“質の高い謝罪”でネガティブな側面は打ち消される
謝ることでいろんなことが有利になるのならあたりかまわず何でも先に謝ってしまったほうがいいようにも思えてきてしまうが、しかし気になる点もある。
謝罪が多い人物は社交的で好意的に見られると同時に、積極性が低く自信が足りないキャラクターであると思われる傾向があることだ。
そこで研究チームが着目したのはその謝罪の“質”の問題である。
恋愛関係にある300人が参加した実験では、参加者は仮想シナリオとしてパートナーの不誠実な言動の後、謝罪なし、質の低い謝罪、質の高い謝罪のいずれかを受け取るようにランダムに割り当てられ、パートナーの謝罪に対する反応が調査された。
収集したデータを分析したところ、質の高い謝罪を行った場合は認識において積極性や自信が低下していなかったのだ。謝罪の質が低いと受け止められてる限りにおいて積極性と自信に欠けるキャラクターであると見られていたのである。
そしてこの特定の謝罪への反応は、そのパートナーが頻繁に謝罪する人物かそうでないかというキャラクターの違いや性別の違いには関係ないことも明らかになった。
頻繁に謝罪する人が必ずしも優れた謝罪者であるわけではないことは以前の研究でも示されていたのだが、今回の研究ではその謝罪の“質”がより重要であることが示唆されることになった。
頻繁に謝罪する人は、よりソーシャルな資質を持つと見られる一方で主体性に欠けると認識される傾向があるのだが、その謝罪の“質”が高まることでネガティブな側面は打ち消されることになる。
「すみません」が口癖になっていても何ら問題ないどころかむしろ好ましくもあるのだが、もちろん口先だけの軽々しい謝罪は厳禁であり、謝る時は真摯に謝らなくてはならない。
そうすることで「すいません」の口癖が対人交流においてより真価を発揮するといえそうだ。
文/仲田しんじ