが、後輩たちに甚大な影響をもたらしたと言っていい。
今季セレッソは残念ながら無冠に終わったが、香川がいるうちに何としてもリーグ制覇の大目標を果たすしかない。来季はケガで長期離脱していた清武弘嗣との本格競演が楽しみだ。
2023年に強烈なインパクトを残した日本屈指の点取屋
●1位…大迫勇也(33歳、ヴィッセル神戸/FW)
11月19日の本山雅志の引退試合で久しぶりに鹿島のベンチコートを身にまとった大迫(筆者撮影)
文句なしの2023年MVPと言えるのがこの男だろう。武藤嘉紀と全く同じタイミングの2021年夏に国内復帰を決断。古巣・鹿島ではなく、神戸という新たなクラブに赴いた彼の目標はズバリ「リーグ制覇」と「カタールW杯出場」だったはずだ。
後者の方はご存じの通り、叶わなかった。2021年までは森保ジャパンの絶対的1トップだった大迫が2022年に入るとケガを繰り返し、まともにピッチに立てなくなったからだ。11月のW杯開幕前には公式戦復帰を果たしていたものの、すでに森保一監督は堅守速攻のスタイルにシフト。大迫不在の戦い方を構築していた。その結果、「自分は代表の中心のつもりでやっている」と語っていた男がまさかの落選。その屈辱感は想像を絶するものがあったはずだ。
その悔しさを2023年のJ1でぶつけたいという思いも強かったのだろう。彼はシーズン序盤から次々とゴールを重ね、神戸の首位快走のけん引役となる。どこかで負傷するのではないかという懸念もあったが、今季の大迫は33試合(うち先発31試合)に出場。猛暑の夏場も全力で走り続け、日本サッカー界屈指のFWであることを示した。
33歳になった今でも代表復帰待望論は根強いが、本人も2026年北中米W杯行きを諦めてはいない。30代後半まで世界トップに君臨したイブラヒモビッチやレヴァンドフスキ(バルセロナ)のように、彼も結果で存在を実証し続けてもらいたい。
まとめ
少子化の進む日本では、ビジネス界でも経験豊富なベテランや年長者たちの力がより一層、重要になりつつある。大迫や香川のように年齢を重ねても結果を出し続けられれば理想的。我々ビジネスパーソンも彼らを見習って成長を続けていきたいものである。
取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。