東京タワーからほど近い麻布エリアに、「Green & Wellness」をコンセプトとした広大な街「麻布台ヒルズ」が誕生。そこにはオフィス、住宅、ホテル、マーケット、ギャラリーなど、多様な都市機能が集積し、広場や果樹園まである自然と調和した環境が広がる。全体で150店舗の商業施設を展開する中、94店舗が11月24日にいち早くオープン。今後、2024年2月にかけて、順次、施設が開業していく。
「麻布台ヒルズ」の中核となる「森JPタワー」。オフィスや商業施設、慶應義塾大学予防医療センターなどが入る。
その内の1つ、「森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス(以下、チームラボボーダレス)」が、2024年2月上旬のオープンに先駆けて世界初公開の新作を発表した。
「チームラボボーダレス」がオープンする「ガーデンプラザB」。
水の泡のような無数の光がきらめく新作「Bubble Universe」
「チームラボボーダレス」は、アート集団「チームラボ」と森ビルが共同で手掛ける“地図のないミュージアム”。東京・お台場では2018年6月の開館からわずか1年で世界160以上の国と地域から、約230万人の来場者数を達成するなど人気を博した。そんなお台場の施設が2022年8月に閉館し、「麻布台ヒルズ」に移転することとなった。
「チームラボボーダレス」の入口。正面から見ると施設名が立体的に見えるように文字を配置。
新「チームラボボーダレス」では、全く新しい作品群や日本未発表作品などを多数公開予定。今回、オープンに先駆けて、新作の「Bubble Universe:実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光」と、「花と人 – Megalith Crystal Formation(work in progress)、Black Waves – Megalith Crystal Formation(work in progress)」の2作品を公開した。
「Bubble Universe」は、チームラボの新たなアートプロジェクト「認知上の存在」をテーマにしたインタラクティブな作品。鏡で覆われた空間には無数の球体群が埋め尽くされ、それぞれの球体は、互いに他の球体の光を生み出す環境の一部になっている。
床や壁面が鏡になっていて浮遊感のある不思議な空間になっている。
「この空間を俯瞰で見ると、いっぱいの水の泡のようにも見えるので、Bubble Universeと名付けました。この中の球体には様々な光を見ることができます。球体自身が光っている実体のある光、我々の認知上に出現する光、周囲の環境そのものが作り出す光などです。それらの光が入り混ざってひとつの球体ができていて、それが群となってこの空間ができています。多分、今までにないような空間で、新たな体験だと思うので、ぜひ楽しんでもらえればと思います」と、チームラボ 代表取締役の猪子寿之氏。
作品のコンセプトを説明するチームラボ 代表取締役の猪子寿之氏。
作品タイトルの「実体光、光のシャボン玉、ぷるんぷるんの光、環境によって生み出される光」というのは、球体そのものに光源があるので、それ自体が光る実体光と、周囲の球体が光ることで影響を受ける、環境によって生み出される光のこと。光のシャボン玉とぷるんぷるんの光というのは、我々の認知世界だけに存在している光の存在で、目の位置や光の角度がうまく合った時に球体の中にシャボン玉のような円形の光が見えたり、上空の球体からは白いゼリーのようなぷるんぷるんの光を見ることができる。
様々な色に変化し、共鳴し合う光は幻想的な雰囲気を醸し出し、鏡張りのこの空間の中に身を置いていると、自分が浮遊しているように感じる。まさにタイトル通り、泡の宇宙を感じることができた。
様々なアート群が複雑に関係し合う「Megalith Crystal Formation」
もうひとつの「花と人 – Megalith Crystal Formation(work in progress)、Black Waves – Megalith Crystal Formation(work in progress)」は、「チームラボボーダレス」の様々なアート群が、部屋から部屋へと移動しながら入ってくる作品。まだ制作中で、今回は「花と人」と「Black Waves」の2作品だけだったが、オープン時にはそのほかの様々な作品についても複雑に関係し合い、境界なく連続する世界を創り出すものになる。
「花と人」は人が近くで動き回ると花々が散っていき、じっとしていると普段より多く生まれるという、花々が誕生と死滅を繰り返していく作品。そして「Black Waves」は波を無数の水の粒子の連続体で表現した作品。水の粒子の軌跡で線を描くことで、波が命を吹き込まれた生き物であるかのように感じる。
「花と人」と「Black Waves」の2つの作品が複雑に関係し合う。
壁際に様々な形の立方体が散乱した空間に、花や波が押し寄せ、互いに影響を与えながら、連続した世界を創り出す様子は見ていて飽きない。これがもっと多くの作品で表現されるかと思うと、どのような作品になるのか楽しみだ。
「チームラボボーダレス」のオープン日や料金、チケットの発売日などの詳細は現在未定で、今後、発表される予定。2024年2月初旬のオープンを楽しみにしたい。
取材・文/綿谷禎子