3. 家族信託の主な活用方法
家族信託については、特に認知症対策や相続対策としてさまざまな活用方法が考えられます。
家族信託の主な活用方法としては、以下の例が挙げられます。
(1)判断能力が低下した後の財産管理を託す
認知症などに罹る前の段階で家族信託を設定すれば、判断能力が低下した際の財産管理を、あらかじめ信頼できる家族に任せることができます。
(2)幼い孫などに財産を与える
孫に与えたい財産について家族信託を設定すれば、孫が成人するまでの間、信頼できる人に管理を任せることができます。法定代理人が信用できない場合などには、特に効果的です。
(3)財産の使い道を細かく指定する
家族信託を利用すれば、長期間にわたって少しずつ財産を与える、購入できるものを限定するなど、財産の使い道を細かく指定できます。
(4)不動産の収益を複数の者に分け与える
不動産について家族信託を設定して、1人の受託者に管理させつつ、受益者として複数の者を指定する活用方法も考えられます。
不動産の共有に伴うトラブル(賃貸や売却について揉めてしまうなど)を回避しつつ、不動産の収益をスムーズに分け与えることが可能となります。
4. まとめ
家族信託は柔軟な仕組みであるため、認知症対策や相続対策として幅広く活用できます。任意後見契約・生前贈与・遺言書など別の対策手法と併用すれば、思いどおりの認知症対策や相続対策を行うことができるでしょう。
家族信託はオーダーメイド性が強いため、満足できる内容でスタートできるように、専門家のアドバイスを受けながら検討することをおすすめします。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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