「おにぎりって、儲からない」
川原田氏は入社前、1号店虎ノ門店でスタッフとして修業兼マーケティングをしていたが、その時に「おにぎり専門店は、忙しいわりに儲からない」ことを痛感したという。
「そもそもおにぎりってやっぱり、あまりにも日常食だし、コンビニでも安く買えるので、高いお金を払ってまで食べるものではないですよね。『ここのおにぎりは美味しい』って言ってくださるお客さんはすごく多かったんですが、それにしても儲からないということを痛感しました…(笑)」
しかも、おにぎりは競争が激しく、どこのチェーン店もレベルが高い。その中で選ばれるには、美味しいだけではなく、インパクトやブランド力が必要だと感じた。「差別化と付加価値ですね。美味しいのは当たり前で、ただ美味しいだけじゃ潰れてしまう業界なので、利益が少ないからこそたくさん売れなければならない、そのためにはどうするかを、料理スタッフや店舗スタッフとともに考え抜きました」(川原田氏)
海外に進出する前に、まず日本でファンをつくらなければならない。そのためにとった戦略が前述の「食材の組み合わせの妙」。しかし、さまざまな組み合わせを楽しんでもらおうと食材を足していった結果、具がご飯の中におさまりきらないものも出て来た。窮余の一策として具を上に乗せたところ、見た目の華やかさから人気を呼ぶように。外国人観光客にも「何が入っているかわかりやすい」と好評だという。
外国人に人気のおにぎりは「ローストビーフ」と「サーモン」
ちなみに、外国人観光客の一番人気の具は、鮭やローストビーフなどのように、素材がはっきりわかるもの。逆に梅干しはいつも説明を求められるし、日本人に人気の「出汁パンチ×3」は「何がパンチで、何が3なんだ」と聞かれるという。「肉や魚のようながっつり系か、ヴィーガンの方にはきっちり野菜だけ、という品が人気です」(川原田氏)
▲外国人客に人気が高い「黒毛和牛ローストビーフートリュフソース-」(410円)と、「和牛と根菜すき焼き-生七味添え-」(340円)
▲素材がわかりやすい「天然焼き紅鮭」(250円)も外国人観光客に人気
観光客のほかに、外資系の会社のイベントなどで、100個単位で予約が入ることも多い。フィンガーフードであること、ヴィーガンにも対応できることなどが人気の理由だ。2024年にはロサンゼルスに海外1号店を出店予定。ロサンゼルスを選んだのは、日系人が多くお米文化が根付いていること、そのためにおにぎりを握るスタッフが得られやすいということなどが理由。
現在、店舗では時間と手間がかかる計量をおにぎりロボットにまかせ、最後にふわっと握る工程を人間がやって仕上げるハイブリッド方式を採用している。最後の仕上げにはやはり人の手が必要で、それにはおにぎりの美味しさを理解していなければならない。それはアメリカ人にはハードルが高いので、まず日系人が多い土地で始めて、その技術をその国のスタッフにも広めていくという戦略だ。
「最初の2~3年は海外でブランド価値を作る期間だと思っていますので、年間数店舗ずつ出して、その先はフランチャイズ展開をして100店舗まで一気に拡大したい。ちょっと東大的に言うと(笑)指数関数的な伸ばし方をイメージしています」(川原田氏)
取材・文/桑原恵美子
取材協力/ RICE REPUBLIC株式会社