システムの統一化や共同調達が鍵
すでに子供がいる家庭においては、デジタル教育が課題となります。先日、地方自治体においてGIGAスクール端末として大量に調達した中国製タブレットが多数故障して修理や交換も立ち行かなくなり、生徒の学習に影響が出ているというニュースがありました。
コロナ禍で電子機器の調達が思うように行かなかったと思えば、今度は円安ですから、国内電子産業が携帯電話やパソコン事業から次々撤退してしまった後である現代において、共同調達に二の足を踏む理由はありません。
また、配備した端末が効率よく利用できるように、デジタル教材だけでなく、学校職員が扱うシステムの統一など、広域自治体が音頭をとっていくのが現実的に思えます。
こういったシステムの統一は「おおよそ同じ業務」であれば効果がありますので、従来よりデジタル庁を先頭に進められている地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化が奏功していくことでしょう。しかしながら、ネットワークやシステムというのは物理基盤、インフラあってのものですから、基礎自治体の状況や予算によっては出遅れかねないというところもあるかと思います。こちらもやはり、共同調達や共同開発など、できる限りの手を尽くすべきです。
先程少子化を危惧しましたが、関東大震災から100年という節目にあり、大災害も脅威として無視できません。自然というのは人間の暦など関係なく活動するものですから、防災に関してもDMAT(Disaster Medical Assistance Team、災害派遣医療チーム)をはじめとした専門的な訓練を受けたチームの活躍が期待されますが、それ以上に、日常の市民による防災意識を高め、救助という概念を無くす(救助される事態に陥らないようにする)ことが重要です。
こちらも、防災アプリをはじめとしたDXで安全な場所を確認できたり、災害時に家族と落ち合えるようにしたり、避難所のリアルタイム状況把握や、被災で交通路が遮断された再の支援物品のロジスティクスをAIで即時に組み直すなど、人の命を1秒でも早くつなぐためにデジタルが役立てる箇所は多いです。
もちろん、全てが工夫だけで乗り切れるものではなく、必要な予算と時間をかけなければ一朝一夕には準備できないものばかりですから、EBPMによる現実的な行政の事業企画、レビュー、予算の見える化などによって政策効果・効率を向上させていかなければなりません。
DXの集大成であるデジタル行財政改革で、来るべき人口減少社会の到来を、切り抜けて行きたいですね。
さて、DIME本誌にて連載しております『TOKYO2040』は、2025年に令和関東大震災という架空の大災害があった後、人口も減る中で15年かけて復興がある程度進んできた中での出来事を描いています。ぜひお読みください。
文/沢しおん
作家、IT関連企業役員。現在は自治体でDX戦略の顧問も務めている。2020年東京都知事選に無所属新人として一人で挑み、9位(20,738票)で落選。
このコラムの内容に関連して雑誌DIME誌面で新作小説を展開。20年後、DXが行き渡った首都圏を舞台に、それでもデジタルに振り切れない人々の思いと人生が交錯します。
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