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「遺産は不要」な場合はどうすべき?覚えておきたい相続放棄、相続譲渡などの選択肢

2023.12.04

2. 相続放棄・相続分の譲渡・財産放棄の違いと注意点

相続放棄・相続分の譲渡・財産放棄の3つの特徴や違いを表にまとめました。

上記の違いを踏まえ、特に以下の各点に注意しながら手続きを選択しましょう。

(1)債務の相続を回避できるのは相続放棄だけ
(2)相続放棄には期限がある
(3)相続権の移動を回避したいなら、財産放棄を検討すべき

2-1. 債務の相続を回避できるのは相続放棄だけ

借金などの可分債務は、相続発生によって法定相続人間で当然に分割されます(最高裁昭和34年6月19日判決)。

相続分の譲渡や財産放棄は、当然分割の効力を覆すものではありません。したがって、相続分の譲渡や財産放棄をした人も、相続債権者から請求を受ければ、元々の法定相続分に従った割合で弁済を行う必要があります。

これに対して、相続放棄をすれば初めから相続人にならなかったものとみなされ、可分債務も相続せずに済みます。借金などの相続を回避したい場合は、相続放棄を選択しましょう。

2-2. 相続放棄には期限がある

相続放棄の期限は原則として、自己のために相続が開始したことを知った時から3か月以内です。手続きが遅れた事情によっては期限後の相続放棄が認められることもありますが、家庭裁判所に対する理由説明が必要になる上に、確実に認められるとは限りません。

相続放棄をする場合は、期限に間に合うよう早めに準備を進めましょう。

2-3. 相続権の移動を回避したいなら、財産放棄を検討すべき

相続分を譲渡すると、譲渡人から譲受人に相続権が移動します。

また、相続放棄の結果として同順位相続人がいなくなると、後順位相続人に相続権が移動する場合があります(例:相続放棄によって被相続人の子が相続人でなくなったため、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる)。

相続権の移動が発生すると、相続人同士の関係性が複雑になり、相続トラブルのリスクが高まる点に注意が必要です。相続権の移動によるトラブルが懸念される場合は、相続放棄や相続分の譲渡ではなく、財産放棄を検討すべきでしょう。

取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
https://abeyura.com/
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