日本代表時代の大迫勇也。今季MVPが再び日の丸を背負う日が訪れるのか(筆者撮影)
ヴィッセル神戸が悲願の初優勝を飾った2023年Jリーグ。神戸の大迫勇也、山口蛍、酒井高徳らに象徴される通り、10代後半から20代にかけての日本代表クラスの選手がいち早く欧州移籍してしまうこともあり、欧州から戻ってきた30代ベテラン選手がJリーグを大いに盛り上げている印象だ。
今回は過去3年間に国内復帰した「出戻組」にスポットを当て、彼らの活躍度・注目度を評価。以下の通り、ランキングを作成してみた。
柴崎・長友らカタール組はやや苦しんだシーズンに
●10位…柴崎岳(31歳、鹿島アントラーズ/MF)
2017年1月からの6年半のスペイン挑戦に終止符を打ち、2023年9月に古巣・鹿島へ戻ってきた柴崎。かつて共闘した先輩・岩政大樹監督からも「中盤でゲームをコントロールできる貴重な存在」と大きな期待を寄せられ、今季J1の行方を左右すると見られた9月24日の横浜戦で先発したが、直後に負傷。10月21日の神戸戦後には長期離脱が発表され、今季を棒に振る形になってしまった。
2018年ロシアW杯ではフル稼働し、日本の16強入りの原動力となったが、2022年カタールW杯では出番なし。スペインでも1部昇格が叶わず、鹿島復帰後もケガを苦しい時間が続いているが、まだ老け込む年齢ではない。来季以降の活躍が期待される。
●9位…長友佑都(37歳、FC東京/DF)
カタールW杯から1年。FC東京では苦しんだ長友佑都(筆者撮影)
2021年9月に11年ぶりの古巣・FC東京復帰を果たし、チームにJ1タイトルをもたらすと野心を押し出していた長友。しかし、2022年頭~6月までのアルベル監督体制では右サイドバック(SB)に起用されたり、控えに回されたりと立場が安定せず、本人も苛立ちを覚えたことだろう。
その後、現在のクラモフスキー監督体制移行後は本職の左SBでプレーする機会も増え、長友自身の状態は上向いた。しかしチームは勢いが見られず、2023年は12位でフィニッシュ。昨季の6位から大幅に順位を下げる形になり、長友が追い求めるタイトルには程遠い状況になってしまっている。
すでに37歳になり、同世代が次々と引退を発表する中、彼が現役のうちに優勝という対岸を成就させられるのか。ここはベテランの意地の見せどころだ。
井手口、乾らかつての代表勢の活躍度は?
●8位…井手口陽介(27歳、アビスパ福岡/MF)
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督時代の日本代表で一世を風靡しながら、2018年・2022年両W杯に出られなかった井手口陽介。彼は2018~2019年夏の1年半と2022年1月~2023年2月の1年間に2度、欧州にチャレンジしたが、どちらも満足いく結果を残せず、今年2月に故郷の福岡で再起を賭けることになった。
当初はケガもあり、なかなか試合に出られなかったが、6月以降はコンスタントにボランチとして活躍。11月4日のYBCルヴァンカップ決勝・浦和レッズ戦で躍動。福岡に記念すべき初タイトルをもたらすことに成功した。
「(セルティックで)試合に出ていない自分をアビスパが拾ってくれたというのは来た時から有難く感じていたので、少しでも恩を返したいって気持ちはあった。それが1つ叶ったのかな」と本人も言う。2023年はいい再出発の年になったようだ。
●7位…乾貴士(35歳、清水エスパルス/MF)
長友とほぼ同時期の2021年8月末に2011年夏までプレーしていたセレッソ大阪に戻り、Jリーグで新たな一歩を踏み出した乾貴士。欧州でプレーしていた間も毎年のようにセレッソに戻って練習していて、古巣愛は非常に強かった。だが、2022年4月にチームの規律・秩序を乱す行動を取ったことで退団に追い込まれ、かつてセレッソの強化部長をしていた大熊清GMがいる清水に7月から加入した。
同年はJ1残留に貢献しきれなかったが、J2を戦っている今季はトップ下にコンバートされてから水を得た魚のように躍動。今季10ゴールをマークし、チームの攻撃陣を力強くリードした。12月2日の昇格プレーオフ決勝・東京ヴェルディ戦で大仕事を見せ、チームを勝たせれば、真の昇格請負人になれる。乾貴士の存在価値を今こそ示すべき時だ。
●6位…酒井宏樹(33歳、浦和レッズ/DF)
2021年夏の東京五輪前に9年ぶりにJリーグに戻り、古巣・柏レイソルではなく、浦和入りした酒井宏樹。だが、長年の勤続疲労のせいか、2022年はケガがちで、カタールW杯でもリハビリに時間を割かなければならず、苦しい時を過ごした。
しかし今年は5月のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝でアルヒラル撃破に貢献。キャプテンとしてアジア制覇を達成することができた。それは本当に大きな出来事だったが、その後のチームの成績が続かなかった。終盤に入ってからはJ1、ルヴァン、ACLと3つの大会を掛け持ちし、前者2つは優勝の可能性があったが、それも潰えてしまった。彼自身は奮闘したが、不完全燃焼感の残るラストになってしまったのは確かだろう。