合併によって生まれたサービスの〝カニバリ〟をLINEヤフーはどう整理を付け、我々に〝便利〟を届けてくれるのか。同社広報部門にぶつけた質問への回答とプロITジャーナリストの見解を基に、未来予想をしてみた。
LINEヤフーのサービスにはすでにこんな変化が!
LINE、ヤフー、PayPayのID統合でサービスの行き来が自由に
LINEとヤフーとの連携・統合は任意であるが、連携するとLYPプレミアムをはじめ様々な施策・特典がある。PayPayとのID統合の特典は未定だ。
→ PayPayとの連携は2024年予定
PayPay・LINE Payの統合はもう少し先。主力はPayPay・PayPayポイントに?
国内ではPayPayに統合予定だが、LINE Payは海外の事業用に残る。ポイントはPayPayポイントに統合予定だが時期は2024年以降になると見られる。
→ 海外旅行時にはLINE Payの出番かも!?
PayPayモールがヤフーショッピングに統合。「ヤフー」ブランド推しに
PayPayを冠したショッピング系サービスPayPayモールはヤフーショッピングに統合になり、同PayPayフリマがヤフーフリマに今秋名称変更に。
→ ZOZOやアスクルは健在!?
出遅れたエンタメ・動画領域はLINE VOOMを軸に国産ショート動画SNSへ
縦型のショート動画をユーザーが投稿するLINE VOOMが利用可能に。また、テレビ番組動画がスマホで楽しめるTVer連携が予定されている。
→ TVerも加わり新たな動画体験が楽しめるかも
サービス統廃合の道のりは長くユーザーがなじむにも時間がかかる
合併後のLINEヤフー発足から1か月以上がたち、その余波とも影響とも言うべき事態が世間をにぎわせた。「LINEが使えなくなる問題」だ。LINEアプリの起動時に表示される画面に同意しないと、11月から同アプリが使えなくなるのは困るとして各ニュースメディアがこぞって報じた。
だが、合併や買収による企業体質の変革には、こういった混乱が付き物である。サービスの統廃合となればなおさらだ。セキュリティー、利便性、利害関係、システム構成……私たちユーザーの目に見えないところで、様々な変化が起きている。そしてそれは、いずれ表面化し、LINEヤフーが手がけるサービスは目に見える形で変化していくだろう。
どんな機能が残り、どんな名称になり、そしてLINEとヤフーのどちらがイニシアチブを握るのか。決済領域を中心に国内外のネットビジネスに詳しいITジャーナリストの鈴木淳也さんが推測する。
「ヤフーとLINEは総ユーザーこそ被るものの、メインで利用するユーザーの被りが少ないという特徴があります。『LINEニュースは見るけどYahoo!ニュースは見ない』といったユーザーが相当数いるのです。そういった人たちを突き放さないためにも、7割くらいのサービスは残り続けると見ています。
また、利害関係やシステム機能を調整し統廃合を終えるには、数年はかかる。ユーザーが新しいサービスに馴染む時間も加味すると、〝本当の意味での合併〟にはかなり時間がかかるでしょう」
その行く末はどうなるのか。鈴木さんの予測と、LINEヤフー社の回答から未来を予想してみよう。
ITジャーナリスト
鈴木淳也さん
メーカー系エンジニア経験を持ち、特に決済分野の造詣が深いITジャーナリストとして、国内テック系メディアに多数の寄稿をする。
惜しまれつつも終了したLINEヤフーのサービス
統合日の10月1日までにも様々なサービスが終了した。ユーザーへの影響度合いは大小様々だが、とりわけGYAOは2005年から続く老舗サービスだっただけに惜しむ声が多く聞こえた。
(2022年以降 編集部調べ)
LINEヤフーの金融は〝PayPay〟で決まり!?
LINEヤフーの金融事業は、QR決済、クレジットカード、銀行・投資の3つの分野に分かれているが、大きな方向性としては「PayPayブランドへ統合」に向かいそうだ。
「統合する方針が公式発表されているQR決済は、コスト削減など、当然、統合したほうがLINEヤフーにとってメリットがあるのは確かですが、ユーザーへのメリットが見いだせないので、共存する道を歩むかもしれません」(鈴木さん)
またカード事業では、そのビジネスの仕組み上、統合は難しそうだ。PayPayカードは自社で手掛けているのに対し、LINE Payクレジットカードは三井住友カード社(以下、SMCC)が手掛けており、利害関係の調整が難航しそうだ。
「これらの統廃合の予定は現時点ではございません。またLINE Payは、LINEユーザーの利便性向上のため、SMCCとのアライアンスを通じて、最適な決済体験の提供を目指しています」(LINEヤフー広報)と、SMCCを競合ではなく協業相手として見ているようだ。一番統廃合が大変そうに見える銀行・投資の分野は、意外にもすんなりとPayPayブランドへ統一するようだ。
【決済】LINE PayとPayPayは国内PayPay、海外LINE Payの構図に
2019年11月18日のLINEとヤフーとの統合発表直後から、QR決済で競合するLINE PayとPayPayは、PayPayに集約される。LINE Payとしては海外でその事業を継続予定だ。と、両社が公式に発表していた。だが、LINEヤフー広報によれば、「この方向性は変わらず統合に向けて連携を進めていますが、2023年10月末現在、LINE Payの事業や残高は継続しています」と、完全廃止はまだ遠そうだ。加えて、「ユーザーの利便性を考え、本当に統合する意味があるのか。統合しても得する人がおらず、共存する可能性がある」(鈴木さん)という見方もある。いずれにせよ急な統合により利用者が損をする可能性は限りなく低いだろう。
すでにPayPayの加盟店でLINE Payが使えている
決済のシステム連携は進んでおり、PayPayのQRコードを利用してLINE Pay決済が可能だ。
東南アジアで拡大するLINE
台湾やタイではLINEのシェアが拡大している。LINE Payは台湾では市場シェアNo.1となっている。日本で登録したLINE Payはクレジットカードとの連携があれば台湾でも利用できる。
【カード】クレジットカードは新ブランドになるかも?
PayPayカードとLINE Payクレジットカードでは、発行体や機能面の違いがあるため、「カード事業の統合は、ユーザーニーズの違いも大きく、ユーザー数が明らかな減少に転じない限り両者存続するでしょう。一方、『新ブランド』がソフトバンクグループ内に出現し、将来的に主力となるカードが変更になる可能性はあります」(鈴木さん)。
【投資】銀行・投資サービスはPayPayブランドに統一していく方向
統合に先立った2023年3月にLINE Bankの開業断念や同6月のLINE証券の撤退発表が相次ぎ、この領域ではPayPayブランドに統一する方向性が目立つ。「LINEヤフーにおける国内金融事業領域は、10月1日よりPayPay銀行などを傘下に持つZフィナンシャルに機能を集約しました」(LINEヤフー広報)と、実際に旧ヤフー陣営、PayPayブランドが存続している。
LINEブランドの融資サービスとしてLINE Creditが残るが、いずれPayPayブランドへの変更または廃止となりそうだ。
上掲のとおりカードは例外的にLINEブランドが継続しそうだが、PayPay銀行のほかPayPay保険サービス、PayPay証券などのPayPayブランドの金融サービスがラインアップされている。
取材・文/久我吉史
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